きらきら

  • 白水社
3.60
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本棚登録 : 184
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560047958

作品紹介・あらすじ

姉のリンがわたしに最初に教えてくれたことば、それは「きらきら」という日本語。深くてしかも透き通った海や空をあらわすことば。ある日系家族の強い愛のきずなを描き、全米の感動をよんだ美しい小説。

感想・レビュー・書評

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  • 学校図書館にカバーのない状態で置かれていた本なのだが、タイトルと著者名が気になり、いつか読みたいと思っていた。

    アメリカ南部に暮らす、日系人1世と2世の家族の物語を次女ケイティの視点で描く。

    アメリカに移住した日本人の苦労、我慢強さがひしひしと伝わってくる。貧しくつらい日々にも幸せを見出し、一日一日を懸命に生きる人々。

    リトルトーキョーのあるカリフォルニアへの移住者の話はドラマにもなったりして、わりと知られているが、南部の工場で酷使されていた日系人がいたことは、あまり知られていないだろう。

    コロナ禍でアジア系へのヘイトクライムが大きな問題となっているが、アジア系への偏見は昔からある。
    でも、必ず味方になってくれる人もいる。
    作者の原体験を元に書かれている物語のようだが、もっと多くの人に読まれるといいな…。

    こういう本が図書館に埋もれないように努力しなくては。

    2020.12.15

  • この作品は、私がフォローしている、ロニコさんのレビューによって、出会うことができました。
    ロニコさん、ありがとうございます。

    1950~60年代にかけての、アメリカで暮らす日系人家族の物語は、当時の状況により、決して楽ではない環境だと思うが、そうした描写も挟みつつ、割と楽観的に読むことができたのは、主人公である「ケイティ」の人間性と、彼女に数々の素敵な楽しいことを教えてくれた、姉の「リン」の存在が大きいと思われます。

    その素敵なことの一つが、タイトルの「きらきら」で、ものの見方をちょっと変えるだけで、世界が美しく見えるという、その考え方に、子供たちの中には、きれい事だと思う方もいるかもしれないが、当時のその環境で生きることを想像してみてほしい。

    ケイティの家族は貧しく、両親は子供たちのために、ほとんど働き詰めで、子供たちの相手は、専らおじさんがすることが多く、学校ではほとんど相手にされず、ささやかな日系人たちの集まりで、日々を過ごすことを。

    ただ、どんな状況でも変わらないのが、自然の存在であり、草の上に寝転がって眺める星空や、トウモロコシ畑の風を感じる気持ち良さには、他では代えがたい幸せを感じさせられ、何だか私も嬉しくなる。

    しかし、そんなケイティ一家の元には、さらに辛い出来事が起きてしまう。
    ネタバレになるので詳細は控えるが、それは人生において、遅かれ早かれ避けられない出来事ではあるが、状況によっては、抑えきれない怒りや悲しみ、絶望感に震えることもあるだろう。

    この作品で私の心に残ったのは、そんな状況においての、家族の再生に向けた気持ちの変化の、丁寧で細やかな描写でした。
    人は時により、絶望することもある。
    今度こそ、絶対に無理だ、もう全てを投げ出してしまいたい、何もしたくないんだ、と。

    しかし、そんな時であっても、品位を失わない人もいるし、他人の事を気にかける人もいるし、人の教えを健気に守り通そうとする人もいる。
    そこには、無意識に子供から大人へと変わっていく、ひとつの成長も見られる。

    それらの描写を思い出すことで、私たちの人生に起こるであろう、様々な困難を乗り切ってほしいという願いにも思えた、この作品は、著者にとって初のYA(ヤングアダルト)作品です。

  • 先に『草花とよばれた少女』を読んで、とても良かったので、ニューベリー賞受賞作のこっちはもっといいかも、と思ったら、もちろんとてもいいけれど、個人的には同じくらい。でも、こんなにいい作品を立て続けに書けるってことは、作家として力があるのだと思う。
     『草花…』の方は、主人公とその家族だけでなく、戦時中の日系人の姿、先住民族の苦しみなど歴史や社会の問題も描いていたが、こちらは、日系人としての苦労は描かれてはいるものの中心ではない。あくまで、主人公と姉を中心とした家族の物語だ。
     日本人は『草花…』の方を評価しそうな気がするが、こちらの方がより普遍的で、人種を問わず訴えかけるところが大きいのかもしれない。特に差別されてきた有色人種や移民の読み手には共感できるところが多いだろう。主人公一家がモーテルに泊まるとき、主人公の両親がフロントで「インディアンの部屋は裏だよ」と言われ、インディアンじゃないと言うと、「メキシコ人もだよ」と言われる(勿論日本人も裏。裏の部屋の方が2ドル高い)。両親が働いている養鶏場(卵から肉にするまで、すべてを扱う)は、社会で不当に扱われる人々が働く場所で、賃金が安いのはもちろん、子どもが死んでも休暇ももらえない。
     そんな中でも主人公は子どもらしく、姉は思春期の少女らしく育っていくのだが・・・。
     姉妹を描いた小説としても素晴らしい。たとえ日本人がアメリカに移民した歴史を知らない中学生でも、夢中になって読めると思う。
     ボンタン・ライス・キャンディ(ボンタン飴)、海草と塩漬けのプラムを入れたライスボール(こんぶと梅干入りおにぎり)など、日本の食べ物がまるで違うもののように感じられるのも面白い。日系一世から三世あたりがアメリカでどのように生きていたかもわかる、貴重な本だと思う。

