ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス 51)

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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560070512

作品紹介・あらすじ

発表から半世紀、いまなお世界中の若者たちの心をとらえつづける名作の名訳。永遠の青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカ文学概論の授業で読んだ教材その2。

    野崎孝さんによる、ホールデン節とでも呼べそうなクセのある翻訳が好きだった。邦題もやっぱり素敵。あの真っ青な装丁も。

    そのため、授業で読んでしばらく経ってから出た記憶がある村上春樹さんの翻訳には馴染めず(^^;
    立ち読みして、すぐ戻したような気がする…。

    今でも印象に残っているのが兄弟姉妹の描写。
    自分と比べて、いかに優秀で素晴らしいか。
    今思うと、かなり美化されてるとも思うが。

    作家をやっている兄。
    優秀だったが幼くして亡くなった弟アリー。
    愛らしい妹フィービー。

    特に弟と妹を誇らしげに語り、
    「きみもきっと好きになると思うよ」と言うホールデンには、
    無垢で純粋なもの、知性への憧れを感じるし、それらが最も美しく、永遠なるものだと考えているのがわかる。
    迷い、怒り、悩み、揺れつづける少年時代だからこそ。

    フィービーを穏やかに見守るラストシーンも良かった。
    ホールデンじゃないけれど、彼女のまっすぐな成長を望まずにはいられなかった。
    永遠なるものなんて、存在しないとはわかりつつ。


    …今日(1/27)は、サリンジャーの命日。

    • 円軌道の外さん
      お久しぶりです!
      仕事の多忙がたたったのか、
      只今、人生初のインフルエンザにかかり、
      自宅療養中であります(泣)

      今更ながらアセ...
      お久しぶりです!
      仕事の多忙がたたったのか、
      只今、人生初のインフルエンザにかかり、
      自宅療養中であります(泣)

      今更ながらアセロラさん、英文科やったんですね(笑)

      自分はしがない工業高卒ですが(笑)、
      バンドで歌詞を書いてた関係もあって
      必修科目も英語を選択していたし、アメリカやイギリスの文化にも
      音楽を通じて興味を持っていきました。

      にもかかわらず!
      ライ麦畑は大好きだったジョン・レノンを殺害した犯人が持っていたということしか知らず、
      恥ずかしながら、いまだに未読なのです( >_<)

      だけど、アセロラさんのレビューを読ませてもらって、
      何かとても純粋なものが詰まった物語なんやろなぁ~って、
      少し興味を持ちました(笑)(^^;)

      外国文学は最近ご無沙汰だけど、この機会に
      ライ麦畑デビューしてみようかな(笑)

      あと、余談ですが、
      アセロラさん、ガラケーユーザーやったんですね。

      実は自分も今年からスマホデビューしたばかりで
      今、コメントひとつ書くにも四苦八苦しております(汗)( >_<)

      2014/02/27
    • アセロラさん
      円軌道の外さん、お久しぶりです~!こんにちは♪
      と思ったら、インフルエンザでしたか…(汗)
      ゆっくりお休みになられて、またお元気になられ...
      円軌道の外さん、お久しぶりです~!こんにちは♪
      と思ったら、インフルエンザでしたか…(汗)
      ゆっくりお休みになられて、またお元気になられますように。
      春もだんだん近づいてきましたしね。

      はい、一応、英文科でした(笑)
      でも、海外ものを読んでいたのはこの頃ぐらいですし、映画や音楽にお詳しい円軌道さんの方があちらの文化に明るいのではないでしょうか。
      バンドの歌詞を書いてただなんてカッコイイですね~♪作詞は難しそうなので凄いと思います。

