レクイエム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

  • 白水社
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本棚登録 : 427
感想 : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071304

作品紹介・あらすじ

七月は灼熱の昼下がり、幻覚にも似た静寂な光のなか、ひとりの男がリスボンの街をさまよい歩く。この日彼は死んでしまった友人、恋人、そして若き日の父親と出会い、過ぎ去った日々にまいもどる。タブッキ文学の原点とも言うべきリスボンを舞台にくりひろげられる生者と死者との対話、交錯する現実と幻の世界。

感想・レビュー・書評

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  • もういない人たちに会うために、半日かけてリスボンをめぐり歩くお話。そして現在のところマイベストタブッキ。文体が柔らかくて(鈴木さんの訳文が好みなのかも)、ほとんどの登場人物がちょうどよく遠い。彼らの言葉は耳で聞くのではなくて直接頭に響いてくるような感じがして、ああこれは夢なんだなとわかる。

    「わたし」はこの夢の中で、自分の中で折り合いを付け「済み」の箱に入れてしまわなくてはならないことを片付けていっているように見えた。彼のお父さんが言うように、「わたし」が求めているから彼らは現れ、言葉を残して去っていくのだ。タブッキがこの本を書いたのは50歳の頃。あと10年したら、自分にも箱に入れるようななにかができているのだろうか。

    『島とクジラと女をめぐる断片』はお酒、『インド夜想曲』はミネラルウォーターのイメージだったけれど、本書は間違いなくポルトガル料理。実際おいしそうなのがたくさん出てくるためではあるのだけれど、読んだ後、おなかが温かくなる感じがする。

  • イタリア人作家がポルトガル語で書いた小説をイタリア語に訳してそれを日本語に訳したもの。本に出てくる病気が帯状疱疹なのか麦角感染なのか混乱してしまったが、本の内容には特に影響はなかった様には思う。熱気に満ちたリスボンの街を彷徨い歩く話で、食べることや汗をかくことが生を、病や堕胎や自殺が死を直接的に突きつけ、幻覚とともに生と死の境が曖昧になっていっていた。詩情にあふれた無軌道な彷徨に見えて、計算された描写になっていて何度でも読み返したくなる。

  • 夢と現の狭間で「リスボン」という舞台を彷徨する

    <レクイエム=「安息を」を意味するラテン語。カトリックのミサやその聖歌を指すが、宗教的な意味合いを離れて、「葬送曲」「死を悼む」の意で用いられることもある。>

    あちこちで見かけて、いずれ読もうと思っていたタブッキ。手に取ってみました。
    原著はそもそもはポルトガル語で書かれているという(但し邦訳はイタリア語版を元にしているとのこと)。
    イタリア生まれのタブッキがなぜポルトガル語で書いたかは、本人による序文で述べられている。
    あらすじを記せば、1人の男が、灼熱のリスボンで、ある男と待ち合わせをしたけれどもなかなか会えず、その間に何人かの人々と出会っては別れていくといったところだろう。行き違う人々の中には生きているものも死んでいるものもいるが、タイトルが想起するように、死者の方に重点が置かれている。

    血湧き肉躍るという冒険譚ではないにしろ、退屈なわけではまったくない。しかしいかんせん、この彷徨する感じが睡魔を誘う。一晩目は1章読んだところで沈没。読みたい。しかし眠い。
    あまりしないことだが、BGMを聴きながら読んでみることにした。選んだのはポルトガルギターとマンドリンのデュオのアルバム、その名も『リスボン』。本書の内容と比べると、曲調がやや明るめに感じるが、ふんふん、悪くないぞ。二晩目は5章まで到達。三晩で旅を終えた。

    リスボン。アレンテージョ。カスカイス。
    フェイジョアーダ。サラブーリョ。パイナップル・スモル。
    出てくる地名も料理の名もほとんど馴染みのないものだが、あれこれ想像しつつ巡る。
    人のよいタクシー運転手、不満たらたらだけれど憎めないバーテンダー、『聖アントニウスの誘惑』をひたすら模写する画家、そしてイザベル。
    最後に、会えずにいた男にも会えた。

    変則的な読み方だが、楽しかったということで、タブッキさんには許してもらおう。
    さて、初タブッキとしてこの本を選んだのは自分にとってよい選択だったのかな・・・? よくわからないが、またご縁があれば2冊目・3冊目との出会いもあるかもしれません。


    *BGMはマリオネット『リスボン』でした。

    *作中に出てくるペソア『不安の書』というのがちょっと読んでみたい。が、難しいかな・・・? 元気のない時には読めない、かな・・・?
    とりあえず、リストには入れよう。

    *本筋とはまったく関係がないのだが、ちらっと触れられる麻薬の売人の名前が「ザリガニ」。ポルトガル語では”bicho de lama”(泥の中の虫、といった感じか?)または”lagostim”(どちらかというと身(肉)を指すようだ)というようだが、麻薬とのつながりはあまり感じられない。何で「ザリガニ」?

