ダンシング・ガールズ―マーガレット・アトウッド短編集

制作 : 岸本 佐知子 
  • 白水社
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本棚登録 : 25
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560042625

作品紹介・あらすじ

カナダの女性作家アトウッドは、その風土を思わせる透明感と、幻想味にあふれた珠玉の短篇集を生んだ。小説の醍醐味を満契させる、六粒の宝石をあなたに贈る。

感想・レビュー・書評

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  • 当事者以外は気付かない、隠された違和感をあらわにしてみせるさまざまな話が収められている短編集(「キッチン・ドア」は未来小説か)。アトウッドは「何かが良くないことになっている」ことをじわじわと書くのが本当にうまい。本書はSFではないのだけれど、『侍女の物語』と同じ場所が刺激されて、ぞくぞくしながら読んだ。岸本さんが訳しているのもあっている気がする。

    「火星から来た男」、「キッチン・ドア」、「ダンシング・ガールズ」が特に良かった。

  • 女性心理描写が巧み。そして男性心理描写も的確!「こうありたい自分」と「そうならない現実と自分自身」が日常目線で書かれた短編集です。

  • 何か変わったテーストの小説が読みたいと思いついてあれこれ書評などを見たりしつつ何となくしっくりこない感を味わった後、岸本さんの翻訳したモノというのがきっと今一番読みたいものじゃないかと気付いてこの本に辿り着く。

    「新しいアメリカの小説」と銘打たれたシリーズの一冊(でもアトウッドはカナダの人だけれど)である本書の帯を見ると、興味深いことに他にはオースターの「鍵のかかった部屋」(本当はシティ・オブ・グラスを出すつもりだった、と柴田さんがCoyoteで明かしてました)や、ティム・オブライエンの「僕が戦場で死んだら」などが並んでいる。アトウッドのこの本が、だからといって同じようなファンを引き寄せたかどうかは知らないけれど、自分にとって感慨深かったのは、最近はまっていたJudy Budnitzによく似たテーストの小説が既に30年も前に出ていたという事実。少しベトナム戦争の影があちらこちらに見え隠れするけれど、どの短篇も時による風化をそれ程受けていないように思う。

    Budnitzに似ていると書いたけれども、実はアトウッドのこの短篇集に収まっている作品はどれもほとんどオチがなくて、Budnitzのそれを読み終えた時に感じることができる解放感を味わうことはできない。それでも二人に共通していると感じるものがあるのは、読み進める過程で自分の中のどこかのねじがギリギリと巻き上げられていくような感慨のせいだと思う。しかし、繰り返すけれどもアトウッドはそれを解放してくれることはない。

    その一方で「ほらね、絡まってしまったでしょう」と、どこかで世間一般を信じていた自分がアトウッドに手玉に取られたような声が聞こえてくる過程で、ねじはリセットされる。不思議な味わいが残る。

    読み始めは、なぜこれを岸本さんが、という想いが頭の片隅をよぎったりしたけれども、読了してみればなんのことはない、岸本さんの「変なものを探り当てる力」の確かさを再認識したのであった。

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著者プロフィール

Margaret Atwood 1939年カナダのオタワに生まれる。オンタリオ北部やケベックで少女時代の大半を過ごし、トロント大学に入学、ノースロップ・フライのもとで英文学を学ぶ。その後、ケンブリッジ、ラドクリフ大学で英文学修士号を取得。さらにハーバード大学大学院で学んだ後に、カナダ各地の大学で教鞭を執る。処女詩集『サークル・ゲーム』でカナダ総督文学賞を受賞。詩、長編、短篇小説から評論、児童書まで幅広く活動する。詩集『スザナ・ムーディーの日記から』(1970)、小説『食べられる女』(1969)、『浮かびあがる』(1972)、『侍女の物語』(1985)『Alias Grace』(1996)などで世界各国の文学賞に輝く。最新作『The Blind Assassin』(2000)でブッカー賞を受賞。評論集『サバイバル』(1972)ではカナダ文学とは何かを正面から問いかけた。邦訳書に『キャッツ・アイ』(マーガレット アトウッド 著、松田雅子、松田寿一、柴田千秋訳、開文社出版、2016年)、『負債と報い――豊かさの影』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子訳、岩波書店、2012年)『死者との交渉―作家と著作』(マーガレット アトウッド著、中島恵子訳、英光社、2011年)『オリクスとクレイク』(マーガレット・アトウッド著、畔柳和代訳、早川書房、2010年)『またの名をグレイス 上・下』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子訳、岩波書店、2008年)『ペネロピアド(THE MYTHS)』(マーガレット・アトウッド著、鴻巣友季子訳、角川書店、2005年)『良い骨たち+簡單な殺人』(マーガレット・アトウッド著、中島恵子訳、北星堂書店、2005年)『カンバセーション アトウッドの文学作法』(マーガレット・アトウッド著、加藤裕佳子訳、松籟社、2005年)『ほんとうの物語』(マーガレット・アトウッド著、内田能嗣 訳、多湖正紀・山本紀美子 共著、大阪教育図書、2005年)『昏き目の暗殺者』(マーガレット・アトウッド著、鴻巣友季子訳、早川書房、2002年)『闇の殺人ゲーム』(マーガレット・アトウッド著、中島恵子訳、北星堂書店、2002年)『寝盗る女 上・下』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子・中島裕美 共訳、彩流社、2001年)『マーガレット・アトウッド短編集』(マーガレット・アトウッド著、Alan Turney編、久慈美貴 注釈、ロングマン・ジャパン、1998年)『食べられる女』(マーガレット・アトウッド著、大浦暁生訳、新潮社、1996年)『サバィバル』(マーガレット・アトウッド 著、加藤裕佳子訳、御茶の水書房、1995年)『Sudden fiction (2)』(「ハッピー・エンド」 Happy Endings 収録。ロバート・シャパード 著、ジェームズ・トーマス 訳、柴田元幸 著、文芸春秋(文春文庫)、1994)『ファミリー・ポートレイト—記憶の扉をひらく一枚の写真』(「偉大なる叔母たち」 Great Aunts収録。キャロリン アンソニー (Carolyn Anthony)編、松岡和子・前沢浩子訳、早川書房、1994年)『浮かびあがる』(マーガレット・アトウッド 著、大島かおり訳、新水社、1993年) 『青ひげの卵』(マーガレット・アトウッド 著、小川芳範訳、筑摩書房、1993年)『スザナ・ムーディーの日記』(マーガレット・アトウッド著、平林美都子 他訳、国文社、1992年)『侍女の物語』(マーガレット・アトウッド著、斎藤英治訳、新潮社、1990年→ハヤカワepi文庫(早川書房)2001年)『ダンシング・ガールズ マーガレット・アトウッド短編集』(マーガレット・アトウッド著、岸本佐知子訳、白水社、1989年)『描かれた女性たち 現代女性作家の短篇小説集(SWITCH LIBRARY)』(「急流を下る」 The Whirlpool Rapids収録。マーガレット・アトウッド・アリス マンロー・アン ビーティ 他著、岸本佐知子 他訳、Switch編集部編、スイッチ・コーポレーション書籍、1989年)などがある。

「2001年 『寝盗る女 (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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