三つの小さな王国 (白水uブックス 137)

  • 白水社 (2001年7月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784560071373

感想・レビュー・書評

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  • ある種の才能が飛び抜けていても世渡り力/生命力に欠ける人たちの、眩い夢のような「こういう風にしか生きられません」ストーリー。

    「J・フランクリン・ペインの小さな王国」が思春期に読んだ少女漫画並みにキラキラしていてすてき。大昔に感じた、世界が美し過ぎて、胸が苦しいような気持ちが思い出される。

    「王妃、小人、土牢」は、王妃たち(やや類型的な)主要人物より、川のこちら側から城を眺める町の人の視線・物語に対する考え方が面白かった。

    「展覧会のカタログ」もギリギリの四角関係がどうなってしまうのか、息を殺すようにして読んだ。終わり方がちょっとざっくりし過ぎているような気がするけれど、これくらいやってしまったほうが、現実感がふわっと薄れるような効果があるといえばあったかも。

    • なつめさん
      何冊か読んだミルハウザーの短編の中では「J・フランクリン・ペインの小さな王国」が一番のおきにいりです。
      何冊か読んだミルハウザーの短編の中では「J・フランクリン・ペインの小さな王国」が一番のおきにいりです。
      2012/09/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「J・フランクリン・ペインの小さな王国」
      素晴しいですよね!
      モデルとなったウィンザー・マッケイが描いた「リトル・ニモ」が復刊(訳者が違うか...
      「J・フランクリン・ペインの小さな王国」
      素晴しいですよね!
      モデルとなったウィンザー・マッケイが描いた「リトル・ニモ」が復刊(訳者が違うから、新訳と言うべきか?)されるのですが、高過ぎて手が出ません(「初期アメリカ新聞コミック傑作選1903-1944」4巻+別冊。限定1000セット!創元社)。。。
      2012/12/13
    • なつめさん
      限定1000セットにしておかないと採算が取れないということなんでしょうかね。廉価版もあったらいいのに
      限定1000セットにしておかないと採算が取れないということなんでしょうかね。廉価版もあったらいいのに
      2012/12/13
  • 「J・フランクリン・ペインの小さな王国」「王妃、小人、土牢」「展覧会のカタログ」の3つの中編が収録されています。

    「J・フランクリン~」は、三作の中では唯一、正攻法(?)ともいうべきオーソドックスな手法の小説ですが、漫画家でありアニメ製作者でもある主人公の作品世界があまりにも緻密でリアルで、劇中劇的な、本来の筋書き以外にいくつも短編を味わったような濃密さがありました。こんなアニメーションがあったら、ほんとに見てみたい!と、同時に人間たちの関係のほうもなんだかリアルで、女性側としては「これもう絶対奥さん浮気してるよ~」とかなり早い段階で主人公にアドバイスしてあげたくなります(笑)。

    「王妃~」は中世ヨーロッパのファンタジーっぽい舞台で繰り広げられるのだけれど、段落ごとに小見出し(?)がついていて、多角的な視点で伝説が語られ、最終的にどれが本当に起こったことかは読者(というよりは伝説を伝えていく町人たち?)にゆだねられるという趣向。小人というとオスカーワイルドの短編(王女の誕生日)を思い出しますが、こちらの小人はもっとしたたか。童話的世界観でありながら、大人の心理のどろどろっぷりが恐ろしい。

    「展覧会~」は架空の画家エドマンド・ムーラッシュの、タイトル通り「展覧会のカタログ」のテイで1作ごと作品の解説風に人物や背景が語られてゆき、それを年代順に追ってゆくことで画家の人生が浮き彫りになる、これも凝った趣向の作品。これも「J・フランクリン~」同様、架空の画家の作風なんかがすごく緻密に表現されていて、実際にその絵を見たくてたまらなくなりました。

  • 昔ながらの作風にこだわったアニメーション作家の魂の物語。
    猜疑心によって、少しずつ平穏で豊かな世界が瓦解していく王国の人々。
    一人の絵描きの年代別作品をパンフレット風に読み解きながら、破滅へと向かっていく様を追憶する。

    それぞれの物語が、非常に緻密かつ詳細に描かれていて気づいたら物語にのめりこんでしまう。
    アニメも、人間模様も、デッサン技術も、まるで「専門家」かと思わせるほど豊富な知識を土台にして描写されている。
    テクニカルな技術だけでも一見の価値あるし、幻影的な物語でも読者も魅了する。

