内山節のローカリズム原論―新しい共同体をデザインする

著者 :
制作 : 21世紀社会デザインセンター 
  • 農山漁村文化協会
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本棚登録 : 74
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784540121210

作品紹介・あらすじ

地域とは何か、コミュニティ、共同体とは何か、これからの社会のかたちをどこに求めるべきなのか、そしてその背景にはどんな哲学、思想をつくりだす必要があるのか。それは震災後の復興を考えていく作業でもあり、同時に、いきづまった現代社会をいかに変えていったらよいのかについての考察でもあった(「はしがき」より)。

感想・レビュー・書評

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  • 現代社会は、資本制市場経済、市民社会、国民国家という3つの要素からできている。いずれも、個人を基調とする社会を要請する。この仕組みが今ではすべて劣化していて利益よりも失うものが大きくなっている。次の社会モデルを構想しなければいけない時期にきている。それは国家よりももっとずっと小さな単位で、自分たちの生きる世界で作っていくべきだ。

    私は私が作り出している関係の総和である。

    私たちの生きている世界は様々な構造の集合として成り立っていると言う考え方は妥当なものとして人々に受け入れられているが、社会でなく世間を、構造でなくつながりを、日本では基軸にしていたのであり、次の共同のモデルにできるのではないか。

    著者の主張にはうなづける部分は多いが、ことさらに「日本」という単位が強調されるのは飲み込みにくい感じがする。風土の単位ならもっと小さいのだろうし、たまたま国民国家の境界と一致する、おおきな文化的単位が日本ということだろうか。

  • 東日本大震災を踏まえ、新しい共同体のあり方を、哲学や文化人類学の側面から模索した講義「コミュニティデザイン学演習ーローカリズム言論」をまとめた本著。
    コミュニティや自己形成は外部との関係性から成り立つため、開いて色々な結びつきが必要なことを説いている。私も若かりし頃、本当の自分なんてものは最初は存在せず、他者との関わりの中で形成されていくものだから、逃避行的な自分探しでは何も見つからないと気づき、今に至るため、ここは共感できる。個人だけではなく、コミュニティにおいても、内部と外部のつながりの両方があって成り立つのだろう。
    その、コミュニティの関係性について、本著では、欧米と日本の社会観の比較や、風土、歴史、宗教等から考察していて興味深い。例えば、欧米の社会に存在する関係は、生者だけのものであり、個の確立の仕方が他者との違いを強調した水平的なものであると著者は考えている。一方日本は、生者だけでなく死者やコントロールできない自然との関係を持ちながら社会が成り立っており、個の確立の仕方は、自分の内面を深める形で垂直的になされてきたと考えている。
    しかし、近代に入り長い間私たちは、ヨーロッパローカルの思想に取り込まれてきた。個としての主体を通して社会の構造をとらえる思想に。
    そうではなく、今こそ様々な関係の総和として人間の存在をとらえるローカルな世界を再構築し、近代思想を再構築する必要性を説いている。
    そうして結び合う世界を軸として新しい社会基盤は形成されていくのだろう。

  • 震災後を考える上で非常に興味深い考察だったな〜。この人の本もっと読みたい。

  • 日本的なコミュニティを考える上で、非常に参考になった。地方にある様々な資源を管理・かかわる上で出来てきたつながりを軸にし、多層的な関係の積み重ねがコミュニティという定義には納得。自然資源への関わりがなくなってきた中で、如何に今後人と人の間のつながり=コミュニティを維持・復興できるのだろうか。今後、途上国での自然資源管理を観察・かかわる上でも非常に参考になる。

  • 「3.11以降」と言う言い方はあまり好きではないけれど、やはりそれが契機で地域共同体の崩壊に直面しつつある地域がある。

    なぜ集団移転でもコミュニティは崩壊するのか?西洋の共同体は「人」がすべてて、自然や歴史は共同体に従属するものであるのに対し、日本の共同体は環境や歴史や『死者』までも含めたもので、『人』は共同体の一要素でしかないという指摘は真摯に受け止めなければならない。

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著者プロフィール

1950年、東京生まれ。東京都立新宿高等学校卒業。哲学者。1970年代から東京と群馬県上野村を往復しながら暮らす。むら人の暮らしの考察をとおして、自然と人間との関係、仕事と労働、時間や共同体などをめぐって、独自の思想を構築する。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授(2010年4月~2015年3月)などを歴任。NPO法人・森づくりフォーラム代表理事。『かがり火』編集人。主な著書は『内山節著作集』(全15巻、農文協)に収録されている。最近の著書として『日本人はなぜキツネにだまされなくなったか』(講談社現代新書)、『いのちの場所』(岩波書店)、『修験道という生き方』(共著、新潮選書)などがある。

「2019年 『内山節と読む 世界と日本の古典50冊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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