文盲 アゴタ・クリストフ自伝

制作 : 堀 茂樹 
  • 白水社
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本棚登録 : 347
レビュー : 73
  • Amazon.co.jp ・本 (110ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560027424

作品紹介・あらすじ

世界的ベストセラー『悪童日記』の著者による初めての自伝。祖国ハンガリーを逃れ難民となり、母語ではない「敵語」で書くことを強いられた亡命作家の苦悩と葛藤を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 祖国のハンガリーを逃れ、難民となり敵国の言葉(フランス語)で生活すること(書くこと)を強いられた著者の自伝。

    アゴア・クリストフは本当に言葉の少ない作家だ。

    それは彼女の歩んできた、途中から文盲にならざるを得なかった環境によるところが大きいのか、単純に小説世界を研鑽していった結果なのかはわかりかねるけれど、とにかく少ない。
    なのに驚くほど多くのつらさや悲しさが伝わってくる。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「驚くほど多くのつらさや悲しさが伝わってくる。」
      自分に厳しい人だったんだろう。と勝手に想像している。そしてフランス語だったからこそ、彼女の...
      「驚くほど多くのつらさや悲しさが伝わってくる。」
      自分に厳しい人だったんだろう。と勝手に想像している。そしてフランス語だったからこそ、彼女の作品「悪童日記」等を、私達が読むコトが出来たんだと(もしマジャール語で書かれていたら、こんな風なストイックさがあったかどうか?)、、、
      2013/02/18
    • 美希さん
      >nyancomaruさん☆

      私は心根そのものがストイックな人(ならざるを得ない)だったのかなという印象を受けました。
      他国の言葉で小説を...
      >nyancomaruさん☆

      私は心根そのものがストイックな人(ならざるを得ない)だったのかなという印象を受けました。
      他国の言葉で小説を書くという行為は全く私には想像が及ばない範疇です。
      2013/02/18
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「心根そのものがストイック」
      そう言えば、新しい作品が出ないのは、自らが認めなかったために中断した。と書いてあったなぁ、、、
      もう新しい作品...
      「心根そのものがストイック」
      そう言えば、新しい作品が出ないのは、自らが認めなかったために中断した。と書いてあったなぁ、、、
      もう新しい作品が読めないと思うと残念です。
      2013/03/28
  • 「読み、そして書くことの覚悟」

    30以上の言語に訳され世界的ベストセラーとなった『悪童日記』の著者、アゴタ・クリストフの自伝。

    「確かだと思うこと、それは、どこにいようと、どんな言語でであろうと、わたしはものを書いただろうということだ。」

    読み書くことが好きだ。今はそれが人生の一番の関心事になっている。今の自分はネットの情報も含めありとあらゆる物を自由に手に取って読み、思うままをこうして書くことができる。だが、本書のこの一文にふと立ち止まる。

    もしも、あるとき母語である日本語を奪われたとき、例えばそれに強制的にとって代わろうとするものがロシア語でも中国語でも韓国語でもいい、そういう状況に置かれたとしても、果たして自分は読み、書きたいと思うだろうか。

    アゴタ・クリストフは、生まれた国を捨て、異国で難民として居たたまれぬ思いに苛まれ、自身のアイデンティティを内包する母語を侵食されゆくことを感じながら、「敵語」と呼ぶフランス語をそれでも自分のものとして書ききった。

    あるいは彼女の人生のあらゆることが詩であったかのようにさえ思わせる、どこまでも簡素で淡々とした文章に、読み書くことの覚悟を問われる思いがした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「果たして自分は読み、書きたいと思うだろうか」
      アイザック・B・シンガーがイディッシュ語に拘ったように、頑なに日本語のみ生きるコトも可能かも...
      「果たして自分は読み、書きたいと思うだろうか」
      アイザック・B・シンガーがイディッシュ語に拘ったように、頑なに日本語のみ生きるコトも可能かも知れません。

      アゴタ・クリストフの映画化された「昨日」(公開時邦題は「風の痛み」)は、是非観たいと思っています。
      2012/08/06
    • yomikaさん
      アゴタ・クリストフは、純粋に読み書くということを愛したのでしょう。アイデンティティの体現である母語を奪われた果てに、言葉は手段に過ぎないとい...
      アゴタ・クリストフは、純粋に読み書くということを愛したのでしょう。アイデンティティの体現である母語を奪われた果てに、言葉は手段に過ぎないというところまで到達せざるを得なかったその人生の壮絶さを思います。
      そこに単に「好き」ではかたずけられない、覚悟が生まれたのでしょうね。
      2012/08/12
  • 自伝、でありながら細かくは語られていない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「細かくは語られていない」
      それが出来ない理由を推測。。。亡くなられてしまったので、続編が読めないのが残念。。。
      「細かくは語られていない」
      それが出来ない理由を推測。。。亡くなられてしまったので、続編が読めないのが残念。。。
      2012/06/21
  • 「悪童日記」の衝撃そのままの自伝。徹底的に乾ききった淡白さは、生まれた土地や家族、言葉からさえ切り離されて生きてこなければならなかったからなのでしょう。生きていくために三度も外国語を習得しなければならないなんて、それだけで想像できません。自分何年英語に触れてるんだか。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「自分何年英語に触れてるんだか。」
      同じく、、、
      まぁ、最低限の言葉が出来ないと生きてはゆけませんから。
      「自分何年英語に触れてるんだか。」
      同じく、、、
      まぁ、最低限の言葉が出来ないと生きてはゆけませんから。
      2013/03/08
  • アゴタ・クリストフさんの自伝です。
    強制的に自らの使う言語を奪われた経験が、著者の作品と同じような淡々とした文章で語られています。90ページほどの作品ですが、読み終えた後に深く心に残る内容でした。

