ナイフ投げ師 (白水Uブックス179)

制作 : 柴田 元幸 
  • 白水社
4.10
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本棚登録 : 114
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071793

作品紹介・あらすじ

自動人形、遊園地、気球飛行、百貨店…ようこそ“ミルハウザーの世界”へ。飛翔する想像力と精緻な文章で紡ぎだす、魔法のような12の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • やたらしつこい文章だなぁと思いながら読みましたが、面白かった。短編のほとんどが、何かを極めるあまりとうとう一歩向こう側へ突き抜けてしまった人や組織を主題としているので、それに負けないくらいのしつこさが必要だったのだろうと思った。そういった内容の表題作や「新自動人形劇場」一方で思春期の少年少女の不穏な内面が窺える「夜の姉妹団」「月の光」が特に奇妙な感じで、よかった。長編も読んでみたい。

  •  短編集。
     人間の心の奥底に潜んでいる闇の部分を引っ剥がされたり(「ナイフ投げ師」「カスパー・ハウザーは語る」等)、人間の際限の無い欲望、そして限界を超えた欲望の果てに待っているものを描いたり(「協会の夢」「パラダイス・パーク」等)、幼い日々にのみ感じることのできた何ともいえない高揚感を描いたり(「空飛ぶ絨毯」「月の光」等)、どれもこれも真珠の短編といっていいと思う。
     個人的には、自己中心的な人間の心理の変化(いかに自分を楽観的に納得させるか、とか、いかに他人の愚かさを馬鹿にできるか、とか)を絶妙なタッチで描いてみせた(そして、そのみじめななれの果てを描いて見せた)「出口」が出色の作品だった。

  • 先鋭化し崩壊/腐乱する芸術・夜の散歩・幼い頃の全力の遊び、とおなじみのモチーフが繰り返し登場する短編集。ワンパターンという批判もあるだろうけれどこれはもう好きな人は好きなんだから仕方ない世界。とにかく鮮やかで眩しい世界が過剰とも感じられる緊張をもって語られる、そのテキストの並びにときめく。「私たちの町の地下室の下」のグランド・フィナーレ感といったら!

  • ミルハウザーの第三短篇集らしい。収録作12篇つづめれば同じような話、後半はリライトの繰り返しかと思った。硬質な回りくどい文章は訳文ゆえなのか原文がそうなのか私はわからない。メランコリックな叙情の際立ちに効果的なのかもしれない。でも私はもっと柔らかい月の光を身に浴びたいと思う。そのほうがゾッとする、闇のカーニヴァルでは。以前著者の別作品を読んだ時も同様のことを感じた。好みの問題か。

  • Uブックスになるので、購入予定
    お薦めは「新自動人形劇場」!それだけじゃないけど、とりあえず・・・

  • 以前に読んだこの作家の長編『マーティン・ドレスラーの夢』と同様、この短編集に出てくるのは、芸を極め、更なる高みを目指し、最後には自壊とも言える状況に陥る人間たち。一時的に世間にもてはやされるのだけれど、やがて大衆を置き去りにしてさらに進んでいってしまう様は、人間の尽きることのない欲望の恐さを感じるには十分過ぎる。
    読み始めると遠くの方から危険を知らせる鐘が鳴り始め、ストーリーが進むにつれてその音が大きく響き出し、もう逃げ出したいと思い始めたところで物語が終わる。こんな話を次から次へと読んでいると、訳者が指摘する通り「健康を取り戻すことは不可能に近い」のかもしれない。

  • 書店員の友人からのプレゼント。
    新自動人形劇場、協会の夢、パラダイス・パークが好きだった。特に新自動劇場。(つまり、クリエイターが芸を極めすぎて崩壊パターンの話)ちょうどLutsenko Dollのメイキングなど見ていたのでシンクロしてしまった。
    映像が見てみたくなる素敵さ。

  • 2015.02.12/再読。

  • 昨年、初めて読んで以来お気に入りのミルハウザー三冊目。これは短編集で、原著は 1998年出版(邦訳は 2008年)。

    収められている作品のうち、デパートを扱った『協会の夢』や遊園地を扱った『パラダイス・パーク』は、ホテルを扱った 1996年の長編『マーチン・ドレスラーの夢』の変奏曲で、特に『パラダイス・パーク』は主人公が葉巻販売店から出発してホテルで成り上がるところまでそっくり同工異曲(しかし、残念ながら『マーチン・ドレスラーの夢』に遥かに劣る)。ミルハウザーが、いかにこのモチーフに魅せられている作家なのかがうかがえる。ミルハウザーお気に入りのモチーフと言えば自動人形も忘れてはいけない。『新自動人形劇場』は、もちろん 1990年の短編集『バーナム博物館』に収められた『ロバート・ヘレンディーンの発明』を彷彿とさせる。

    個人的にはミルハウザーは長編の方が面白い。微細に描かれる現実と幻想が巧みに入り混じるところが魅力なのだが、短編だといきなり幻想に漬かってしまったり(『ある訪問』、『空飛ぶ絨毯』)、現実を遊離し初めたところで終わりだったり(『ナイフ投げ師』)して今一つ。

    気に入った作品は、順にマーチン・ドレスラー変奏曲『協会の夢』、いろいろな意味を汲めるが素直に物語として楽しみたい『私たちの町の地下室の下』、思春期の少女の想いを暗喩的に描いた『夜の姉妹団』。次点で『新自動人形劇場』。

  • 何かのアンソロジーで読んだ覚えはあるものの、短編集として読むのは初めてのミルハウザー。こういっためくるめく体験はどちらかというとボルヘス風ではないので、苦手な気はするが、それでもゴシックロマン風味たっぷり、時間も場所も忘れて没頭してしまう文章はすばらしい。

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著者プロフィール

1943年、ニューヨーク生まれ。アメリカの作家。1972年『エドウィン・マルハウス』でデビュー。『マーティン・ドレスラーの夢』で1996年ピュリツァー賞を受賞。邦訳に『イン・ザ・ペニー・アーケード』『バーナム博物館』『三つの小さな王国』『ナイフ投げ師』(1998年、表題作でO・ヘンリー賞を受賞)、『ある夢想者の肖像』、『魔法の夜』、『十三の物語』がある。(以上、柴田元幸訳、白水社刊)ほかにFrom the Realm of Morpheus 、We Others: New and Selected Stories(2012年、優れた短篇集に与えられる「ストーリー・プライズ」を受賞)、Voices in the Night がある。

「2019年 『私たち異者は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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