      ライ麦畑はロック精神をお持ちの円軌道さんには、おそらく響く作品だと思うので、ぜひぜひ♪

      そして、未だにわたし、ガラケーです(苦笑)
      今のケータイがこの夏で6年も使っている事になるので、いい加減機種変しようと思ってます(でも、ガラケー・笑)
      2014/03/03
    • Controlallpplさん
      この本はCIAの前身組織に努めていた作者のサリンジャーが、人をマインドコントロールするために書いたメッセージ性ゼロの小説です。だからあらすじ...
      この本はCIAの前身組織に努めていた作者のサリンジャーが、人をマインドコントロールするために書いたメッセージ性ゼロの小説です。だからあらすじが意味不明だし、英語版を読むとある箇所に特殊なアルファベットの並びがあって、それを見た瞬間頭の中に特殊な電気が走ってあらゆる命令に従うロボットになるそうです。
      2022/07/22
  • 世界的ベストセラーはこの日生まれた!|株式会社白水社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000048677.html

    『ライ麦畑でつかまえて』解説 - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/news/n12510.html

    U51 ライ麦畑でつかまえて - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b205511.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      NY図書館、禁書4作品貸し出し 「ライ麦畑でつかまえて」も | 共同通信
      https://nordot.app/88867483928915...
      NY図書館、禁書4作品貸し出し 「ライ麦畑でつかまえて」も | 共同通信
      https://nordot.app/888674839289151488
      2022/04/19
    • Controlallpplさん
      この本はCIAだかが、人をマインドコントロールして言うことを聞かせる為のロボットにする為に書かれた悪意100%の本です。
      だからアメリカで危...
      この本はCIAだかが、人をマインドコントロールして言うことを聞かせる為のロボットにする為に書かれた悪意100%の本です。
      だからアメリカで危険図書扱いされている…
      2022/09/11
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      Controlallpplさん
      ひょえー、ナント恐ろしい!
      まぁ、硬い椅子に座ってツマラナイ授業を聴いていた若者の抱いた疑問に、別の道がある...
      Controlallpplさん
      ひょえー、ナント恐ろしい!
      まぁ、硬い椅子に座ってツマラナイ授業を聴いていた若者の抱いた疑問に、別の道があるヒントを与えそうだから、従順な働き手を製造するコトを目的とした学校の経営者には嫌われるでしょうね。。。
      CIAだかナンダカが関わっているなら、国家に忠誠?を示したい学校は、推薦図書にしそうな気がする!
      2022/09/11
  • 再読。10代で初めて読んだ時は「苦手」と思ったので、あまり期待せずに読み始めた。ところが意外にも冒頭から魅了されて、最後まで一気に読んでしまった。

    世界はみんなインチキで、純粋なのは自分だけ。本当の自分を理解してくれる人などいないーー感受性が豊かな若者ほど、そんな疎外感に悩まされるものだが、ホールデン少年はその代表格だ。

    そんなホールデン少年に、若い頃の私は共感ではなく、反発と苛立ちを感じていた。自分だけが人間らしい感情を持っているとでも思っているかのような、若者特有の傲慢さと自意識過剰ぶりが気に入らなかったのだ。だが、歳月を経た今あらためて読んでみると、結局その反発と苛立ちこそ自分の中のホールデンであり、一種の同属嫌悪だったのだと分かる。

    そして気がつけば、今の私はホールデンの目線ではなく、彼を見つめる大人側の視点に立って、彼を慈しむように物語を読んでいる。いつの間にか自分は大人になり、青春時代に終わりを告げていたのだ。この物語を再読してみて、改めて歳月というものを実感させられた。

    • Controlallpplさん
      メッセージ性なんて無いんですよ。元CIAの局員だったサリンジャーが人をマインドコントロールするために書いた小説ですから。メッセージ性ゼロ、悪...
      メッセージ性なんて無いんですよ。元CIAの局員だったサリンジャーが人をマインドコントロールするために書いた小説ですから。メッセージ性ゼロ、悪意100%の小説。
      2022/07/22
  • これには僕もすっかり参っちまったよ。ほんとなんだ。

    ようやく読んでみたのが27歳。少し遅すぎたんだろうね。僕には大して面白くなかったんだな。
    こういう口調は僕のタイプではあるんだけどね、あまり共感できなかったんだ。なんたって彼の行動力は僕の70倍は確実にあるだろうからね。ほんとだよ。

