- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560031971
作品紹介・あらすじ
自然や建造物、芸術作品など、私たちをとりまくこの世界には美しさがあふれている。しかし、時代や文化によってその基準はいろいろ。人はなぜ美しいと感じるのか。自分の境界を飛び越えて、さまざまな「美しい」を楽しもう。
感想・レビュー・書評
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秘境を旅した経験を持つ著者なので、世界の絶景について語った一冊かと思っていたらまったく違った。
人間は自分の文化の文脈でしか美を判断できない、ということが、非常にわかりやすく、例を交えて語られている。
今の美の基準が西洋の基準だということも、読んでいてなるほどなぁと思う。
パプアニューギニアの人たちが白人や日本人の美女を並べられて「誰が一番美人か」と言われてもわからない、ということや、首長族など身体を加工する文化を持つ部族が「その加工を美と思うのではなく、その加工をすることが自分の部族に属する、ということにつながり、その行為に美を感じる」というような話に、手を打ちたくなった。
そもそも「自然」の美しさを発見したのは人間の歴史からするとごく最近のことだ、という説も興味深い。
エルサレムの存在についての話も、視点を変える、新たな視座を持つ、ということの大切さを感じさせてくれる。
世界は美しいものに満ちている、という気持ちになる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者は研究者ではないのでここに語られていることがどこまで学問的に正確なものかはわからないのだけど、とても示唆に富んだ話が多く、いろいろと気づかされる本だった。
文章もシンプルながら流麗で読みやすいし。
こういうシリーズがあったのね。また読んでみよう。 -
[ 内容 ]
自然や建造物、芸術作品など、私たちをとりまくこの世界には美しさがあふれている。
しかし、時代や文化によってその基準はいろいろ。
人はなぜ美しいと感じるのか。
自分の境界を飛び越えて、さまざまな「美しい」を楽しもう。
[ 目次 ]
1 風景は発明されたもの
2 美人の条件ってなに?
3 アートと呼びたくないアートの世界
4 科学から美しいを考える
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
石器時代の洞窟絵画や精神障害者達のアウトサイダー・アートとかアートと呼びたくないアートを紹介しているくだりが面白い。
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たまたま手に取ったのですが、これまた思った以上に面白かったです。
美しさは普遍的ではなく、「それ」を美しいと感じるには、そもそも意識の対象とするには、人は何かしらの枠組みを得る必要がある。
だからこそ、ある美しさの見方を固定化してしまうことは、時に実態を無視し、他の価値観を軽視することにもなる。(「日本の美しい里山」は本当に揺るぎなく美しいものか?『AKIRA』の世界に懐かしさ、美しさはないのか?)
バイロンがベネツィアに「退廃の美」という枠組みを与えたときから、人々はベネツィアを美しい街として評価するようになった、とか、さらにそれが近代日本に入ってきて、国木田独歩が武蔵野の雑木林に「美しさ」を付与することにつながった、とか、浅学なので、ほぇ~そうだったのか…と思う箇所がいくつも。
あと、イスラエルという土地の持つ、現在進行形の多重レイヤー(とは表現されてませんが)のとらえ方は特に面白かったです。
同時期に読み終わった、毛利衛『宇宙から学ぶ ユニバソロジのすすめ』とも、図らずも通じるものがありました。読書の醍醐味。 -
「美しい」とはどういうことか、考えさせられる1冊です。
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美学+文化人類学+旅。最初から最後までひたすら「美しいとは何か」を安易でも奇抜でも高踏でもなく書く。レビューどおり教科書に採用されそうな端正な文、ヒネた読者をも反発させぬ慎重さと説得力。