- Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
- / ISBN・EAN: 9784544211085
感想・レビュー・書評
-
画家のスーラの作品の解説書ですね。
『イメージの森のなかへ』シリーズの一冊です。
主に「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を詳細に解説しています。スーラの大作ですね。
スーラの作品にふれたのは、学生時代の美術の教科書が初めてでした。点描画の光と影のコンストラクが強く印象に残りました。
県立美術館などで実際にスーラの作品を観賞して、かなり惹き付けられた思いもなしました。
人物は静寂でいて、一人一人が何かを思考しているように感じる不思議な感覚ですね。
スーラ自身も冷静で穏やかな性格だったようです。
解説の利倉隆さんはこう語ります。
スーラは色彩の科学者である前に詩人でした。
その詩はどこから生まれてくるのでしょう。
彼の点描のなかに深く静けさをたたえた、ほんものの詩が
あることは確かです。
絵の静けさは色彩と線とかたちの調和から、
その調和は彼の秘められた豊かな内面からもたらされます
そしてその内面は、謎です。
その謎を知るには、いくたびも彼の点描の詩に耳を傾ける
しかありません。
スーラの人物画が内面の思考を模索した表情なのは、スーラの詩情によるものなのかもしれませんね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
贅沢な鑑賞の手引き。
-
19世紀フランスの画家、スーラの絵画と解説。代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」はパソコンの背景画像にしているので馴染み深い。実物は2m×3mの大作らしいので迫力がありそう。これだけ大きな作品を、点描という気の遠くなるような画法で完成させたのがすごい。彼が31歳という若さで亡くなったのは、一生分の精神力を使い切ったからなのではないかと一瞬疑った。ズームで見ると本当に細かい点々の集合からなっている。うひゃぁ、と思わず声に出してしまうほどの緻密さ。この緻密さから生まれる深い静けさが好きだ。
-
もくじ:はじめは無人の島で、猿をつれた婦人、グランド・ジャット島の光と影、大作ができるまで、絵のなかの絵、沈黙の岬、無口な画家、森の思い出、セーヌ川辺の水浴、夕闇のサーカス、踊り子たちと楽士たち、未完のサーカス、消された自画像、ふたつのタッチ―ゴッホとスーラ
-
真摯に芸術と向き合う姿勢をあらためて教えられました。
舞踏や音楽、詩と比べると、絵画は概して静かです。鑑賞者側の感受性がもっとも試される芸術分野とも言えます。
利倉さんは、このシリーズで、それぞれの芸術家の命の響きに、丁寧にチューニングし、絵画を選び、言葉を選び、構成を緻密に練っています。
スーラは、科学者である前に詩人であった。
点描という技法以上に、画家の内面に迫ろうとする態度。
スーラに対する見方が一変した書物でした。 -
2010年9月2日
<Into the Forest of Imagination Seurat, a poet of the light>
ブックデザイン/森谷真弓(ワークスタジオ)