  • 「ものを書き続けていかなければならない。たとえ、自分の書いたものに興味を持ってくれる人が一人もいなくても。たとえ、自分の書いたものに興味を持ってくれる人などこの先一人も現れないだろうという気がしても。」

    名著『悪童日記』で知られるアゴタ・クリストフの
    自伝的小説です。

    戦時下、祖国ハンガリーから亡命したものの
    彼女を待ち受けていたのは
    家族との別離、孤独、そして言語が理解できないことの苦しみでした。

    四歳にして本の虫となっていたほどの
    読書家であった彼女は、異郷の地で
    タイトルの通り「文盲」となってしまいます。

    母語で読み書きすることができず(しても通じず)、
    また、暮らす国で書籍はおろか、簡単な表示でさえ
    読むことができない苦難。

    それでも異国の言葉を学び、書き著し続けようという信念に
    胸を打たれずにはいられませんでした。

    今の私に必要な、強さを与えてくれる一冊でした。

  • 本文中で「オーストリアの偉大な作家トーマス・ベルンハルト」について描かれている箇所があった。一度読んでみたい。

    悪童日記ほど悲惨ではないが、祖国を引き裂かれ母語を奪われるという経験をした著者、意外なほどに遅咲き(なにしろ26歳にしてフランス語を習い始め、その言語でものを描いているのだから)。

    『今でもなお、朝、家から人がいなくなり、隣人たちが皆仕事に出かけてしまうと、わたしは少しばかり後ろめたい気持ちで台所のテーブルの前に腰を下ろし、何時間もかけて新聞や雑誌を読む。その間、掃除をしない。前の晩の食器も洗わない。買い物にも行かない。洗濯物を洗うことも、アイロンをかけることもしない。ジャムやケーキを作ることもしない……。
     そして、何よりも重大なことに、書くことをしない。』

  • 再読。
    亡命するときの荷物がかばんふたつで、ひとつが赤ちゃんのもの、もうひとつが数冊の辞書というのがらしいといえばらしいけれど、やっぱり尋常じゃない。
    21歳の若いおかあさんが4ヶ月の赤子と辞書だけを抱えて、国も家族も使い慣れた母語も捨てて生きていかなきゃならないなんて壮絶すぎる。育児でのこまごまとした困難も無数にあったと思う。このひとは書かないけども。おかあさんとしてのアゴタのことももっと知りたい。

    _______________

    “わたしも、始めよう。また学校へ行くのだ。”(P.88)

    “そしてわたしは、倦むことなしに何度でも辞書を引く。わからないことを調べる。わたしは熱烈な辞書愛好家となる。”(P.90)

  • それぞれの著書のあとがきに書いていることとほとんど一緒だったので、すぐに読み終えてしまった。あとがきも他の著書のあとがきとそんなに変わらない内容だったので、訳者さんもこれ以上書くことがないのかなーと。

  • 悪童日記の作者の自伝て事で、読んでみた。悪童日記さと同様に、淡々と、戦中戦後の恐ろしい、生々しい記憶を書き綴っているのが、凄い。
    作者が祖国を脱出したのは、1956年ハンガリー動乱の年だそうで、昔 見た事あるDVD君の涙ドナウに流れ はちょうどこの頃の話だったのを 思い出した。
    日本も、先の大戦で悉く惨禍にさらされた。しかし、日本がアメリカの庇護のもとではあるが復興し、平和だ自由だと喜んでいる頃、ロシア(旧ソ連)によって、ハンガリーや東欧の諸国への迫害がなされているとは、(私はまだ生まれてなかったが)夢にも思わなかった。

    アゴタクリストフは亡命と言うよりは、難民として、生活していた。そのため、母国語以外は敵国語だとして、フランス語は話せるようになっても、読むことも書くこともできなかった。


    単に字が読めない書けないと言うことでなく、母国語で読み書きできても、他所の国の言葉を理解し読み書きできなければ、それはもう文盲なのだ。そう思うと、そこから這い上がった作者は、素晴らしい。ただ、その後の著作がないらしいのが、残念だ。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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