旅路の果て (白水Uブックス 62)

  • 白水社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560070628

感想・レビュー・書評

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  •  バース初体験。
     冒頭から数章はあまりにも思弁的。
     主人公「ある意味で、ぼく、ジェイコブ・ホーナー」の一人称で語られる物語なんだけど、そのジェイコブの心中や心情にしても、会話にしても、あまりにも思弁的すぎて、読む人によっては忍耐力を必要とするんじゃないかと思う。
     そこには肉体的な物はなく、経験則は単に論理の堆積であり、もちろん感情的なものや感覚的なものは欠落している。
     欠落、というよりも丁寧に排除されている感がある。
     だから読み始めて数章で「ああ、だめだこの作品、読めない」と思う方も多いかと思う。
     思弁的、とはいっても決してわかりづらいことが書いてある訳ではないのだが、やはりある程度の忍耐は必要かも知れない。
     登場人物の一人「レニー」が崩壊してから、物語はガラっとその表情を変える。
     僕自身もこの「レニー崩壊」から後は、一気に読み通してしまった。
     もちろん、思弁的な内容は随所に表れてくるが、現実がそんな論理を凌駕している。
     ストーリーのコアな部分だけを抜き出してしまえば、まぁ、ベタな話なんだけど、そんなベタな話を夢中になって読ませてしまう何かがある。
     逆説的な言いかたかもしれないが、それは「思弁的」な文章なのかも知れない。
     好感が持てる登場人物は一切現れない。
     どの人物も最低で厭らしく、同情出来ないし、感情移入なんて無理。
     仮にシンパシーを覚えるポイントがあったとしても、それは「近親憎悪」なんてゾっとする単語で言い表せてしまいそう。
     主人公のジェイコブは精神的疾患を抱えているにしても、どの人物も頭でっかちで、言葉で論理で現実をひねり倒そうとする。
     そして男たちは疲弊し、女は悲劇的な死を迎える。
     この女の死に行く様子は、そんじょそこらのホラー顔負け。
     読んでいて心底恐怖した。
     万人に喜ばれる作品でないことは確か。
     読み終わった後の後味の悪さも、救いの無さも「面白さ」という一言で括られるのならば、これほどに「面白い」作品もそうは無いだろう。
     他の方のレビューを読むと、この作品はバースの中でも「読みやすい」部類に入るそうだ。
     他のバース作品もぜひ読んでみたくなった。

  • 20170304読了。最初は表現がめんどくさい感じがして、のれなかったが、乗馬を習うあたりから駆けて進むように読めた。1953年メリーランド州における、ある行為の困難さは今の自分に理解できず。

  • パラノイア的にだいぶブッとんだ男が主人公。一人語りのような奇妙なリズムにうまく乗れると、テンポよく読める。
    「変な奴」はいったい誰なんだ?

  • 「パイロットフィッシュ」つながりで。結局、「パイロットフィッシュ」で、「旅路の果て」の一節とされた「それは、どんな長い長い旅にも必ず終わるときがくるということに似ている」は探し出せなかったけど。旧版の引用だったのかなあ。/ある時、心身とも麻痺して一定時間動けない症状になっているところを専門医に見つけられ、療養を開始した主人公。社会復帰の第一歩として大学の英文法講師の仕事を得るが...。親友ともいえる深い交わりを持った夫婦の妻を寝取ってしまい、それが露見し、主人公が奔走して中絶を試みるも失敗して死亡、保守的な土地柄ゆえ、友人は職も失ってしまう...原因を作った主人公は罰されもせず、職も失わなかったが、最後は、耐え切れずに、街を飛び出すことに。理屈ばかりこねて冷笑的で、「ライ麦畑でつかまえて」の主人公がもっと年をとったらこうなるのでは、と思ったり。後味の悪さがきわだった。/そういう意味でもバカげているんだ、自分のやってしまったことを弁解して、ほんとはそんなことしたくなかったんです、なんていうのは。やりたいと欲したこと、それが最終的には、やったことなんだ。p.78/もし選択物が左右に並んでいたら左のを取ること。時間的に並んでいたら早いほうを選ぶこと。これがだめなら、アルファベット順で早いほうの文字で始まる名前の選択物を選ぶ。これが<左側原則>、<先行原則>、<アルファベット原則>だp.132/女性に対する礼儀なんてものは女を真剣に考える気のない男が考え出したフィクションだ。p.149/「おのれを偽ること最も少なきものこそ、われわれはすべてたわむれているにすぎないことを認めるのかもしれない」p.235/「歩いて来た道はあまりに遠く、学んだことはあまりに多かったね、ぼくたち」「この時代まで生き残ってきたぼくたちのうち、だれがこのうえ生きていられるだろうか?」p.305

  • 食べ応え満点です。

  • インテリ臭がぷんぷんしたが、キャラクタが体現していたので素直に読めた。クズ人間を人間臭いと擁護せずに、ちゃんと批評の対象に置いているところが好ましい。深刻な状況で、メロドラマを演じることを否定するシーンが印象的だった。

  • 奥さんが死ぬシーンがけっこうリアルで重かった。

  • 話の筋はシンプルだけどなにやら意図がいろいろつかめない部分が多いが物悲しく面白い。前衛の割に読みやすいが意味が……。だが解説でああと思った。批評に対する批判小説でもあったのかと。思い返すとずいぶんと知的なたくらみでできているのだなと感心した。50年代にすでにこういう小説がでてたのかと驚く。

  • 観念的な会話の果てに見事に決まるちゃぶ台返し。

    いくら言葉を積み重ねていっても、いきなり突きつけられる現実に対して言葉ってものは(ただそれだけでは)何の力ももち得ないんだよということか。

  • 自分の苦手を再確認。
    翻訳物、恋愛物(特に夫婦がらみ)、語りすぎる登場人物・・・こういったものが苦手です。
    治療中のジェイコブだけでなく、ジョーもレニーもドクターも、みんな病的。
    みんな嫌い。とりわけジョーが嫌い。
    イライラむかむかの連続。

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