真珠の耳飾りの少女 (白水Uブックス)

制作 : Tracy Chevalier  木下 哲夫 
  • 白水社
3.88
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本棚登録 : 264
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071465

作品紹介・あらすじ

巨匠フェルメールに淡い思いを寄せ、絵画のモデルになった少女フリートの運命は?神秘に包まれた名画の光と影に迫り、世界で200万部を超えた、ベストセラー恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 友人から「面白いよ」と勧められ譲り受けた本書。字の小ささもあって敷居が高いなぁ~としばらく寝かせていたのだが…いざ読み始めたら、尻込みしていたのが嘘のようにのめりこんで一気読み!!主人公の一人称語りってのもなかなか読みやすかったし、淡々と物語を運ぶ翻訳も滑らかでよかった。
    17世紀のオランダ。タイル職人の父が失明したので、家計を支えるために16歳で奉公に出ることとなった少女フリート。その奉公先は画家・フェルメール宅。曲者揃いの女性達が住まう家で、女中として必死に働くフリート。クソ生意気な娘にビンタ張ったりと、時には気の強さを垣間見せつつ、空気を読みながら賢く立ち回るフリートには感心。それでも、ビンタを根に持ったか、その後も執拗な嫌がらせをする娘・コルネーリア(とにかく最初から最後まで強烈なキャラ)に大事な父のタイルを割られ、ひっそり涙するシーンは切なかった。
    ふとしたきっかけからフリートがフェルメールの仕事を手伝うこととなり、アトリエへの出入りを禁じられている若奥様のカタリーナに気づかれぬようハラハラしながらも、絵画の面白さに目覚めていく過程がよかった。徐々にフェルメールに惹かれていくフリート。二人の距離はゆっくり縮まっていき、遂にはあの名作「真珠の耳飾りの少女」のモデルとなるのだが…。
    大奥様、若奥様、フェルメールのパトロン、父母、恋人の肉屋…様々な人物の思惑が複雑に絡み、それに翻弄されるフリートの立場が時に辛い。苦しみつつも、己を見失わないフリートの芯の強さに惹かれた。絵の眼差しの光の強さが彼女の美しさだ…読みながら何度も表紙絵を見直したが、読了前と読了後では絵に対する印象が明らかに違ってくる。
    抑えた愛情表現がむしろ官能的に感じられる、ラブストーリーとしても秀逸な作品だと思うけど、私としては「女中小説」として面白く読んだ。若奥様や先輩女中の嫉妬をすり抜けながら耐えながら、時には打算で動きながらのフリートの行動。プロテスタントとカトリックの信仰の違いや、髪は頭巾で守り見せない、といった当時のオランダの時代背景も重なって、とても興味深く読めた。
    改めて、フェルメールの絵画をゆっくりじっくり鑑賞したいと思っている。

  • 外国の本はあまり読まないんだけどこれは何だか惹かれた!
    雲は何色か。
    青じゃなくて、黄色も黄緑も混ざっている
    私もこう見える目と感覚を持ちたいです。

  • 17世紀の画家フェルメールの有名な作品を巡って、そのモデルとなった少女がフェルメールの信頼した召使いであったという設定で描かれた物語。
    少女フリートは父が失業したため奉公に出ることになります。
    既に名のある画家とはいえ、寡作でやや気むずかしいフェルメールの家の内情は決して楽ではなく、数少ない召使いの仕事も重労働。
    親元を離れて心細い思いをしながら、フリートはけなげに働き、すくすくと成長していきます。アトリエの片づけをしたことから次第に信頼を得て、遠い存在だった旦那様の助手を務めるまでになるのでした。
    やや派手なフェルメールの妻と締まり屋のその母、大勢の子供達と縦に長い運河沿いの家に同居しているので、フリートを見つめる女達の視線は息詰まるよう。

    フェルメールは実際に妻や召使いをモデルにしたらしい絵を多く残していますが、この絵はちょっと異色で、飾り気のない割に色っぽい。こちらを見る視線の素直さに画家との関係を想像したくなるものがありますね。
    しっとりした描写で綴られる実直な暮らしの人間くさい有様と、芸術へかけるひたむきな激しさがしみじみと胸に広がります。
    小品なのに忘れられない、この絵そのものような小説でした。

  •  すごく女性性について考えさせられる作品だった。
     
     フェルメールの作品の中で特に有名な「真珠の耳飾りの少女」に描かれている少女のお話。絵画を元に、その絵が作られた背景を書く小説というのは珍しい。もちろんフィクション。
     
