けだものと超けだもの (白水Uブックス)

著者 :
  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072042

作品紹介・あらすじ

十月の午後というのに窓を開けっぱなしにしているのはなぜか。少女の話では、三年前、このフランス窓から猟に出ていった叔母の夫と弟二人が荒地の沼に呑まれてしまう事件があった。三人がいつか帰ってくると信じている叔母は、以来、この窓を開けたままにしているというのだが……ショートショートの名作「開けっぱなしの窓」。列車内で騒ぎ立てる子供たちを大人しくさせるため、相客になった独身男が話して聞かせた〝やんなるくらい良い子〟のお話とは……反教訓的な皮肉の利いた「お話上手」など、全36篇を収録。
 生彩ある会話と巧みなツイスト、軽妙な笑いの陰に毒を秘めたサキの名短篇集『けだものと超けだもの』(1914)を初の全訳。いきいきとした新訳で原作の味を伝える、好評『クローヴィス物語』に続くサキ短篇集第二弾。エドワード・ゴーリーの挿絵を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 軽妙な会話が流れるように繰り出されて、気がつけば「え?」といきなり違う光景が目の前に突然現れる、そんな奇術のような短編が詰まった一冊です。

    重すぎず軽すぎず、主に貴族階級の人々の、ちょっとくすりとさせられる知的な企みに満ちていて面白く読めました。意地悪ではあるけれど邪悪ではない、善人ではないけれど悪人ではない。そんな人々のちょっとした日常の隙間の一幕を覗くような楽しさがありました。

    読んだきっかけは津村記久子さんの「サキの忘れ物」でした。サキって作家名なのか、と初めて知って調べて見て興味を持ったのです。「開いた窓」の一篇を読むだけでも、その「語り」と「騙り」の軽やかさと巧みさを十分味わえるのではないかと思います。

  • 軽い笑いとアイロニー溢れる短編集。
    “Beasts and Super-Beasts”(1914)全訳。
    小学生のときに読んだ
    児童向け海外怪談アンソロジーに“The Open Window”が
    確か「ひらいた窓」という邦題で収録されていた記憶が。
    この本でのタイトルは「開けっぱなしの窓」。
    ごく短い、クスッと笑える小咄だが、
    長い年月を経て懐かしく再読。
    でも、先に『クローヴィス物語』を
    読んだ方がよかったのかな、
    クローヴィス・サングレールが登場するお話も複数あり。
    エドワード・ゴーリーの挿絵が収録されているので
    少し得した気分だが、一番の儲けもの(?)は、
    巻末=訳者あとがきページに掲載された
    SakiことHector Hugh Munro(1870-1916)が
    「ひよっこちゃん」と呼ばれていたという10歳の折の
    かわゆ過ぎるポートレートかも。(笑)。

  • 口が上手いとだいたいのことは上手くいく。

  • オチのあるショートショート
    面白い話もいくつかあったが読みづらかった

  • 弱肉強食が生物の世界の原則だが、言語によってそれを言い包められるのがヒトの偉大(ズルさ)。超けだものとは、ヒトのことか?それとも人に馴れて逆に人をあやつるペットか?『女人狼』で、雌狼に変身させられたハンプトン嬢は「砂糖はお医者様に止められているのに」と嘆いた。『休養にどうぞ』では国会議員候補が寝室に黒豚、軍鶏と一晩同居させられる。『迫真の演出』ではまたもや善良なユダヤ人が迫害される(前巻でも大司教秘書を装ったクローヴィスが“ユダヤ人皆殺し”が発令され銃を使わず実行されつつある、とだます話があった)…

  • 文学

  • 開けっ放しの窓は面白かった。
    ただ他の作品はまあまあなのが多く、文章が読みにくく途中やめに。

  • けだものbeastよりも、超けだものSuper-beast、要は人間、の方がよっぽど、コワイよね、っていう短編集

  • ウィットで毒の効いたサキの短編。
    あっという間に数年過ぎる作品もあるので
    おとぎ話風味もあり。

    クローヴィスは相変わらず「ああ言えばこう言う」を地で行く人で痛快。
    一度だけでいいのでこんな風に人を煙に巻いてみたい。。

    新潮文庫でいくつかは既読でした。

  • 皮肉の効いた短篇集。

    何かとクセのある人が、図太いうそつきにだまされてギャフンとなる話が多いです。いい人はあまり出てきません(笑)

    けだもの(だまされる側)と超けだもの(だます側)

    騙し騙されというだけでなく、他にも様々なブラックユーモアな話が沢山。短編なので、さらっと読めて楽しめました。

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著者プロフィール

Saki.
1870 - 1916.
作家・ジャーナリスト。
本名はヘクター・ヒュー・マンロー(Hector Hugh Munro)。
インド帝国警察に勤務したのち、ジャーナリストとして活躍。
そのかたわら数多くの短篇小説を執筆し、
短篇の名手と称される。第一次世界大戦時に軍に志願し、
フランスにおいて絶命。
近年の邦訳に
『サキの思い出 評伝と短篇』
(エセル・M・マンロー、ロセイ・レイノルズ、サキ 著、
花輪涼子 訳、彩流社、2017年)、
『四角い卵  白水Uブックス』(和爾桃子訳、白水社、2017年)、
『平和の玩具  白水Uブックス』
(和爾桃子訳、白水社、2017年)、
『けだものと超けだもの 白水Uブックス』
(和爾桃子訳、白水社、2016年)、
『クローヴィス物語 白水Uブックス』
(和爾桃子訳、白水社、2015年)、
『ウィリアムが来た時』(深町悟訳、国書刊行会、2019年6月)、
『サキ短編 『スキャンダルの行方』 Kindle』
(サキ全訳プロジェクト訳、Amazon Services International,
Inc.、2019年)、
『サキ短編 『ビザンチン風オムレツ』』
(サキ全訳プロジェクト訳、Amazon Services
International,Inc.、2017年)、
『サキ短編 『ラプロシュカの魂』『困った雄牛』』
(サキ全訳プロジェクト訳、Amazon Services
International,Inc.、2017年)ほか。



「2019年 『鼻持ちならぬバシントン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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