- Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
- / ISBN・EAN: 9784537260779
作品紹介・あらすじ
突然いなくなった妻を捜して旅に出た雄鶏。彼女との想い出を辿りながら"今"を生きるニワトリが見た東日本の風景-。異才が描く"東北のいま"のスケッチ。
感想・レビュー・書評
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「日の鳥」こうの史代著、日本文芸社、2014.05.01
127p ¥972 C0993 (2019.02.12読了)(2019.02.10借入)(2014.07.01/3刷)
雄鶏が妻を探して東日本のあちこちを旅しています。これは旅の絵日記です。絵には、現地の風景にコメントが添えてあります。風景の中に雄鶏がいます。大きく目立っているのもありますが、目立たずどこにいるのか、探してしまうのもあります。「本日の食事」というコラムには、雄鶏のその日の食事がイラストともにメモってあります。「竜胆」「ヒマワリの種」「えのころ草」「ヒエ」「ハコベ」「ヨモギ」など、さまざまです。訪ねた先の東日本大震災での被災状況もメモってあります。
『この世界の片隅に』でも瀬戸内の風景などを見せてもらいましたが、仕事とはいえ、よく描くもんですね。雄鶏も書き添えるわけだから、なおすごいね。雄鶏を飼っているのだろうか。ページの調整のためか65頁、75頁、103頁、115頁、に野鳥を描いたページが挟み込まれています。
気仙沼に「冷蔵庫創業の地」という石碑があるそうです。(21頁)
鹿折唐桑駅付近に大きな船があったのは、僕も見ています。(23頁)(107頁)今は撤去されて亡くなってしまいました。
23頁の脚注に「三陸鉄道はまだ復旧していない。」と書いてありますが、「三陸鉄道」ではなく「JR大船渡線」です。
「それでも生きのびた それでも生きている それでも生きてゆく」(87頁)
盛岡地方裁判所の石割桜は、裁判所に行ったときに見ました。(98頁)
絵日記のコメントは何とも、参ります。
【目次】
東日本大震災について
5ヶ月後の釜石・大槌
半年後の山元・塩竃・松島
9ヶ月後の気仙沼・陸前高田
11ヶ月後の八戸
1年後の東京都
1年1ヶ月後の猪苗代
1年4ヶ月後の遠野・大船渡
1年4ヶ月後の釜石
1年半後の南三陸・石巻・仙台
1年9ヶ月後のいわき・楢葉・広野
1年11ヶ月後の上山・郡山・本宮
2年後の東京都
2年1ヶ月後の宮古・田老
2年3ヶ月後の遠野
2年5ヶ月後の気仙沼大島・一関
2年半後の鹿角・盛岡
【日の鳥】引用リスト
☆関連図書(既読)
「夕凪の街 桜の国」こうの史代著、双葉文庫、2008.04.20
「この世界の片隅に(上)」こうの史代著、双葉社、2008.02.12
「この世界の片隅に(中)」こうの史代著、双葉社、2008.08.11
「この世界の片隅に(下)」こうの史代著、双葉社、2009.04.28
「この世界の片隅に」こうの史代原作・蒔田陽平著、双葉文庫、2016.10.16
(2019年2月12日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
突然いなくなった妻を捜して旅に出た雄鶏。彼女との想い出を辿りながら“今”を生きるニワトリが見た東日本の風景―。異才が描く“東北のいま”のスケッチ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本好きのお友達から借りる。こうのさんは独特の世界を持っていてよい仕事を積み重ねておられると思う。次はどんな世界を見せてくれるのか、楽しみです。
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こうの史代さんの作品(エッセイ漫画)『日の鳥(2014)』を読了。2022年”本”(エッセイ漫画)101冊目。
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妻を探して震災後の東北地方を巡るおんどりさんのスケッチ。
どうして離れ離れに?東北は今どうなっているの?
おんどりさんはいつ妻と会えるんだろうか?少し切ない本です。 -
“誰かの生まれた場所を知ると、なぜか優しい気分になる。”(p.21)
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こうの史代が描く、震災5ヶ月後からの被災地の風景。ボールペンで描き込まれ、切り取られた一場面からその枠の外まで広がるような世界を感じる。語り部である、妻を探して旅するニワトリのユーモアとペーソス。悲しみの中にも、笑いはあるのだ。
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ひさびさにこうの史代。図書館に蔵書がなく、お試し読みなしだけれど、あれこれ読んできてこうのさんの作品にハズレ無しという信頼がいまはある。
オンドリ(日の鳥)が東日本大震災後の各地を訪れたという趣のスケッチ集。
5ヶ月後の夏から季節に一、二度のペースで東北各地をおとずれ続け、現地の空気を肌で感じた記録でもあり。
オンドリの「妻」の正体が気になる…実体があるのやらないのやら。
2巻も読めばその謎は明らかになるのかしら…? -
2017.6.18「一箱古本市in現代市」にて購入。
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東日本大震災のあの日以来、突然いなくなってしまった妻を探して、雄鶏が旅に出る。
東北のあの地、この地、あちこちを巡り、妻を探す。
「日の鳥」は、雄鶏自身を指すようだ。夜明け、日の出とともに時をつくる鳥。
この巻には、震災の5ヶ月後から2年半後の風景を収める。ボールペンの緻密だが温かいスケッチの中には、必ず妻を探す雄鶏が描き込まれる。
描かれた地域の地図と被災データも併記されるが、風景は静かに何気なくそこにある。被害の爪痕も、人々の暮らしの痕跡も、眼前にあるままに描かれる。
雄鶏はすっとぼけたオヤジ風である。いささか恐妻家であったらしい。
妻は美しくはあったがどうやらやや狂暴だったようだ。何だかとても巨大だったようでもある。
安野光雅「旅の本」の旅人のように、あるいは「ウォーリーを探せ」のウォーリーのように、風景の中には決まって雄鶏がいる。雄鶏は時に地元の鳥たちと交わり、日々土地のものをついばむ。
妻はもしかしてこの世のものではないのか? 鳳凰や金鵄のような霊鳥の類なのか?
妻の正体は読者にはなかなか掴めない。
妻は杳として見つからず、雄鶏の旅は続く。
こうの史代という人は、不思議な場所を見ている人だと思う。
本作は、不思議なユーモアセンスを持つ雄鶏が案内人となり、土地土地のスケッチで綴られていく。
声高に震災の怖ろしさを描いたり復興を叫んだりするわけではない。メッセージ性が高いとは受け取られないであろう作品だが、しかしメッセージ性がない、ということが、逆にメッセージである、のかもしれない。
雄鶏を探しているうちに、いつしか自分も風景の中に入っていくようでもある。
いつしか、あの土地、この土地が懐かしく見えてくる。
2巻も近日中に読む予定。 -
やっと見つけたこうのさんの「日の鳥」… 大雑把に言ってしまえばスケッチブックなのだがモチーフは震災の爪痕も生々しい頃の東北。
その精緻な描写を見ていると奇しくも同じ時期に「自分の眼で」とオートバイに荷物括り付けて走ったあの日が蘇る。
情け容赦ない瓦礫、打ち上げられた漁船を見た、そして立入禁止区域に入り込み原発の警備員に追い掛けられたことを思い出す。
あまりの衝撃に「がんばろう!」などとは言えなかった気持ちをナビゲーターの雄鶏が代弁する…空が「生きよ」と無責任に言う、ヒト事だから。でもそれを真に受けるかどうかはわたくし達の自由なのだ。。達観