赤軍記者グロ-スマン: 独ソ戦取材ノ-ト1941-45

制作 : リューバヴィノグラードヴァ 
  • 白水社
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本棚登録 : 59
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (535ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560026243

作品紹介・あらすじ

「20世紀ロシア文学の最高峰」ヴァシーリイ・グロースマン。スタリングラート攻防戦からクールスク会戦、トレブリーンカ絶滅収容所、ベルリン攻略戦まで、作家が最前線で見聞した"戦争の非情な真実"を記す。

感想・レビュー・書評

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  • この本で何より印象的だったが、ナチスのホロコーストの現場を取材した部分です。ホロコーストというと、私たちはアウシュヴィッツを想像してしまいますが、トレブリーンカという絶滅収容所についてこの本では述べられています。そこでは80万人以上の人が殺害されています。その凄惨な殺害の手法は読んでいて寒気がするほどです。それを現地で取材したグロースマンはどれほど衝撃を受けたのか想像することもできません。 独ソ戦という世界の歴史上未曽有の絶滅戦争を最前線で取材した彼の記録は必見です。とてもおすすめな1冊です。

  • 4.31/52
    内容(「BOOK」データベースより)
    『「20世紀ロシア文学の最高峰」ヴァシーリイ・グロースマン。スタリングラート攻防戦からクールスク会戦、トレブリーンカ絶滅収容所、ベルリン攻略戦まで、作家が最前線で見聞した“戦争の非情な真実”を記す。』

    原書名:『A Writer at War: Vasily Grossman with the Red Army』
    著者:アントニー・ビーヴァー (Antony Beevor)
    編集:リューバ・ヴィノグラードヴァ (Luba Vinogradova)
    訳者:川上 洸
    出版社 ‏: ‎白水社
    単行本 ‏: ‎535ページ
    発売日 ‏: ‎2007/5/1

  • 私の本棚の片隅には「いつか読むんだ」と手付かずのままの長編
    作品がいくつか並んでいる。そのなかの一作品が『人生と運命』
    全3巻である。

    書いたのはヴァシーリー・グローズマン。旧ソ連の領土だった
    ウクライナ生まれのユダヤ人。第二次世界大戦時、独ソ連が
    始まると愛国心から兵士としての参戦を希望したが叶わず、
    従軍記者としてスターリングラード攻防戦、クルスク会戦、
    赤軍のポーランド進撃、そしてベルリン陥落までを取材した。

    従軍記者としての見聞を下敷きにして書かれたのが『人生と運命』
    なので、大作を読む前段階の知識として本書は見逃せない。

    副題にある通りに取材ノートからの独ソ戦を描いているので赤軍
    礼賛は当然としても、戦場となった村や町の住民から赤軍兵たち
    の乱暴狼藉を聞き取った内容もメモされている。さすがにそのまま
    記事にすることは出来なかったのだろうが。

    本書の注目は赤軍のポーランド進撃後、多くの証言から再構成された
    ナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅収容所を描いた文章だ。ただし、
    スターリン体制下でのソ連ではユダヤ人の被害を強調することには
    かなりの検閲が入ったようだ。

    アメリカの従軍記者だったアーニー・パイルは前線の兵士たちの
    姿を報道することでGIやその家族から愛された。赤軍に従軍した
    グロースマンも兵士やゆく先々の住民の心を開かせ、話を聞き出す
    才能を持っていた。ふたりとも、新聞に掲載された記事は読者から
    注目された。

    アーニー・パイルは沖縄戦で命を落としたが、グロースマンは戦後
    のソ連ではユダヤ人であることで冷遇され、作品を発表する場も
    奪われて胃がんに倒れた。

    グロースマンの死後、作品が発表されたのはサハロフ博士が原稿を
    マイクロフィルムにして海外に持ち出したからだと言われている。

    尚、独ソ戦と言えばあのアンサイクロペディアにさえ嘘を書かせな
    かったルーデル閣下だが、本書では出番なし。そうだよな、イワン側
    からの独ソ連戦なのだから。