    みんなも言ってる通り、読む時の気分によって面白さが変わるだろうね。今の僕の気分はひどく疲れていてね、すっかり読む気になれなかったんだ。それは僕のせいでもあるんだよ。そいつは認める。ひとまず時間が経ったらまた読んでみようと思うんだ。これはほんとなんだぜ。

  • おとなは嫌いだが自分も年齢は重ねていく。16歳の少年の迷いと苦悩を描いた「永遠の青春」を謳った名作。

    この本は大人から10代に薦める本というより、10代に自ら手を伸ばしてほしい作品。そして10代をとっくに過ぎた、しかも女である私が読んだところでこの本の魅力の半分も汲めないなぁと自覚しました。

    大人と子供の狭間で揺れ動くホールデンは純粋で、正直でありたくて、世の中に心底幻滅し、自分らしく生きようと奮闘します。しかし社会やルールに反発しながら生きるのはとても難しいことだと悟り、結局自分自身の不甲斐なさ、世の中の理不尽さに苦悩します。
    ホールデンのような人は傍から見ると正直とても面倒だけれど、誰にでもホールデンのような時期はあっても良いと思うし、実はあまり表に出されていないだけで大小なりとも10代が抱える感情。ホールデンの綴る苦悩に自分を重ね、同志を見つけたようにこの本に没頭する若者がいる。だからこそ世界中の多くの人から長く支持を受け続けられているのだと思いました。
    タイトルは秀逸で、まるで彼を肯定するような優しさを感じます。気持ちの良いラストでした。

  • 好きな漫画や音楽に悉く現れる「ライ麦畑でつかまえて」。
    そして夫と出会った時も、好きな本はライ麦畑でつかまえてだと言われ、いつか読んでみないと…と思ってはいたものの中々読む機会がなかったですが、ついにこの度読破しました!
    村上春樹訳も家にはあったのですが、初めはこちらかなと。
    1ページにびーっしり文字が埋まってて、最初は読むのが一苦労。続けて読んでいくうちやっと慣れてきて、サクサク読めるように。でも結局読み終わるのに2週間もかかってしまいました。
    終始ホールデンくん視点の語り。ホールデンくんはとっても捻くれてて、世の中全てが面白くない。でも時折純粋で真面目な部分を感じる。そんなホールデンくんに魅力を感じる人たちはいっぱいいるんだろうな〜と思いました。私は共感するにはもう歳をとりすぎたかな。

  • 三分の一まで読み進めて物語の道筋に不安を覚え、三分の二まで目を通して諦めの境地に入り、残るページはさもケッサクかのような錯覚を起こしながらくまなく視線を走らせた。
    読後の今、何事かを無性に言いたいのだけれど、この作品を評する取っかかりを全く見出せない。とりあえず何か適当なことを喋りながら批評するかと見切り発車しようものなら、すぐさまホールデンの奴が意識上に迫り上がってきて(あからさまにホールデン語の影響が表れた言い回しをするのが悔しいのだが)気が滅入っちゃう。

    本書を半ば読み進めたあたりで、ホールデン語でブクログのレビューを書いたら面白かろうと思って彼の文体研究に取り組んだ時間があった。しかし徐々に気づくことになる。とくに技巧を凝らさなくたって自分はホールデンになれるのだと。というか、すでにぼくは、往々にしてホールデンである。むしろホールデンじゃない状態とは何かを冷静に分析できないぐらいだ。カミュの描いた異邦人ほどに<異>と切り捨て、嘲えない。
    デリンジャー現象が電波通信を妨害するものであるなら、サリンジャー現象はさながら、言語を介した意思疎通をつまずかせるものだと言えるのではないか。話すとはどういう行為か、また人の発話を聞くとはどういう行為か、サリンジャーはその問題をわざわざ問い、読者を不安に叩き落とす。しかも、この落下を受け止める地表は(本書で丁寧に言及されているとおり)無い。