  • 濃密な世界に目眩を覚える1冊です。

  •  三つの短めの中編からなる作品集。
     この人の作品は、たとえ読み始めは「うーん、どうかなぁ、いまひとつかなぁ」と思うことがあっても、読み進めるうちにどんどんとその世界に没入し、読み終わった頃には頭のてっぺんまでドップリと浸かってしまう。
     今回の三つの作品もそんなドップリと浸かることが出来る僕にとって本当に極上の内容だった。
     一人の漫画家の半生を丹念に描いた「J・フランクリン・ペインの小さな王国」、短めの章を重ねながら、王、王妃、王の友人、そして小人と四つどもえの心理戦を行っているような「王妃、小人、土牢」、一人の芸術家の絵画解説集を模しながら、二組の兄妹の悲劇の顛末を描いた「展覧会のカタログ-エドマンド・ムーラッシュ(1810-46)の芸術」。
     いつものようにどの作品にも過剰なまでの細かい描写が多く、読む人にとっては少しくどい印象を与えるかも知れないが、これはこれでやはりミルハウザーの魅力の一つだろう。
     そして、読む人の心をそっと、それでも大胆に切り開いて、中身をさらけ出してしまうような心理描写の凄さ。
    「J・フランクリン・ペインの小さな王国」のラストで描かれた胸をすくような感動。
     そのどれをとっても、僕にとってミルハウザーは最高の作家の一人である証となっている。

  • 「展覧会のカタログ」のストーリー展開が素晴らしかった。

  • ノンフィクションや研究書と錯覚してしまいそうなほど
    緻密な描写。
    生々しく迫り脳内で再生される映像の数々。
    でも現実からはみ出していることは明らかだし
    柴田元幸の
    「これほど「さし絵」のありえない作品」という解説も尤も。
    ミルハウザーのこの哀しく美しい気持ち悪さが好きだ。

  • スティーブン・ミルハウザーの中編集、自己世界による現実の喪失(特に恋愛の喪失)という極めて似たテーマが、普通の三人称小説、小節ごとに区切られた民間伝承の解説、展覧会のカタログという、それぞれまったく異なる形態で提示される一冊。

    ミルハウザーらしい雰囲気がよく出ているという意味では、『J・フランクリン・ペインの小さな王国』が面白いが、絵画の果てしない可能性とその境界を描いた奇想作『展覧会のカタログ - エドマンド・ムーラッシュ(一八一〇 - 四六)の藝術』が、その構成も合わせて素晴しかった。たとえば書評集だったり、観光ガイドブックだっり、物語以外の形態で小説を提示するというのは現代では割と普通だが、それでも絵画の図録(ただし、もちろん絵はない)というのは初めて読んだ。

    ミルハウザーにしては、やや落ちるかという感じで星 3つ。

  • 柴田さんの翻訳もの。中編もの3作品で成っています。まさにミルハウザーの小説といった最初の1編、
    ・J・フランクリン・ペインの小さな国
    もいいですが、あとの2編、
    ・王妃、小人・土牢
    ・展覧会のカタログーエドマンド・ムーラッシュ~
    が個人的には脱帽。

  • 市井の漫画家について描いた正統な物語、中世の物語について物語るメタ構造的な物語、実在しない画家の架空の展覧会の解説文という実験的な手法による物語という3作を収めた中編集。いずれの作品でも揺れる人間関係を緻密に描いているが、やはり注目すべきなのはその芸術論についてだろう。本作に出てくる漫画・物語・絵画という3つの芸術に共通するのは丁寧な人間関係の描写とは対極の「輪郭の曖昧さ」であり、それは逆説的に小説の形式の可能性を浮かび挙がらせようとしている。3作目はやや難解さが目立つものの、それ以外の2作は楽しめた。

  • マンガ家、王妃、画家のエピソードから成る中編集。
    訳が読みやすくて良い。

  • 11/11 読了。
    後ろの話から順に読んだ。「展覧会のカタログ」は形式も斬新だし、その上ポーの短編を読むようなゾクッとする恐ろしさがあった。「王妃、小人、土牢」は「バーナム博物館」収録の「シンドバッド第八の航海」を彷彿とさせる、物語とその物語を語る場をクロスさせて描くメタ視点の入った作品。最後に読んだ(本来は一番はじめに配列されている)「J・フランクリン・ペイン」は「イン・ザ・ペニーアーケード」収録の「アウグスト・エッシェンブルク」とほぼ同じ、芸術を突き詰めるあまり挫折する芸術家を描いている。前者が後者と異なるのは、妻と娘という主人公に寄り添う女性を登場させたことで、物語の悲壮感がより一層深まり、幻想的なラストシーンで「本当のしあわせとはなにか?」と暗に問いかける様な効果が高まっている。

  • 連作短編ではないけれど、収録作品すべてが呼応し合って人工物礼賛の歌を歌う。胸が苦しくなるほど好き。(tafots)

