チュ-リップ熱

  • 白水社
3.36
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560047217

作品紹介・あらすじ

フェルメールの絵のように謎めいた運河の街アムステルダムに燃え上がる不倫と策謀の炎。当時の名画を豊富にあしらい、小説の面白さを極めた傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 5/23 読了。

  • 金を含む単語からOPAC検索した所「鬱金香」「チューリップバブル」がテーマである本作がヒットし、一気に読めたのでこれを選びました。

  •  不倫を扱った単なる官能小説として本書を読むことはできない。
     本書は17世紀オランダを時代背景としており、当時のオランダでは格言と図像と注解からなる寓意画集(emblem books)が流行していた(特にヤーコプ・カッツの『道徳の寓意詩画集』)。本書の構成も本文の前に添えてある格言と本文と16枚のオランダ絵画から成ることから、構造的には寓意画集と似たものとなっている。文章だけからでなく、格言と文章、格言と絵画、絵画と文章とが影響関係にあり、本書を分類するならば「絵画小説」といったところか。
     本文の内容や構成、絵画の魅力も然ることながら、本書を読むことによって17世紀オランダ社会を知ることができる点も本書の魅力のひとつと思われる。世界初のバブル経済がチューリップによって引き起こされ、いかに人々がチューリップ熱(投機熱)にうなされていたがよく描かれている。その他に興味深かったのが、17世紀の床屋が抜歯や肢体切断といった外科的手術も行なっていたという事実である。床屋の前に置いてある三色の看板はサインポールと呼ぶらしいが、(本書での記述とは異なるが)三色の色が意味するのは赤が動脈、青が静脈、白が包帯らしい。(パリの外科医メヤーナキール創案)

     不倫話が苦手といって本書を毛嫌いするのは、とても勿体無いと思われる。
     寓意画集とオランダの関係から、次はスベトラーナ・アルパースの『描写の芸術』を読みたい。

  • 17世紀。独立を果たしたオランダは、かつてない好景気に湧いていた。

    トルコから伝わったチューリップはオランダの土壌で栽培され、品種改良が進んだ。
    オランダの国民に愛されたチューリップは、チューリップバブルという現象の対象物となる。
    珍しく美しいチューリップの球根は高値で売買され、あらゆる身分のオランダ人たちを投機の虜にしてゆく。

    こんなバブル絶頂の時代、チューリップ投機を楽しむある裕福な年配の商人に、ひとりの画家が雇われる。
    自分と若い美しい妻の肖像画を描かせるために、招いた年若い画家と、経済的には満たされながらも年老いた夫との生活を送る若妻は、燃え上がるような若い男との恋に落ちてゆく。

    そんな中、若妻の女中が未婚のまま妊娠してしまい、相手の男は行方知れずになってしまう。

    若妻と画家の許されざる恋が成就し、女中も無事に出産し、その子も幸せになり、年の離れた夫をうまく欺くアッという方法を妻は考え出すのだ。
    本当にこれにはびっくりしてしまうのですが、
    随所に組み込まれているチューリップ熱に湧く当時のオランダの時代背景、そしてカラーで挿入されているフェルメールやレンブラントの絵画。など、歴史や美しさのほか、それらを結びつけることで寓意や隱喩めいた想像などでも楽しむことができる。

    チューリップというと、アレクサンドル・デュマの『黒いチューリップ』を思い出します。
    預かった手紙により、無実の罪で投獄された青年は、監獄の番人の娘と恋をする。
    彼の球根を奪おうとする悪役をなんとかかわし、彼女の手で苦心作の黒いチューリップを開かせるのですが、
    デュマもオランダのチューリップバブルを聞き及んで書いたのかもしれません。

    デュマの描く『黒いチューリップ』は、プラトニックな純愛が、美しく珍しいチューリップを見事花咲かせ、無実の青年は釈放されて娘と結ばれ、めでたしめでたし というプロット。

    本作は、不倫で、泥沼ではないけれど、恋を成就させる方法が尋常ではなく、のちにすべてを知った年老いた夫の絶望がひたひたと静かに打ち寄せてきます。

  • 不倫の話で共感できないというコメントがあったが不潔な感じはしなかった。浅はかではあるけれど。一番現実を生きていたマリアが実際の幸せを手に入れるあたり以外と人生の深淵に迫っているとも言えるのかも。

  • 人をだます系好きじゃないから苦手

  • オランダ、アムステルダムなどを舞台とした作品です。

  • 17世紀チューリップの投機熱に浮かされた時代、不倫の2人が仕掛けた企て。最後に笑うのは誰か。

    スピルバーグが映画化権を取得しているそうですね。
    登場人物各人からの視点の短い章で構成され読みやすく、随所に挟まれる当時の絵画がまたこの本の魅力の一部になっています。
    面白かった!

  • 2010/2/1購入

  • 官能小説。
    途中で飽きてしまって読み終えてない。

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著者プロフィール

1948年生まれ。イギリスの作家、脚本家。映画『プライドと偏見』の脚本家として、英国BAFTアカデミー賞にノミネート。著書の『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』は2013年に映画化され、高い評価を受けた。

「2018年 『チューリップ・フィーバー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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