ほとんど記憶のない女

  • 白水社
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感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560027356

作品紹介・あらすじ

「とても鋭い知性の持ち主だが、ほとんど記憶のない女がいた」わずか数行の超短篇から私小説・旅行記まで、「アメリカ小説界の静かな巨人」による知的で奇妙な51の傑作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • わずか数行の話や言葉遊びのような物からエッセイや旅行記まで多岐にわたる短編集。訳者はあの岸本佐知子さんで強烈な印象で虜になったとあとがきにあるが、私はそこまでピンとは来なかった。印象深いのは「大学教師」「サン・マルタン」「面白いこと」「ロイストン卿の旅」

  • 面白かったです。意味が分からなくて。
    岸本佐知子さんが翻訳に選んだ本なら間違いなく変だろうという信頼があるので読みました。装丁も奇妙で好き。
    これは一体どういう…と思う間に話が終わります。訳が分からなくても全然不快じゃなくて楽しいし、悲哀に満ちてるので良かった。
    長めの作品では「ロイストン卿の旅」「裏のアパート」、短い作品では「天災」「自分の気分」「倫理」「大学勤め」「共感」が好きです。
    「共感」はほんと共感しかなかった…共感にもこんなに種類があると気付いたけどそのどれもに共感できる。凄い。
    あとがきも面白かったです。彼女の他の作品も読みたくなりました。

  • たった数行で終わる短編もあって、これって小説?と思うが、じゃあ他にどんなジャンルが当てはまるかと言われると、やっぱり小説なのだった。エドワードゴーリーの絵がよく似合いそうな、暗くて魅惑的な作品集。

  • ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』にリディア・デイヴィスが熱烈な序文を書いているのだが、そういえばリディア・デイヴィス読んだことがなかった、と手にとってみました。
    
    いちばん短いもので2行、長くて18ページくらいの作品が並んだ短編集。
    
    カフカ的というか、「ひねくれたユーモア」というか、言葉遊びみたいな作品もあったりして。
    
    なんとポール・オースターの元奥さん。そういわれると少し作風が似ているような気もする。
    
    リディア・デイヴィスのwikiにはポール・オースターのことが書いてあるけど、ポール・オースターのwikiには「大学時代から交際していた女性と結婚」、「経済的な問題などから妻との関係が悪化し、離婚に至る」とリディアの名前は「配偶者」欄にしか書かれていない。
    
    ふたりとも離婚後に作家として知られるようになるのですが、日本では2005年の本作まで彼女の作品が出版されていなかったためかと思われます。
    
    ぞわぞわするような感じと、でも決して暗くない、むしろクスッと笑える感じの不思議な作品でした。
    
    
    以下、引用。
    
    十二人の女が住む街に、十三人めの女がいた。誰も彼女の存在を認めようとしなかった。
    
    失敗から学べるものならそうしたいが、世の中には二度めがないことが多すぎる。じっさい、いちばん大切なことは二度ないことだから、二度めにうまくやることは、不可能だ。
    
    もしもこれを友人に見せれば、きっとその友人は、ハリケーンには中心があるのにこの話には中心がない、と言うだろう。
    
    私たちの理想は世界じゅうのすべての人にとても優しくすることだ。けれど私たちはいちばん手近な人間である夫にとても冷たい。
    
    ミシェル・ビュトールいわく、旅することは書くことである、なぜなら旅することは読むことだからである。それを発展させるとこうなるー書くことは旅することであり、書くことは読むことであり、読むことは書くことであり、読むことは旅することである。
    
    ロシア語には「裁判官による正義の悪用」を一言で表す語があると聞き、彼はこの国の民の信用ならざるを知る。アラビア語に「裁判官に渡す袖の下」を意味する一語があるのもこれに同じである。
    
    ロシア語は又「赤い」と「美しい」の両方を一つの言葉で済ますが、これは古代のローマ人が「紫」という語を、例えば「紫の雪」といった具合に色と無関係に使っていたことを想起させる。
    
    みんなの意見が一致することがらは、本当の彼女を言い表わしていると言っていいのかもしれないが、ひょっとすると本当の彼女などというものはどこにも存在しないのかもしれない、なぜなら本当の彼女をとらえようとするとあちこちで辻褄が合わなくなるからだ。
    
    失われたいろいろのものたち、でも本当に失くなったのではなく、世界のどこかに今もある。
    

  • 奇妙な短編集。極端に暗いというわけではないけど、終わりなく続くような陰鬱さを抽象的な文章で綴る51個の短編。

    『サミュエル・ジョンソンが怒っている』を先に読み、今回この『ほとんど記憶のない女』を読んだ。間違いない。リディア・デイヴィスさんの本の雰囲気に、完全にハマった。

    どう表現すればいいのか。
    適当にネット検索で見つけたスレッドに書かれた些細な文章、誰に向けて書かれているのかすらわからない誰かのブログ、詩なのか妄想なのか実体験なのか不明なテキストを添えたインスタグラムの投稿。
    自分と違う社会で暮らす人が書いた日常の不満や不安。そういうものを読むたび、それを書いた人の生活を想像してしまう。
    そういう雰囲気がリディア・デイヴィスさんの短編にはある。そう感じる。そしてそこに強く惹かれている。

    もう一冊入手できそうなので、リディア・デイヴィスさんの本を続けて読もうと思っている。

  • 岸本佐知子さんの訳には本当に感動する。「13人めの女」や「二度めのチャンス」が好き。短編の中の短編だが、抽象的なものが多いのでついていくのが精一杯の作品ばかり。しかもクールな文体で熱い。そんな作家のすごい作品を違和感なく日本語にのせてくれる翻訳。拍手しかないな。

  • この状態、出ていけ、裏のアパート、共感が好き

  • プルースト『失われた時を求めて』のひと

  • エッセイ風でもあり、私小説風でもあり、哲学的随想風でもあり、短編集で、そんなに厚くない本なのに、読破に結構時間がかかってしまった。
    エレイン牧師の名前が出る話が2編あり。他にもあるのかな。
    「グレン・グールド」が好き。
    必ず読むとは限らないが、気になる作家ではあり続けそう。

  • 面白い!どんどん引き込まれる感じがしました。個人的には短編の方が好きです。

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著者プロフィール

1947年マサチューセッツ州生まれ。著書に『話の終わり』(1995)、『ほとんど記憶のない女』(1997)、『サミュエル・ジョンソンが怒っている』(2001)、【Can't and Won't:イタ】(2014)他。マッカーサー賞、ラナン文学賞などを受賞したほか、短編集【Varieties of Disturbance:イタ】(2007)で全米図書賞にノミネートされる。2014年には国際ブッカー賞を受賞した。フランス文学の翻訳家としても知られ、ミシェル・ビュトール、モーリス・ブランショ、ミシェル・レリスなどの翻訳に加え、マルセル・プルースト『スワン家の方へ』の新訳を手がけた功績により、2003年にフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエを授与された。ニューヨーク州在住。

「2016年 『分解する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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