  • 一冊中に、まったく異なる手法で書かれた三本が入っている。
    小説ってこんな書き方も出来るのか!と驚いてしまった。

    J・フランクリン・ペインの小さな王国
    そんなに自分の世界に入り込んで、家庭を顧みないと……と思って不安ながらに読んでいると的中してしまう……
    アニメーションのフィルムを一枚一枚、それこそ一万二千枚という単位のものをコツコツと、すべて自分の手で描き続けて、世界を生み出す。
    この集中が生む、いくらか不気味で美しい世界。
    ミルハウザーの情景描写、特に屋根の上を散歩するあたりや、なつかしいものの描写は、心が和む美しさ。


    王妃、小人、土牢
    物語と、想像と、事実が螺旋のように練り上げられて、塔と四阿と地下牢で繰り広げられる三層とも対比しているのかな。
    地上と城のある高台という水平面的な、そこに住まう人物との対比。

    あまりに恵まれた愛情を得ていたために、感情の傷を得たかった王
    王を愛する故に不貞のない事を証し立てる屈辱を耐える王妃
    自らの仕打ちの結果に安堵し妄想して、疑心暗鬼にかられて、無体を強い続ける王

    辺境伯の叶うかわからぬ希望の闇深い土牢
    醜い故に知恵を持ち、自らを抑える小人

    感情の空恐ろしい揺らぎが見事だった


    展覧会のカタログ
    こんなカタログあったら、すさまじい……
    作品は作家の人生を描いたものとも言えるのだろうけれど、絵の説明と、絵描きの人生を、こうも重ねて語られると……

    すべて作品の解説という形式を取りながら、絵描きの人生が綴られてゆくのですよ。

  • たぐいまれなるクリエイターの物語3つ。
    読み終わってしばらくドクドクいう自分の心臓が聞こえ続ける。

    ある芸術に、その人の人生が重くのしかかる。
    その芸術が運命を変えてしまうのではなく、
    芸術そのものが運命であるように、
    そういうふうに生きる人々の姿に、
    我々は無条件に感動するのじゃないか?

    叫びだしたいくらいに素晴らしいミルハウザーの傑作。

  • 至極当たり前のことなんだけど、ミルハウザーは「ない」ものを「ある」ように描く。アニメーション作家が、その溢れるイマジネーションをセル画に焼き付けるがごとく、聳え立つ城の歴史伝承物語が、人々の心に深く根付き、また人々によってその姿を変えるがごとく、画家が苦悩と共に感情を揺さぶる絵画を絞り出そうとするがごとく。この世に実際には存在しない映像や物語や風景や絵画を、こんなにも鮮やかに緻密に描き出す作家を私は他に知らない。それでいてその視線と筆致は冷淡で救済の色は一切ない。それぞれの話を語るに最上の技巧によって描き出された三つの王国。これこそが創造だ。

  • 最後の話はモームの「月と6ペンス」を思い出しました。好みとしては最初の漫画家の話が一番好きかなあ。ミルハウザーらしい夢に入ってくようなところ、夜空を歩き回るところが好き。幻想小説はやっぱり大好きです。夢を見るのは芸術の特権だ。

  • ミルハウザーの精緻な描写好きです。

  • 読み途中。うーむ、エドウィン信者にとって、ミルハウザーのほかの作品はどうすべきものか、難しい。特に柴田ルートでここに来た人のうち、ストーリー性の強い小説が好きな人は、このへんでミルハウザーが止まってしまったら・・・、俺はむしろ悲しい。ミルハウザーの小説はたぶん三種類あって、幻想、職人、女の人。同じようなものに見えてきて嫌だなあ。まだエドウィン以外には二冊しか読んでないけど、なんかもうJ・フランクリン・ペインとアウグスト・エッシェンブルグはそれぞれにいいんだけど、焼き直しを読まされているような気がして嫌だ。細部の描写とそれが浮かび上がらせる世界が毎回違うから毎回楽しいんだ、というような意見に与しない。せめて俺はエドウィン的な面白いつかみを考えるのサービス精神だけは以後の作品にも持っていて欲しかったけどなーなどと、マーティン・ドレスラーを挫折した俺は思う。でも、これはこれで面白いのは事実だが。

  • 探求の果てに常軌を逸した世界をつくり出すアニメーション作家。絵のカタログの形式を取ったある画家の人生など、いかにもミルハウザー的な世界。

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著者プロフィール

1954年生まれ。米文学者・翻訳家。東京大学名誉教授。文芸誌「MONKEY」編集長。『生半可な學者』で講談社エッセイ賞、『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞、トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞受賞。訳業により早稲田大学坪内逍遙大賞受賞。現代アメリカ文学を中心に訳書多数。

「2025年 『スティーヴン・クレイン全詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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