    ……これには参っちゃったな、ぼくも。ほんとだよ。

  • まぁ本の名前だけは君も知ってると思うし、実際に名作だってことをいろんな場所で見聞きしてたから僕もこれに手を出してみたいなとずっと考えてはいて、実際にこうして手を出してみたんだけれど、いざ読み始めたらびっくりしちゃったよ。何でかっていうとね、地の文が読みづらいんだ。これがまったく読みづらいんだよ。まわりくどい話ばっかりしてて要領をえないし、そのせいで肝心の話のすじにまったく没入できないんだ。僕はまわりっくどい文章を書く奴がきらいでね。中学校の時のクラスメイトに、読書感想文なのにろくに本の中身の話を書かないでだらだらと自分の話を書いてるような、それで文字数を稼いでるみたいなさ、とにかくそういう奴が居て、しかも一人じゃないんだぜ、クラスに何人もいるんだ――まったく嫌になるよ。で、また、そういう奴に限ってそこで代わりに書いている自分の話も、ろくに面白くなんかないんだからね、まったく。とにかくこの本も、そういういらいらしてくるような文体なんだ。ただ、これが名訳って呼ばれてる理由は分かる気がする――実際、そうだって分かるんだ。だってね、こんな文体で最後まで書き続けられてて、それでも実際、多くの人が読んでるような本になってるんだからさ。
    そんな訳で何とかこの本を読み終えたわけなんだけど――時間がかかったことは事実だね。僕は毎日寝る前に時間を決めて、読めるだけ読もうとか思ってたけどさ、気が進まなくて本を開いてすぐに閉じちゃった夜もあったな、それも何度もさ。でもどうにかついさっき読み終えて……ああ、最後のあたりは結構ぐいぐいと読めたよ。あと50ページって分かるとさ、やっぱりちょっと本をめくる勢いもつくってもんだよね、人間って、ほんとにさ。
    で、この物語の主人公に共感するかって言えば、それはまったくのノーだね。だけど、こういう自意識過剰で、自分で自分をコントロールできない、世の中の何もかもがきらいで、だけどどうしてもきらいになりきれなくて、そんな人間像ってわかるし、ちゃんと伝わってきたしさ、そういう哀しさみたいなものはさ、すごくよく描けてたと思うよ。そういう「堕落していく」人間のお話として読むならば、これは結構悪くないと思ったね、僕は。だけど、これを評論家やファンみたいな人がさ、若者のバイブルとか書いてるんだとしたら、それはおまえ、もうちょっと頑張れよって思うことは事実だな。僕はだいたい自分で自分のことをかわいそうと思うような、ああ、これは僕のことだとか、そういう発想をする人間なんて気持ち悪いとしか思えないね。まるで自分が小説の主人公になったみたいな具合に、これは僕なんだからみんな僕をホールデンみたいな人間だと思って、あわれんでくれよみたいな主張をする奴ってさ、へどが出るよ。だけどね、自分自身だってこんな人間じゃないなんて保障は、どこにもないぜって、サリンジャーはこの話を通して言ってきているような気もしたな。同属嫌悪って言葉があるだろ。この主人公は自分だ、ってと思おうと、自分とは正反対だ、と思おうと、結局それってもうサリンジャーの手のひらの上に来ちゃってるわけだよね。そういうことさ。で、実を言うと、自分ももしかしたら周りからはこんな人間に見えてるのかもな、って思ったんだな。卑屈な考えだってことは分かってるけれど、でも実際そんな気がしたんだ――。変わってるだろ、僕は。でも、変わってない人間なんていないんじゃないかって、実際そう思ったりもするんだよな。

    • ひとこさん
      あなたのレビューにセンスを感じる。まさにその通りだと思うよ
      あなたのレビューにセンスを感じる。まさにその通りだと思うよ
      2011/08/24
  • 加藤シゲアキさんのおすすめ本。
    退学処分になった主人公ホールデンが学校を出て家に帰るまでの心の内がそのまま口語体で文章化されています。途中の展開が遅くて「面白くなるはず。修行だ」と読み続け、完読しました。

    ホールデンは友達のことや出会った人のことをボロクソに言う、人から避けられているのがわからない、親切にしてくれる人のことを頭がいいという、など、中二病というか、子供っぽい。自分の見た目が誰から見ても子供であることに気が付かず、大人の年齢がわからない。読み始めはただの性格の悪い奴、と思えるけれど、読み進めるとただの虚勢を張っているだけとわかります。
    人に対する迷惑も、気に掛けてくれている人の想いも読み取れないホールデンにツッコミつつも、自分自身も若い頃勘違いしていた、とか、自分の子供もこういうところがある、と思うと、馬鹿だなあと思う一方で可哀そうになってきます。

