日本人は災害からどう復興したか 江戸時代の災害記録に見る「村の力」
- 農山漁村文化協会 (2013年2月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (244ページ) / ISBN・EAN: 9784540121395
作品紹介・あらすじ
江戸時代の自然災害で被災した村の復興の原動力を、当時の災害記録から読み解く。津波・洪水・飢饉・噴火・地震を災害記録で追体験しながら、困難な復興のなかで鍛えられていく村の百姓たちの力をわかりやすく解説。
感想・レビュー・書評
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江戸以前に日本で起きた災害の記録と,その災害に対して被災者や為政者(殿様たち)は,どのような手立てを取ったのか…というようなことが,紹介されている。
災害として,津波,洪水,飢饉,火山の噴火,そして地震の5つが取り上げられている。
一読して思ったことは2つ。
まず一つは,日本って,災害大国なんだなあということ。今でこそ,プレートのぶつかり合いの…とかいう地学の知識があるけれども,以前は,ほとんど「神様が怒っている」みたいな感じだったんだよな。
もう一つが,「災害にあったときの人の行動って,そんなに変わんないな」ということ。まずは,自助があり,近所や名主が行う共助があり,藩などが復興の為に行う公共事業などの公助があったんだな。しかも,被災者として,後世に対しての助言を残そうとしているところが凄い。
たとえば,
「享保十二年の洪水を経験した友山は,大水の際の第一の心がけとして,火の用心と,井戸水をあらかじめ汲み上げて蓄えておくことを揚げています。そして,次に大事なことは,便所の大便を,田畑のそばの肥溜めに移しておくことだと述べています。(「洪水」本書34ぺ)」
この友山さんは,次のようなことも書いています。
「何事においても,古来より続いてきたものを廃止してはならない。今の人は,眼前の利益になることでなければ,進んで行おうとはしない。そうした今の人の心でみると,古人が残した物は無用の長物のように思えるけれど,実際に100年先の利益を考えていたのは古人の方だったのである。(「洪水」本書36ぺ)」
本書に紹介されている一庶民――名主や坊主など――の日記は,『日本農書全集』という物から引用されているそう。こんな『全集』があるなんて!
「大災害を体験して,杢兵衛は人の世の無常を感じています。この地震と津波によって,人生観が変わった人は多かったことでしょう。しかし,人びとはたくましく立ち直ります。(津波,本書29ぺ)」
こんな言葉を読むと,「江戸時代の人に負けてはいられないな」と勇気が湧いてくる。
本書で取り上げられた古人の日記から学ぶことはたくさんあるようです。
国会図書館などで見ることができる「当時の絵」もたくさんあって,見応えあり。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸時代に起きた災害(津波・洪水・飢饉・噴火・地震)について、災害記録から、当時の人々はどのようにそれらに対処したかについて、渡辺氏が纏めています。
私が記憶にある日本の災害を振り返ってみると、最近の東日本大震災をはじめ、洪水・大雨などがあります。経済大国のおかげで、天候不順が続いても、食物が輸入できるので「飢饉」だけは無いようですが。
どの時代も「災害は忘れたころにやってくる」ようで、それに対して常に準備をして「身の丈にあった生活」をすることが大事だということが、この本のポイントの1つだったと思いました。
以下は気になったポイントです。
・江戸時代における村の数は、元禄10(1697)に「63,276」であったので、現在の全国市町村数(約1800)を考慮すると、単純平均で1つの市町村に35程度の江戸時代の村が含まれることになる(p10)
・石高は容積単位で表されて、1石=10斗=100升=1000合=10000勺(しゃく)=100000才であった、米1石=150キロ、米俵1俵には、三斗五升から四斗のコメが詰められた(p12)
・太陰太陽暦では1年=354日なので、太陽暦との調整のために19年に7回の閏月を置いた、閏月のある年は1年が13か月あった(p16)
・江戸時代の貨幣価値を現在の日本人の主食のコメの値段を基準にすると、金1両=5.5万円、銀1匁=660円、銭1文=9円程度になる、賃金水準で考えると、1両=30万円、銀1匁=4000円、1文=48円となる(p26)
・伝馬騒動(1764-65)に大規模な百姓一揆が起きたが、多くの有力百姓の家が一揆で打ち壊されたが、寛保2年の水害の恩人である「奥貫家」のみは打ちこわしを受けなかった(p68)
・江戸では3回の飢饉があった、享保・天明・天保、天明6年の大飢饉以降は豊年が続いたので、人々の暮らしは食物から衣類までどんどん良くなり、飢饉の辛さを忘れた(p69,104)
・天保6年は春になっても「コブシ」の花が咲かず、凶作の前兆だと思われた(p115)
・5か月続けて月初めの一日が「壬」「葵」という「水」を表す日となると、雨が続いて飢饉に、「丙」「丁」という「火」を表す日が続くと日照りになる(p118)
・田沼意次は、財政再建をするために、株仲間という同業者団体をつくらせて、独占を認める代わりに営業税を徴収した(p131)
2013年3月30日作成
著者プロフィール
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