里地里山文化論 (下)

著者 :
  • 農山漁村文化協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784540091650

作品紹介・あらすじ

昭和20〜30年代の里地里山の暮らしと動植物の実態を古老に克明に聞き、伝統的手法で修復後に蘇る動植物の動向から里地里山文化を検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和20~30年代の暮らしについて、全国18地区を調査した。

    使用した土地面積は、1戸当たり田畑0.9ha、燃料山1.1ha。薪炭は、プロパンガスが普及し始めた昭和30年半ばから減少し始め、40年代半ば過ぎにはほとんど使われなくなった。竿や雨樋、筒、屋根葺き材などとして使われた竹も、プラスチックが普及した昭和30年半ばから激減した。里地里山の屋敷は、昭和40年初めまで茅葺き屋根が多数を占めた。

    江戸時代から第二次世界大戦前まで、林野面積の10~15%、250~400万haが刈敷や牛馬の餌を得るための草山だった。草刈山は、牛馬耕の普及に伴う堆厩肥の導入や、薪炭材需要が増大した明治以降、雑木林に変わっていった。明治30年以降、木炭の需要が増大したため、全国各地でクヌギなどの広葉樹が植林され、昭和30年までに42万ha(森林面積の2.2%)に及んだ。

    殺虫剤、殺菌剤の使用は、昭和20年代末から30年代初めに、除草剤は、昭和30年代半ばから開始された。除草剤、殺虫剤を使い始めると、水田のタニシやドジョウが死滅した。

    昭和40年代から大型機械で作業を効率化させるための区画の拡大を図ったため、畦が消失し、両生類・爬虫類、昆虫の生息地が失われた。用水路は三面コンクリートや地下パイプラインになり、稲刈り後の排水路は水無になったため、カエルやトカゲ、ヘビ、バッタ、コオロギなどの生息地が失われた。

    昭和30年代半ばから耕耘機が普及し、農耕牛馬が消滅して、牛糞などの堆厩肥に代わる化成肥料が普及した。農耕牛馬の消滅によって、草刈り場が不要となり、昭和34年の120万haから平成17年の39万haへ減少した。その結果、蝶類などの昆虫の生息地が失われた。

    昭和40年代前半から田植機が導入されると、苗はビニールハウス内の育苗箱で育てられるようになり、水苗代が不要になって、水田は収穫前後から翌年の田植え直前まで乾燥状態になった。その結果、カエルやトンボの産卵環境が減少した。さらに、昭和50年代初めからはコンバインが普及し、8月下旬には田の土が完全に乾燥するようになった。

    里山が放棄されたことにより、昭和30年代後半からイノシシ、シカ、サル、ハクビシン、アライグマなどによる被害が広がった。

  •  里地里山の保全が叫ばれるなか、循環型社会の暮らしとそれを支えた生態系に着目し、「なぜ今それが大切なのか」を解き明かす。
     上巻では、里地里山文化の歴史を辿り、東アジアの源流を訪ねた詳しいレポートが綴られる。 
    下巻ではさらに、全国各地の古老から聞き書きした調査をもとに、昭和20年から30年代の里地里山文化の実態と、その復元の可能性が検証される。

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著者プロフィール

養父 志乃夫(やぶ しのぶ)

1957年大阪市生まれ。和歌山大学大学院システム工学研究科教授。専門は、造園学、自然生態環境工学、環境民族学。1986年大阪府立大学大学院博士課程修了。農学博士。東京農業大学助手、鹿児島大学農学部助教授を経て、現職。著書に、『里山里海―生きるための知恵と作法、循環型の暮らし―』(勁草書房)、『アジアの里山 食生活図鑑』、『里山・里海暮らし図鑑―いまに活かす昭和の知恵―』(以上、 柏書房)、『ビオトープづくり実践帳』(誠文堂新光社)、中版『生物生境再生技朮』(北京建筑工業出版社)、『里地里山文化論』(上・下2巻)、『ビオトープ再生技術入門―ビオトープ管理士へのいざない―』、『田んぼビオトープ入門』、『生きものをわが家に招く―ホームビオトープ入門―』、『荒廃した里山を蘇らせる―自然生態修復工学入門』(以上、農文協)、『生きもののすむ環境づくり』(環境緑化新聞社)、『野生草花による景観の創造』(東京農業大学出版会)など多数。

「2017年 『里山に生きる家族と集落』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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