    ホールデンが妹と話すライ麦畑の場面を読んで、不思議な気分になりました。
    私自身どんな気分かわからないけれど、なぜかスーッとするような感じです。
    面白かったです。何が面白かったの?と聞かれても、わからないし人にも勧めないけれど、この不思議な気持ちは特別なものだと思います。

    • yhyby940さん
      初めまして、私は何度もこの作品にトライしていますが途中で断念しております。今回、あなた様のコメントを見て再度ページを開いてみようと思いました...
      初めまして、私は何度もこの作品にトライしていますが途中で断念しております。今回、あなた様のコメントを見て再度ページを開いてみようと思いました。ありがとうございます。本棚をフォローさせていただきます。よろしくお願いします。
      2024/02/23
    • ゆうこさん
      はじめまして、yhyby940さん。

      コメント&フォローありがとうございます!
      この本、私自身よくぞ読んだと思います。
      色々な解釈や感想が...
      はじめまして、yhyby940さん。

      コメント&フォローありがとうございます!
      この本、私自身よくぞ読んだと思います。
      色々な解釈や感想が出る本って面白いですよね。
      yhyby940さんの感想、楽しみにしています。

      私もフォローさせて下さい。どうぞよろしくお願いします。
      2024/02/23
    • yhyby940さん
      ゆうこさん、ご返信ありがとうございます。この本のタイトルが、何だかカッコよく感じて学生の頃、読んでみたのですが、すぐに断念しました。その後、...
      ゆうこさん、ご返信ありがとうございます。この本のタイトルが、何だかカッコよく感じて学生の頃、読んでみたのですが、すぐに断念しました。その後、いろんな経験を重ねた今だから再度読んでみたいと思えました。フォロー、ありがとうございます。ゆうこさんの本棚を、これからの読書の参考にさせていただきます。宜しくお願いします。
      2024/02/23
  • ホールデン・コールフィールドは、ペンシルヴェニアの高校を退学になった16才の男の子。富裕層の家庭の次男である彼は、自意識過剰で、繊細で、あらゆることに批判的です。本書では、彼がクリスマス直前のある土曜の午後に寮を出て、月曜の午後に妹と動物園を訪れるまでの二日間を、絶望と希望の狭間で目まぐるしく過ごす出来事が描かれています。
    学校を出た彼は、悩み、考え、出かけて行き、たくさんの人に会います。最近の日本で考えると、精神を病んだ人というのは家に引きこもりがちだと思いますが、ホールデンは、悪態をつきながら、そして有り金を使い果たしながら、思い付くままに行動していきます。悩んだ末の行動なはずなのに、結局は突発的に行動し、退廃的な結果に終始します。やることなすことうまくいかない彼の行動ですが、この当時の若者達に、正に心の代弁者として熱狂的な支持を受けたそうです。
    本書が出版されたのは1951年、私が初めて読んだのは1995年。当時の私にとっても既に古典的だった本書ですが、繊細な心の苦しみがあまりにも生々しく伝わってきたことを覚えています。今回久しぶりに読んでみると、多少客観的に読むことができ、ホールデンを「大丈夫だよ」と抱き締めてあげたい、母親目線での自分を感じました。
    所々に、村上春樹が影響を受けたのであろう文体(例えば、『…自分で西半球一の美男子だと思ってやがんだよ。そりゃなかなかの美男子ではあったーそいつは僕もみとめるさ。しかし、奴はだな、生徒の親たちが、学校の年間の写真を見て、「この子は誰?」 と、すぐそう言ったりなんかする、そういう種類の美男子なんだな、大体において。…』)が見え隠れして、村上少年がどっぷりとサリンジャーの世界に浸っていたことが想像できました。いつか、村上春樹翻訳のものも読んでみたいと思いました。

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