手の美術史

制作 : 森村 泰昌 
  • 二玄社
3.56
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本棚登録 : 76
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784544200126

作品紹介・あらすじ

古今の名画からモリムラ・メソッドにより厳選された約200点の「手」が集結。

感想・レビュー・書評

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  • 名画や著名人に扮することで知られる森村泰昌氏による。絵画の手の部分ばかり集めた画集。この着眼点、さすがだと思う。

    レオナルドの、解剖学的な原理の帰結としての手。

    器用に折り曲げられ、まるで花のように開く手。例えばグリューネヴァルトの、十字架に打ち付けられ苦悶するキリストの手。ボッティチェリの果実のような手、ミケランジェロのおごそかな手。

    ルネサンスからバロックへ移行するにつれ、手はさらに雄弁に語る。カラヴァッジォの激情を演じる手、たくらむ手、取り押さえる手。

    フェルメールの、ベラスケスの、レンブラントの働く手。
    エル・グレコ、リベーラ、ゴヤのかすむ手。

    マンネリ化し、様式化された、アングルの、ミレイの、女性の手。

    エゴン・シーレの、クリムトの、ルソーの、セザンヌの、ルノワールの、モディリアーニの、先鋭化し歪む手。

    そして最終章は「手の解体」
    ダリ、ピカソ、エッシャー、岡本太郎、ジャスパー・ジョーンズ……この章は思わず声をあげて笑ってしまった。"手の葬送"とも言えるフェーズ。

    こんなにいろんな手があるなんて。巻末の索引でどの絵の手なのか同定できるようになっているから、この特徴はあの画家かも、と見当をつけながら読むのも愉しかった。
    手の部分だけ拡大されると、すっかり印象が変わってしまう絵もあったりして驚きもある。またクローズアップされると、画家によって手に対するこだわりの度合いも全然違うのがわかる。

    読後索引で判明したのだけれど、冒頭では森村氏自身の変装作品のクローズアップ写真がふんだんに使われていてこれも笑った。

  • モナリザだろうがヴィーナスだろうが傑作の呼び声に一切構わず、大胆に手を中心に切り取られた名画がぎっしり(逆に表紙カバーでは故意に手が抜き去られている)。西洋画が大半(ぜんぶ)? 人間が描かれた作品を鑑賞するさい、いつも顔だけ見て満足していたナーと、本書を読んで気づかされた。ゴヤの「1808年5月3日」なんて特に。手をはじめ、周縁に意識を配ってみると作者はそのへんにも精緻に筆を走らせていると思い知らされる。

  •  本編には様々な名画からトリミングされた手の部分ばかりがこれでもかと掲載されており、作者やタイトル、作品の全体像は巻末の作品にまとめられている。時折挿入される解説はもはや絵本かと思うくらいに最小限に抑えられている。
     アニオタとして「手フェチ」を名乗るのは大抵見栄えの良い手だけを好きな人ではないかと思うが、この本に掲載されているのはより広範な表現の数々であり、手が木の枝になってしまったものや、解剖される最中の筋肉があらわになったもの、抽象絵画に近づき形の曖昧になってきた手までフォローされている。これぞ本物の手フェチの仕事ではないかと思う。
     取り上げられている作品が、著者本人の作品を除けば西洋絵画ばかりなこと、ダ・ヴィンチだけ、カラヴァッジョだけの章があるなどやや偏りがあるのが私にとっては少し残念だった。面白いテーマなので、解説ももう少し読みたかった。

  • 「芸術として画家が描いた」手。
    そこにテーマを絞って、森村ワールドが語り続ける。
    好みが解れるのは当然。

    森村氏の文章を可とも否ともしないけれど。普通は画面の力が加わっている部分に目が行くというもの・・なかなか『手』に行くのはなかっただけにしみじみ見ると味が有る。

  • 文章に共感ができない。
    それっぽく書かれただけの、中身のない文章だと感じた。
    この本自体が、なにか、やっつけ仕事のように作られたように感じる。

    私には全く響かない、価値のない本だった。

  •  絵画に描かれた手に注目し、分析。
     
     口絵での手の大行列は本編以上に観る者を喜び、あるいは畏れなどへ引き込んでは、また瞬時に別世界へ連れ回す。

     手は口ほどにものをいい。いや、手は口よりもものをいい。

  • 体には、人の生き方が表れる。手は特に。

  • こんな風な絵の見方もあるんだなと。美術館に行きたくなります。

  • 手にスポットを当てたことは面白い。手の表情に注目でき、手の美しさ、絵画の新しい見方を再発見できる。

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