「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか

制作 : 松本 俊彦 
  • 日本評論社
3.74
  • (12)
  • (21)
  • (23)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 574
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535563797

作品紹介・あらすじ

依存症、自傷・自殺等、多様な当事者の心理をどう理解し関わるか。大好評を博した『こころの科学』特別企画に新稿を加え書籍化。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「頑張りや我慢が足りないよ」「努力不足だね」
    「どうして助けてと言わなかったの?」
    「誰だってそんなことあるよ」「もっと辛い人がいるんだから」

    ああ、私の大嫌いな言葉だ。幼い頃から心を抉られたままおばさんになってしまった。私の恥部のような塊が心の中に蓄積されている。だから、助けてと言えない。
    私のこの恥の感覚は、周囲の大人や知人に嫌悪・拒絶された経験が深く関わっているのが、読後分かった。

    こんな経験のある人ならば、何か助けのヒントを得られる一冊だと思う。
    巻末にもあるが、「自立とは依存先を増やすこと」。
    何もかも一人でできるように生きることが自立ではなく、困りごとを抱えたとき、相談先を持ち、行く先や選択の一助となる誰かを複数持つことこそ、生きる醍醐味だ。
    助けて、どうしたらいい? 困っているんだけど…。こうしたSOSをなかなか出せず躊躇う。一人抱え込む。気持ちに蓋をし、心を麻痺させ、日々を生き延びる人の助けとなる著作だ。

    なお、本著は日本評論社の定期刊行誌『こころの科学』の特別企画を精神科医 松本俊彦先生によって再編し書籍化されたものである。
    精神科医、研究者、看護師、カウンセラー等支援の専門家による各々の専門分野についての短めの考察が纏められている。
    そのため、専門用語や専門分野については、目を通すに留めた。

    印象的だったのは、複数の著者が述べている「公正世界バイアス」の存在だった。
     
    よい行動をすれば、良い結果が生じ、悪いことをすれば悪い結果が生じると期待する傾向

    因果応報、情けは人の為ならず等々、昔話でも絵本でも、学校教育もテレビもすべて繰り返し説いてきた。それ故、社会の秩序が保たれる面はある。誰しも良い人生を手にしたいから、努力尽力我慢する。
    しかし、この言葉はすべてを説明してくれるわけではない。
    上手くいかないのは、我慢や努力が足りないからと、困り事を抱えた人間が自分の感覚を封じ込め、助けを伸ばす手を引いてしまう。

    最近のネットも追い打ちをかける。
    細部にわたる事情を知らなくても、yahooニュース程度で、他人事を徹底的に非難する。白黒つける。
    よって、被害を受けても何か自分に非があるのではと、被害を最小化してしまう傾向が起こりやすい。

    日本は我慢と献身が長らく美徳であり続けたことも一因ではないのかな。

    いじめ、薬物依存、機能不全家族、自殺自傷傾向、性被害、支援者の二次的トラウマ、ギャンブル依存等々、困った人たちが、どうしたら救われるかを現状の問題や背景とともに説いてくれている。

    困りごとは、心の持ちようやポジティブ思考だけでは解決しえない。
    適切な人との関係を築き、仕方がない、これしかないという強迫的呪縛から解放され、光を感じさせてくれる一冊だ。

  • 興味深い話題だらけだったが今の私には少し難しい

  • 依存症の方の支援に悩んでいたときに手に取った一冊。
    「やめられない」気持ちを伝えても、否定されない場所や関係性が必要。

  • 座談会(岩室紳也×熊谷晋一郎×松本俊彦)が特によかった。血圧上昇の方に「あの人は姑さんと関係が悪いからその話をきいてあげればいいのよ」という田舎の診療所の事務員さん優秀!支援者自身の限界を認め、自分が解決できない問題を周りに投げかけてアイディアや助けをもらうというスタンスは大事と納得

    覚書
    援助者は矛盾をはらんだ言動に対して正したい衝動を抑える 薬物依存症からの回復に必要なのは安心して「やりたい」「やってしまった」「やめられない」と言える場所、そう言っても誰も悲しげな顔をしないし、不機嫌にもならない、自分に不利益が生じない安全な場所
    自殺リスクを抱えた人の所属感の減弱、負担感の知覚が主観的な感情
    「死にたい」だけではなく「悲しい」「つらい」「一人でいるのが寂しい」という言動で表現する練習
    ドタキャン考で、複雑性PTSDの「約束を守る」という社会的規範を学ぶ機会がなかった可能性、対人不信やネグレクトの後遺症という考察
    相談するという訓練、相談する側の選択肢と相談を受ける側の選択肢を複数化
    認知症のある人の支援で、自尊心が傷つきやすい状況、失敗を指摘されやすい状況、役割を失いやすい状況は、その理解や工夫で改善することが多い
    支援者の燃え尽き症候群 安全、信頼、尊重、親密性、統制の五つの認知スキーマの歪み(マッキン、パールマン)
    自分の感情へのメンテナンスを大事にすることが、支援者自身にとっても患者にとっても役に立つ 周囲につらさ、うまくいかなかったことを話せる関係が重要

    自分の性体験を隣の人に話すことをイメージすると性犯罪で相談窓口での話をすることの負担が大きいことがわかる
    トラウマからくる恥と身体へのアプローチは必須(キャサリン・スコット・ドウジア)

  • 教育や介護、家族関係など、福祉やカウンセリングの中で実際に起きているケース、その対処法を知ることができた。「助けてほしい」という言葉はどんな人でもなかなか言えるものではない。最後の対談が一番印象に残った。

  • 困難に陥っている人の自己責任論は減ってきている印象はあるが、その人達の援助希求が薄いことに関する自己責任論は援助者にもあるし、援助者自身が援助希求が薄く燃え尽きる人もいる。本書は、その心理的なメカニズムに関しての考察と実際の医療や福祉、心理の現場や援助団体で起こっている状況についての現場のリアルな話が満載である。援助職自身も、この現状を十分に理解した上で対処する必要があると思われる。「こころの科学」に掲載されているものを編集し加筆されたものである。

  • 自分が自殺したいと思う気持ちを書きました。https://note.com/masakinobushiro/n/n636cbb121aad

  • いきなり専門用語がたくさん出てきてあせりました。ちょっと欲しかった情報と違ったので、評価低いですが、支援者になりたいこの本の読者がみんな専門家でないことを考えたら、このくらいかなあと思います。

  • 【新着図書ピックアップ!】つらいとき、苦しいとき、助けを求めてアピールできないこともある。その時だけならまだしも、つらい境遇に立たされたとき、声を上げたくでもあげられない、そんな人たちと接する心理臨床者の経験にもとづく論文集である。心理学を学ぶ人、学びたい人、福祉について考える人におすすめです。
    【New Book!】 I highly recommend this book for those majoring Psychology, Social Welfare, also who taking care of addiction.

全26件中 1 - 10件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×