東方正教会 (文庫クセジュ)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560056073

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  • 正教会の歴史であつかわれているのはローマからビザンツ、オスマン朝統治下、ロシア帝国、ソ連時代途中まで。大まかな流れが掴めて良い。また、多くの疑問に答えてくれる。三位一体とは? 聖霊とは? フィリオークェ問題とは? 典礼とは? イコンの持つ意味、聖堂建築に込められた意味は何か? さらには人間の生きる意味に至るまで、正教会の視点をコンパクトにまとめている。この一冊を読んでも、2022年現在のモスクワ総主教の言動は本来の正教会のあるべき姿から完全に逸脱しているとしか言いようがないように思う。

  • <序文>
     ギリシャ人は宗教的な啓示と哲学を体系化しなかった(⇔中性スコラ哲学と対照的)⇒霊肉を一つとする人間の統一。
     
    <歴史>
     7月の公会議
     キリストにおける神性と人性のあり方。
     まことの神であり、人でもあるという核心が作られた。
     キリストにおいて、人間の意志は神の意思と結びつき神と人との「エネルゲイア」は深く浸透し合っている。

    7C
     コンスタンティノポリスが東方の中心となった。
     しかしほかがイスラム教区となった。

     シスマ 10C末
      文化 東方:ギリシャ語、西方:ラテン語にわかれる。
      ローマ教皇が地方教会への支配的法的な権限をもとうとした。
      11c 皇帝から独立した。
      
     人間性の統一(霊肉の統一)や真の認識はひとりひとりがキリストの人性に秘跡を通して出会い、これにずかること。しかもそれが聖霊の働きによってなされる。
     
     神の本質は隠れていて、人間には知りえないが神はそのエネルゲイアにおいては霊肉の統一として人間に自らをあずからしめる。
     
     ビザンツ帝国は
     イコノクラスム等により教会を手中におさめようとしたが、失敗。その分国と協会との”協調”がはじまる。しかし、その結果帝国民ギリシャ人と、神の民が同一視され、民族主義的なメシアニズムという誤りに陥った。
     ビザンツについで、ロシアが正教会の伝導の中心へ⇒民族主義的なメシアニズム

    17C ニーコンの改革
     ロシア教会を一般的な正教に立ち戻らせる。⇒結果弱体化し、ピョートル大帝の世俗化に対抗できなかった。

    19C ドイツの観念論の影響を受け「信仰の普遍性は自由な共同体により成立維持されるという教会論(ソボールノスチ)を作り出す
    1.正教改革+盛況によって、近代の現実をすべて包括
    2.全てを包む神の属性(ソフィア)中心のキリスト教宇宙論
    3.実存主義やキリスト教的な人格主義から認識の対象は全体である

    終末論のうちに人間と大地の正しい関係をミサの聖体において啓示しなければならない(ブルガーコフ)

    20C ソ連による弾圧
    第二次世界大戦 戦争に積極的に参加し、国家と<正常化>した

    <神学の基礎>
    ・<知る>とは聖霊の導きにより三位一体の神の完全無欠な愛に預かること
    ・人間の知性は堕落しているが、それを認めたとき聖霊の光が差してくる。
    ・神の本質は客観的に捉えられない神秘的な「他者」であり、神のエネルゲイアは位格そのものから差し出されたもの。
    ・<神をじかに感じること>によって、初めて人間は絶対確実なところに身を置くことができるのであり、教理はただそれを教唆し、我々をそこに近づけようとするに過ぎない。
    ・<人間が神になることができるようにと、神は人間の姿をとられた>しかし、人間は堕落してしまった。人間が神化するためにはキリストの贖いと聖霊の導きが必要。

    三位一体論
    カトリック 父子両方から精霊が出る
    正教 父だけから出る

    ・人間論
     聖なる人間は、人間の統一性を全うし、隣人と異なっている。
     彼は、自分勝手な意志や幸福を投げ捨て、持ち物を人に捧げ、我が身を捧げる。
     人間の<包括的・超個人的・共同体な性格>
     精神的な意味での教会の普遍性⇒ソルボーノスチ
     共同体的人格主義

    ・教会は社会を超越しながら、しかも社会に対して責任を持つ人格的なもの。
     それがめざすのは全てのものの統一化。プレーローマ、神化した人間と変容した宇宙との充溢である。なので、キリストの再臨が求められている。その際、万物は復活し本来に帰る。

    <教会>
     キリストの「からだ」。頭は天にある。
     教会の基礎は秘跡にある。これにより共同体が生まれ、教会が生まれる。
     秘跡には位階制席が必要。
     
     典礼 神の「光」と「生命」を伝えるヨハネの言葉に基づいている。
     秘跡:恐ろしい。神の聖性は不純を焼き尽くす火
     ただ神父だけが触れられる。
     絶対他者の神が典礼を通して信徒に近づいてくる。
     「神の王国」を地上で直接に体現する
     古代東方の苦行者 肉体を離れるのではなく「聖霊」にみたされる
     
     イコン
      心=心臓は人間の全体を統一する場所。

  • 本筋から外れるが、江渡貝邸最後の晩餐のカットを見て以来、何らかの形でキリスト教が話中で登場するのではないかと思うので、こちらのリストに列挙することにした。
    正教会関連が大半なのは、ヒロインの父がロシア極東地区からの移住者らしいことからの類推と、明治期日本におけるキリスト教を考えたらニコライの存在は欠かせないだろうと思ったため。(アテが外れたらリストを分けることにする)
    なお、正教会の信仰や聖書解釈の主だった解説はハリストス正教会がウェブサイトで公開している資料に詳しいので、そちらを参照されたし。
    http://www.orthodoxjapan.jp/pdf/new-tebiki.pdf

  • 基本知識を得るにはいい資料だと思うのでまた読むことにする。

  • 基本知識を得るにはいい資料だと思うのでまた読むことにする。

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