    • usalexさん
      ポルトガルギター、いいですね!
      ポルトガルギター、いいですね!
      2012/07/03
    • ぽんきちさん
      usalexさん

      たまたま元々持っていたCDだったのですが、久しぶりに聞きました(^^)。
      異国の雰囲気があっていいですね。
      usalexさん

      たまたま元々持っていたCDだったのですが、久しぶりに聞きました(^^)。
      異国の雰囲気があっていいですね。
      2012/07/03
  • 夢か現実か? その境界線がほどけて消えていってしまう――とか言うと、タブッキの作品への感想としてはあまりにも陳腐すぎるのだけれど。タブッキを呼んでいると「小説という世界は現実か、非現実なのか?」という問いもまた、どこかに行ってしまう気がする。ただ、そこに感じる実在感みたいなものだけを追いかけている読書経験はいつもながらとても幸せなものだった。再読。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「あまりにも陳腐すぎる」
      いえいえ、一言で表すなら、そうなるでしょう。
      私は何故か、、、タブッキ を読むとブッツァーティが読みたくなります。...
      「あまりにも陳腐すぎる」
      いえいえ、一言で表すなら、そうなるでしょう。
      私は何故か、、、タブッキ を読むとブッツァーティが読みたくなります。理由は謎ですが、、、
      2013/01/04
  • 約束していた相手と会うためにさまよう主人公の、幻想の旅路。引きずられ、あるいは引き寄せて出会う人々との交流がよどみなく(むしろハイスピードで)描かれているが、個人的に興味のあった人物についてははぐらかされたというか、ぼかされた点が何とも憎い(苦笑)。

  • 「インド夜想曲」とちょっと似ている。「インド夜想曲」が友人 (それはおそらく彼自身) に会いに行くのに対し、「レクイエム」では「死者」(死んだ友人、死んだ妻、そしてペソア) に会いに行く。翻訳は須賀さんよりこちらのほうがうまい。おもしろい。
    中にいくつかポルトガル料理やカクテルのレシピが出てきて、ポルトガルへの旅愁をかきたてられる。

  • タブッキに導かれるまま、リスボンの街やその周辺を彷徨った気分。『インド夜想曲』を読んだ時もそうだったが、旅行に行けないけど行きたい気分の時はこれだな、と思った。何だろう、この癒される感じ。

  •  自分はずっとタブッキのあまりよい読者ではなかったので、最初の数冊読んだあと、なんとなく遠ざかってしまったのだけど、歳も重ねたことだし、感じ方も違ってきただろうし、もしかしたら今が読み時かもしれないと思って、手を出した。

     現実と幻想とが入り混じる話で、好みの話なんだけど、遠ざかった理由はなんとなくわかる。大きな動きのない話なのだ。いや、あるんだけど、最後まで読んだところで何かすっきりと見えてくる大きな展開があるわけではなく、いや、見えるものは当然あるのだけど、ただ、レクイエムなのだなぁと、タイトルの意味に頷くような、過ぎ去ったものが今に見えてくるものがあるけど、それで現実が大きく変化することはないのかなと、それでも、まったく見えないよりは、いますれ違うことはよかったのだろうと、そんな気にさせられる話だった。この淡々としたテンポが、たぶん、当時の自分には緩やかすぎるように感じ、でも、いま読むとすごくしっくりくる、そういうリズムをもっているのではないかと思った。

     そして、食べ物だ! 食べ物の記述が懇切丁寧で、いや、もう、全部おいしそうに感じるし、おいしそうに思えなくても食べたくなる。この辺は、当時よりも今のほうが幅広いものを食べた記憶があるから、余計にそそられるのではないかと思った。

     帯状疱疹という、印象深い比喩がある。なんとなく、タブッキ作品も、自分にとっての帯状疱疹なのではという、妙な印象をもった。長い時間をかけて経巡ってきた、ふんわりとした読後感の作品だった。

  • 独特の雰囲気を楽しめた。話を早く追いたいばかりに、料理の説明をザッと読んでしまったのが残念。しっかり読むとそこも面白いのかもしれない。
    優しさって、知らないひとにしてあげられる、最高の贈りものだよね、のセリフが好き。

  • 主人公である「私」が、亡くなった詩人(名前は明かされないがペソア)との待合せまでの半日あまり、灼熱のリスボンを彷徨いながら、記憶から蘇った死者たちと出会い、そして別れていく。そこには取り戻せない〈時〉が存在しており、後にはレクイエムが漂う。気づくと、その奇妙な空間にすっかり浸っていて、ひょんな所で羊男に出会ってしまったような感覚。タブッキはこの小説をポルトガル語で執筆しているが、それは、ペソアとの訣別、そして見事なオマージュともとれる。須賀敦子さん訳だったら、どんな世界だったろうかと想像してしまう。

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著者プロフィール

1943年イタリア生まれ。現代イタリアを代表する作家。主な作品に『インド夜想曲』『遠い水平線』『レクイエム』『逆さまゲーム』(以上、白水社)、『時は老いをいそぐ』(河出書房新社)など。2012年没。

「2018年 『島とクジラと女をめぐる断片』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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