豚の死なない日 (白水Uブックス 132 海外小説の誘惑)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071328

感想・レビュー・書評

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  • 「神様聞いてください。貧しいってことは地獄です」そう言った主人公の状況が悲しくて悲しくて。でもそんな貧しさの中で感じられる素晴らしさもしっかりと感じられる成長と生活の物語でした。
    題名を頭の片隅に置きながら読むことをおすすめします。

  • 貧しい農家に生まれた主人公が生きる喜びと試練。冒頭から父親がと殺業である主人公が豚を飼い始めるという大きなフラグが立っており、それでも表題「豚の死なない日」の意味も含めて興味深く読み進めた。表題の意味については切ないながらも納得する。
    質素で、寡黙で穏やかで、それでも幸せに生きる農家の暮らしに価値観について考えさせられる。

  • アメリカで暮らす農場一家。
    豚を殺すことで生計を立て、いつかこの土地が自分たちのものになることを夢見て日々の暮らしに精を出す。

    父と子の絆から、そして最後の大人にならなければならなかったロバートの叫びから思う。

    本当の豊かさとはなんなのだろう、と。

  • ヴァーモント州の貧しい農家の息子ボブは、隣人の牛のお産を手伝ったお礼に、子豚をもらった。ピンキーと名付け、毎日可愛がって育てるが、ある日ピンキーの不妊がわかる。
    家族が生きていくため、ピンキーを殺さなければいけない日がくる。
    また、父は不治の病に侵され、父の代わりに家を支えならなければいけなくなる。

    13歳なんて、まだほんの子供なのに、突然大人にならなければいけない日がくるのはとても残酷で、辛辣だったけれど、ボブはどちらの日もとても立派だった。
    「豚の死なない日」は、屠殺者である父が亡くなったことを意味しているのが、なんだか感慨深かった。

  • 豚の死なない日は豚の屠殺者である父親がいなくなったことを意味する。
    父親そしてその家族が生きるために豚は死んでいた。
    人が生きるということはいろんな生き物を殺していくということ。
    それがいい悪いんじゃなくて、それをしっかり意識していることが大事。

    主人公のまわりでは人間を含めた動物の生と死がいろんな形で自然にあふれていて、主人公も子どもながらにそれを喜び、戸惑いながら必死に受け止めている。
    子どもの産めない豚は家畜としてペットとしては生きられない。
    父親が死んだら、幼くても家を守るのは自分しかいない。
    貧しさは地獄だけど、死ぬときにどれだけの人が集まってくれるか、そこに人の豊かさを見出せる。
    貧しい家には厳然としたルールがあって、主人公も幼くてもその条理をわかっている。

    教育を受けていないけれども信仰に篤く、質素に堅実に生きる父親が言ったセリフが本当に印象的だった。
    「できるできないの問題ではないのだ。生きるためにはやらなければいけないことがある。」
    「死というのは汚いものだ。生まれるのも同じだがな。」
    そう、死も生も全然美しくなんかない。それが生き物。人間だって動物だって変わらない。

  • しびれましたー。これは。
    カッコイイんだ。
    タイトルもね、なるほどね、上手いねー!って。

    でも、豚、殺すんですよ、食べるんです。そこ泣けるんだけど、そういう物語じゃない。作者が伝えたい、語りたい部分はそこじゃないから、だから悲しいだけでなく、すごくこっちも覚悟して、そのシーン読めた。悲しい所はもっと違うところにある。

    それよりも私は、金原瑞人さんの翻訳が好きなのか、頭っからぐいぐい引き込まれて驚きましたー。重たくないけど、すごくゴツゴツとしてて、でも軽やかに感じるのは、文体?リズム?ボイスなの?
    豚の屠殺を生業とした、貧しいシェーカー教徒の家にそだつ12歳の少年の物語。
    学校に行く前も、帰ってからも牛の世話など、ずっとお父さんの手伝いをしなければばならない。貧しいことから逃れたいけれど、家族への愛、お父さんへの尊敬の気持ちが大きく、逆らえないし、まだ子どもだ。
    お父さんも本当に愛情に溢れ、人間的にも素晴らしい人。

    そして、自然の描写が美しく、少年の心情描写もすごくいい。

    ワイルドなところもあるけど、愛に充ちた素敵な物語だった。中学生に、すすめたいなぁ。

  • 慎ましい生活にも豊かさがある。
    誇り高き畜産農家の帝王学。

    仕事を教えるのではない。生き方を教える。
    随所に父親の気概があった。

    荒れた大地、動物への尊厳が少年の成長を後押しする。
    時代はモノではなく、経験が人間を豊かにした。

  • 訳者の金原瑞人さんがとても好き。
    昔のアメリカの、最も素晴らしい部分が見事に結実した作品。と言われている。
    名作。
    ロバート「柵は変?お隣と友達なのに、こんなふうに柵をたてたりして戦争でもしてるみたい。」
    お父さん「柵はいがみあうためのものじゃなくて、仲良くやっていくためのもの。」
    深い会話だと思った。
    ロバートと豚のピンキーは仲良しで友達で会話して遊んで、まるで兄妹みたい。
    ピンキーは、たくさん子供を産むことを期待されていたが、子供は全く出来なかった。
    いよいよ肉になる日。
    ロバートはお父さんを手伝って作業をした。
    よく頑張ったと思う。
    ピンキー解体中に、ついに悲しくて胸が潰れそうになって、泣きたいだけ泣くロバートの気持ちを、お父さんもわかってくれて良かった。
    これが大人になるということ。
    お父さんが死んだ時にはまだ13歳。
    でもこれから家族を支えるためにお父さんがしてきたように、自分の家の仕事をしていかなければならない。
    突然ではなかった。
    お父さんは結核になった時から、ロバートに、自分に代わっておまえがやるんだょと、教えてくれていたから。
    お葬式の日は、悲しかったけど、ロバートの成長を感じた。立派だった。

  • 昔の質素で良き家族の日常が続くのだろうと思っていたが、後半部分では涙していた
    今の日本を生きていれば目を背けてしまう人と生物の関わりを考えさせられる

  • よかったです。ラストはつらい描写もあるけれど、こうして私たちは生きている。

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