灯台守の話 (白水Uブックス175)

制作 : 岸本 佐知子 
  • 白水社
4.07
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本棚登録 : 248
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071755

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳物が好きだ。
    脳からそのまま出力されたのではない言葉は、
    事象に対して多分に真摯だ。

    出だしの文にやられた。
    「母さんはわたしをシルバーと名づけた。わたしの体は銀と海賊とでできている」
    なんて素敵な表現なんだろう。
    こんな素敵な文章が随所にある。
    それを眺めるだけでもとっても幸せだった。

    最初、少し勘違いをしていた。
    ピューとシルバーを起点として、流転していく物語かと思っていた。
    なんと言ったらいいか、わからない。
    でもいつの間にか愛について私は読んでいた。
    私だって救いようのないロマンチストだし、愛こそがもっとも価値のあるものだと思っている。(その解釈が物語りや他の人と同一である確証はないけれど)
    恋は近年の発明だ。
    子どももそう遠くはない昔に見出された。
    それに伴って母性愛も。
    さらに新しく父性愛も。
    それらに較べたら愛の歴史ははるかに長い。
    だが、自然のものではない。
    ダーウィンの進化論のように、起源をもとめて物語りは彷徨う。
    見つけて、見失って、結局それが本質なのかもしれない。

    ひとつだけかわらないのは、物語であり言葉だった。
    灯台守、彼らが護る灯火そのもの。
    だから、灯台守の話、なのだ。
    岸本さんの翻訳が素晴しいと思った。

  • 荒い波のうねりを背景音に、開いた傷口のようなヒリヒリする孤独が描かれている。図書館のくだりでは思わず貰い泣きしそうになった。まさかこのシーンで泣かされるとは、とびっくりした。

    灯台守が女の子に聞かせる物語は、自らの手で自分も家族も損なってしまったろくでもない男の人生だ。でも女の子はそこから物語の効用をつかみ取り、なんとか自分の脚で立てるようになる。駄目男の人生は失われてしまったのではなくて、その上に灯台守の、または女の子の人生が折り重なっていく。

    駄目人間でも一人ぼっちでもだいじょうぶ、心を開いておこう、なにか温かくて眩しいものが降りてくるかもしれない。そういう気持ちになった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ヒリヒリする孤独が描かれている」
      ウィンターソンは、重いけれど何となく清々しく感じてします。
      「ヒリヒリする孤独が描かれている」
      ウィンターソンは、重いけれど何となく清々しく感じてします。
      2012/09/14
    • なつめさん
      この本であんまり「がーん」となったので、ほかの本にまだ手が出せていないのです
      この本であんまり「がーん」となったので、ほかの本にまだ手が出せていないのです
      2012/09/14
  • “お話して、ピュー。”
    盲目の灯台守の男に物語をねだっていた孤児の少女が、いつしか自らの物語を語り始める。
    “お話して、シルバー。”
    これは自らの人生を物語ることで、自らを見つけ出す物語。

    盲目の灯台守の男が物語るのは、愛を求めて破滅的な二重生活を送った牧師の物語。光と闇の間に揺れる男の話を経て、少女シルバーが愛を見つけ出す物語。

    とても好きなお話だった。
    どこがいい、と言われると言いにくいけれど、言葉の感覚や端々に出てくる何気ない一文が胸に刺さった。
    私が自分の人生を物語るとしたら、何が灯台のように残り、何が波間に消えていくのだろう。そんなことを考えたりした。

  • 何年かに一冊出合う感覚の本。自分で何かしら書くようになって気がついたが、この本のような鋭さと孤独感と異郷の感じのある本はめったにない。目立たないタイトルだし、地味な話でもあるが、知性的で個人的で、こんな風に語れたらいいのにと思う書。

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