     主人公のフリートは父が失明して働けなくなったため、フェルメールの家に奉公にいくことになる、というのが簡単なあらすじ。
     
     フリートはとても「目がいい」。作中で何度も目が大きいとも言われる。色に対する感覚も優れいている。そのせいかはわからないが、フェルメールに気に入られるようになる。そして、新人女中が旦那に気に入られると、奥様や先輩女中から反感を買うのは当然の流れ。
     そして、仕事で買い物へ行く肉屋の息子もフリートに心を寄せている。両親からは身分が釣りあって、なおかつ肉という贅沢品を手に入れることができる息子との結婚するようにしむけられる。
     フリートは17歳で、ちょうど自分の女性性を意識し始める年頃。道行くおじさんに好奇の目で見られたり、門番の兵士から情報を聞き出そうとすると体を要求される。
     さらに、フェルメールのお得意様からも目をつけられてしまう。そのお得意様は隙あらばフリートにちょっかいをだそうとする。そして、フェルメールにフリートの絵を描くように要求する。お得意様からの頼みを断ることも出来ず、フェルメールはフリートの絵を書き始める。
     フェルメールにモデルになれと言われれば、女中のフリートはモデルになるしかない。奥様を一度も絵に描いたことがないフェルメールが、フリートを描くとどんなことになるか分かっているのに。
     さらに、肉屋の息子との関係も順調にすすんでいるのに、その絵のことが世間に知れたら大変なことになる。色々な人間の仲でフリートは板挟みになっていく。

     フリートは父のせいで奉公にだされ、フェルメールに気に入られたため他の人からの風当たりは強くなり、家のために肉屋の息子とくっつくようにしむけられる。女だから、自分で物事を決めることも文句をいう事もできずに流される。そして誰もフリートのことを考えてはくれやしない。
     また、フェルメールはフリートを気に入っていて肉屋の息子やお得意様に嫉妬をするが、だからといってフリートの味方にはなってくれない。
     そんな周囲に耐えながらひっそりとフェルメールを思い続けるフリートの姿がいじらしい。
     フリートは髪を見せることが自分の女性性を解放することだと考えている。まわりから不埒な娘、と疑われながらも絶対にフェルメールと一線を越えようともしない。しかし、フェルメールに髪を見られてしまったあとは、肉屋の息子を一線を越える。彼女の中で守るべきものが失われたのだ。

  • タイル職人であった父親が仕事中の事故のため失明し、働き手を失った一家を支えるため、フェルメール家に住み込みの女中として雇われた16歳のフリート。
    無学だが聡明で美しいフリートは、唯一彼女だけに任されたアトリエの掃除を繰り返す内、フェルメールによって色彩や構図への鋭敏な感覚を見出され、絵の具を調合する助手、そして、モデルとして彼の前に立つことになる。

    淡い想いを寄せる主人のために、耳朶にピアスの穴をあけ血を流す少女。しかしフェルメールの筆によって象られる時、その身は静かに滅びてゆく──。

  • フェルメールの絵の様に緻密で透明感のある文章で綴られる日常。この緊迫感はどこから来るのだろう。翻訳された方もかなりエネルギーを使われたんだろうと思います。

  • 原本に挑戦中だが専門用語が多く、つい日本語版で読了してしまった。
    主人公の少女がポーズを取らされ、どんどんあの「真珠の耳飾りの少女」になっていくところ、耳飾りをつけるところなど読んでいてどきどきする。いかにも前夜譚!といった感じで良い。
    冒頭、たったの数ページの間に、主人公が(名前覚えられない)切り分けた野菜の並べ方と、その凄さに気づくフェルメールという導入、上手い少年漫画の切り口みたいで面白い。刃牙のおいおい炭酸抜きコーラみたいな(全然そんな話じゃないけど)。

    もっと恋愛要素多めになるかと思ったがくどくなくて良い。この主人公、決して本人は自覚的でない上に控えめなのだがモテる。まあモテる。反感を持たれがちな設定だが賢さゆえか鼻につかない。

    構成もよい。ラストの耳飾りを売るシーン、もう少し読み込んでまた感想を書きたい。

  • あの国のあの時代の少女、だけどオトメ心は普遍的なものですね。
    物語のバックを成しているのはもちろん、フェルメールの絵画。全編に渡り、絵のような静謐なイメージが浮かんできたし、映画のような滞りなく流れるストーリーが展開されていました。

  • 少女の恋心を描く。
    感情移入させられて、他者の優しさに期待し、主人公の少女と同様の裏切りに似た感覚を読者は受ける。
    なぜか谷崎潤一郎の春琴抄に似たものを感じた。
    他人にオススメできる良書だが、気持ちよく読み終われるものではない。

  • フェルメール「真珠の耳飾りの少女」から創作した小説。絵のモデルを女中に設定して一人称で語らせる。主人公を引き立たせるためにしようがないのだろうけど、フェルメールのパトロンや奥さんがかなりダメな感じに描かれている。『デルフトの眺望』を読んだ直後だったからか、人物設定が表面的に感じられて楽しめなかった。

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