  • 独ソ戦の勃発から終戦のベルリンまで従軍した作家ワシーリー・グロスーマンの膨大な取材ノートやメモを元に構成されたドキュメント。ユダヤ系の家庭に生まれ、理想主義から従軍記者を志願し様々な戦場を転戦とするも、その出自やリアリズムへの姿勢の変化に次第にロシア人社会に疎まれ不遇の晩年を送ったが、本書内の取材ノートを読むとその類まれな文才と徹底した現場主義に驚かされる。ドイツ侵攻時のモスクワの混乱、突然の戦乱でそれまでの生活をめちゃめちゃにされてしまった地方の農村たち、「地獄よりも恐ろしい」スターリングラードの攻防戦からの赤軍の転機、そしてベルリンへ押し寄せる戦友とも言える自国軍が起こした非情な現実。悪名高いトレブリンカ絶滅収容所の描写は凄惨極まりないが、同時に「なぜこのような殺戮が機能してしまったのか?」という疑問を解き明かそうともしている。
    グロースマンは理想としていた赤軍の残虐な行為も多く書き残したが、同時にエースパイロットから無名の歩兵まで、前線で戦ったいち兵士や農民をこよなく愛し、戦争の犠牲者を悼んだ。膨大な取材記録や、取り留めのない兵士たちのスラングを書いたメモの羅列をすべて読むにはかなりの集中力が必要だが(500ページ強!)一度読んでしまえばあっという間に引き込まれる情景の描写に彼の作家としての姿勢が伺える。

  • グロースマンの生涯について、
    独ソ戦期の1941年から1945年までを中心に解説する。
    グロースマン自身が記したメモ書きや
    公開した記事を軸に内容が展開するがこれが読みやすく、
    またグロースマンの人柄、感性の移り変わりがよく読み取れ面白い。
    戦時の戦場や街の状況描写も素直でスッと読み込めた。
    スターリングラード戦やホロコーストに関する記載が特に印象深い。

  • (欲しい!) 独ソ戦

  • 『スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1945』や『ベルリン陥落 1945』など第2次大戦の独ソ戦を多量の資料調査を元に詳細に描き出したアントニー・ビーヴァーが、作家であり独ソ戦のソビエト従軍記者であったグロースマンの取材ノートの引用をベースに構築した伝記とも戦記とも呼べるものです。先の2冊も印象深いものでしたし、佐藤優が帯で推薦した(ロシアつながり)こともあり、手に取ることになりました。

    スターリングラード攻防戦、トレブリーンカのユダヤ人収容所解放(グロースマンはユダヤ人)、ベルリン陥落といったイベントに同行した才気ある従軍記者が記録したノートや実際の新聞記事を並べることで、兵士の目線による戦場の実態を浮かび上がらせています。当時特有の背景を前提にしたノートからの大量の引用にも関わらず、思わず引き込まれるのは、グロースマンの才能なのか、ビーヴァーの腕なのか、それとも事実の持つ磁力のせいなのでしょうか。
    通り一遍の(多様な)説明は理解していますが、それでもやはり何がこういうことをたかだが60年ほど前に可能にせしめたのか。何かを言うことをためらわせるものがあります。(の割りには長めのレビューですが)

  • 大変価値が高い一冊!!夢中で読了した…掲載されている史料写真も、点数は決して多くない物の、大変に興味深かった…

  • 独ソ戦の名前も残っていない兵士たちの横顔が浮き彫りにされるグロースマンのリポート。敵も味方も結局は略奪し焼き尽くす戦争の醜さ、あらゆるところで展開されたユダヤ人への虐殺の残酷さ。一人の息子として連行された母を夢に見、父を思いやるグロースマン。不遇な作家の心の断片。

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著者プロフィール

1946年生まれ。戦史ノンフィクションの世界的ベストセラー作家。バークベック・カレッジ、ケント大学客員教授。『スターリングラード 運命の攻囲戦』でサミュエル・ジョンソン賞、ウルフソン歴史賞、ホーソーンデン賞受賞、『ベルリン陥落1945』でロングマン歴史賞受賞、『スペイン内戦1936-1939』でラ・ヴァンガルディア・ノンフィション賞受賞、その他の訳書に『ノルマンディー上陸作戦1944 上下』『パリ解放1944-49』などがある。

「2015年 『第二次世界大戦1939-45(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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