  • 主人公ケイティは貧しさや偏見を、もう生まれた時から当たり前のことのように受け入れている。でも家族への愛情も当たり前に持っていて、それは最後まで揺らがない。自分では気づいていないかもしれないけれど、そこだけが自分の中にある確かなもの。

    ケイティはちょっと粗野なところがあるのだけれど、そこがいいです。 なんとも言えない透明感。それは日本の若手の女性小説家の作品によくある狙った透明感とは違うのです。
    読み終わってから改めて表紙をみると、またグッときます。

  • 「どこにでもあるなんでもないものを使って、世界がどんなにすばらしいかを見せてくれるのが得意」だった姉のリン。
    それを受けとれる妹のケイティ。
    どちらもステキだと思います。

  • 日常生活を書いたものであんまりハマらなかった。

  • アンネの日記を彷彿とさせるような、作品でした。

    舞台は1960年代のアメリカ、語り手は「帰米」の両親をもつ日系三世の少女ケイティ。両親は養鶏場と鶏肉加工場で働いている。

    差別、偏見、貧困、搾取と、親友で天才な姉、めったに怒らない父さん(何をしてもよくやったと言ってくれる)と、きゃしゃで上品でな母さん、世界一おとなしい赤ちゃんのサム。ケイティはそんな環境と家族の中で過ごしている。

    淡々と、時が経つように物語が進み、クライマックスに向けてケイティの感情が大きく波打つ様はYA文学とは言え読みごたえ十分。

    訳が、少女の語るようにあえての仮名書きになっている言葉や、意味を理解せず使っている言葉がわかるようになっていたり、と細やかで嬉しくなります。

    「きらきら」を感じることはどんな状況でも可能であるとケイティから学びます。

  • 我が家の芝生はきっといつだって青い
    という話し。
    世界はいつだってきらきらになりうるのだ!
    それがこの本の主題!!

    て。
    こんなの読んだら泣いちゃうに決まってるなぁ。
    そして読み終わって耳をぱたぱたしてしまうのです。

  • アメリカに暮らす日系人のお話。
    オノパトペって日本独特のモノって聞くじゃない?
    「きらきら」と言う言葉を、日本を知らない彼女たちはどんな思いで…。と、中から。
    そして、これは英語で書かれたアメリカの本だから、これを「異国情緒」として読む英語圏の人達は、どんな風に…と、外から。
    両方向から興味深い本だった。
    ただ、アメリカに暮らす日系人の特異さ…みたいなものが、時代なのかもしれないけど、これを読む外国人たちの「ホァ~イ!ジャパニーズピィポ~!!」的な奇異なモノを鑑賞する眼を意識し過ぎてないかぃ?って所が気になった。
    なにしろ、人が死ぬのって苦手…。

  • 好きな箇所

    I saw my father was not intimidated by Mr. Lyndon. And that was how I learned that even when you are very very wrong, if you apologize, you can still hold yourself with dignity.


    He would accept anything and anyone, so long as he could earn a living to help his family. But I saw that on this one day, for the first time since I'd known him, he could not accept the way his life was turning out.

    Lynn could take a simple, every day object like a box of Kleenex and use it to prove how amazing the world is. She could prove this in many different ways...

    Lynnie had always thought crickets and even crows were good luck. Now and then I thought I heard Lynn's lively voice. The cricket sound, "chirp, chirp!" But I heard "kira-Kira!" The crows called, "caw! Caw!" And I heard " Kira-Kira!" The wind whistled "whoosh! Whoosh! " and I heard "Kira-Kira!" My sister had taught me to look at the word that way, as a place that glitters, as a place where the calls of the crickets and the crows and the winds are every day occurrences that also happened to be magic.


    Sometimes, no matter how hard I tried, I got a C. That happened a lot. But when I worked hard, I got better grades. This surprised me. I guess because Lynn was so smart and it had seemed easy for her to get good grades, I never noticed how hard she worked. I thought getting an A was something that happened to you, not something you made happen. But after Lynn had died and I'd spent a lot of time thinking about her, I remembered how often I'd seen her sitting at her desk, chewing her pencil as she worked for hours on her homework.

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