縛り首の丘 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

  • 白水社
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感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071359

作品紹介・あらすじ

罠とも知らず愛する女のもとへ馬を駆る若き騎士ドン・ルイ。途中、刑場の丘のかたわらを通りすぎるが、その時、縛り首の死体が彼に話しかける。「俺を連れていけ、何かの役に立つはずだ」。ユーモアと辛辣な皮肉を交えた魔術的リアリズムの世界。傑作『大官(マンダリン)を殺せ』を併せて収録。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作と「大官を殺せ」の二本立て。

    「縛り首の丘」は、中世スペインの騎士もの(?)の趣きで、ある若い騎士がうっかり近所の可愛い人妻に恋しちゃったところ、肝心のお相手は気づいてないのに、その嫉妬深い旦那のほうに感づかれて姦計にかけられ、偽の手紙で呼び出されるままのこのこ出かけてしまいます。しかし信心深い騎士は日頃から聖母様を信仰していたので、聖母様のはからいで騎士を助けるべく蘇らされたのが、なんと縛り首の丘に吊るされていた罪人の死体。見た目たぶんほぼ骸骨です(笑)。

    この骸骨くんが騎士を助けて大活躍(成功したら聖母様からご褒美が)嫉妬深い旦那の罠から騎士を救うという、単純な勧善懲悪かつ信仰万歳なストーリーではあるんだけど、蘇った骸骨がどことなくユーモラスで、騎士との間にうっかり友情めばえちゃってそうな雰囲気とか、不気味というより微笑ましい。

    確かアンデルセンの童話で、死人が旅に同行して主人公を助けてくれる死体の恩返しみたいな話(旅の道連れ)があったのを思い出しました。

    「大官を殺せ」は、解説によると作者の完全な創作ではなく、「大官を殺す」「大官のパラドックス」という寓話?のようなものは十九世紀ヨーローパでは広く知られていたものだそうです。

    つつましい公務員生活をしている冴えない主人公のもとに、あるとき悪魔(のようなもの)が現れて、「この鈴を鳴らすだけで、遠く中国にいる裕福な大官が死んで、その財産はお前のものになる、さあどうする」と言う。主人公は勿論鈴を鳴らして大官を殺してしまい、使い尽くせないほどの財産を手に入れる。放蕩三昧で遊びほうけるうち、大官の亡霊が現れるようになって、良心の呵責から逃れるために、主人公ははるか中国まで旅立って遺産の一部を大官の遺族に返そうとしたり、もとの貧乏生活に戻ろうとしたりするのだけれど、結局お金がありあまるほどあっても、本当の幸福は得られない・・・という教訓的なオチ。

    しかし個人的には、たとえ大金が転がり込んできても、そんな目もくらむような贅沢も放蕩三昧もしなくていいから、ほそぼそと隠しもって老後まで金銭的な心配をせずに快適に暮らせればそれでいい・・・という小市民的な発想しかできないので、あまりためになる教訓とは思えませんでした(笑)。ドラえもんに出てくる「どくさいスイッチ」という、気にらない人間を消せる道具と同じで、これまたのび太くんの使い方が悪いせいで最後は教訓的なオチになるんだけど、私だったらもっと上手くやるのに・・・とか密かに思っちゃう。

    まあでも確かにこの主人公はあまり上手く立ち回ってはいませんが、急に大金持ちになってモテモテで有頂天になったり、はたまた弱気になったり、感情の動きが単純で素直なので、なんとなく憎めません。

    作者のエッサ デ・ケイロースはポルトガルの作家だそうで、さすがにポルトガル文学を読むのは初めてだったのですが、そういえば同じ作者の「アマロ神父の罪」がガエル・ガルシア・ベルナル主演で映画化された(2002年・メキシコ)のは偶々見ていました。あちらはとくに幻想文学という感じでもなく、イケメンの若い神父さんがうっかり信者の女の子を妊娠させちゃったんだけどまったく反省しないという酷い話だった記憶が(苦笑)。「縛り首の丘」もかなり昔に映画化されていたようです。確かにこれはちょっと映像で見てみたいな。

  • これが小説か、と思うくらい日本の小説とはかけ離れたスタイルに驚く。
    内容についてはぜひ実際に読んで味わったほうが良い。
    ヨーロッパの宗教事情についての知識があれば、より興味深く読めると思う。

  • セゴビアなどを舞台とした作品です。

  • 2011/5/13購入

  • [ 内容 ]
    罠とも知らず愛する女のもとへ馬を駆る若き騎士ドン・ルイ。
    途中、刑場の丘のかたわらを通りすぎるが、その時、縛り首の死体が彼に話しかける。
    「俺を連れていけ、何かの役に立つはずだ」。
    ユーモアと辛辣な皮肉を交えた魔術的リアリズムの世界。
    傑作『大官(マンダリン)を殺せ』を併せて収録。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 二つの短編。ポルトガル近代文学の作品。
    作者エッサ・デ・ケイロースは、<近代化>の波に乗り遅れていたポルトガルの、十九世紀を代表する小説家の一人。はじめはフランスの、のちにイギリスの同時代作家、とくにリアリズムの影響を受けた長編で名をあげたあが、晩年の作品だという幻想的なこれらの短編は、いまも同社を強く引き付ける力にあふれていて、生と死をこえて、人と人を結んでいる目に見えない絆についても考えさせられる。

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