南十字星共和国 (白水Uブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072059

作品紹介・あらすじ

革命前夜のロシアに咲いた暗黒の幻想
 南極大陸に建設された新国家の首都〈星の都〉で発生した奇病〈自己撞着狂〉。発病者は自らの意志に反して愚行と暴力に走り、撞着狂の蔓延により街は破滅へと向かう――未来都市の壊滅記「南十字星共和国」。15世紀イタリア、トルコ軍に占領された都市で、スルタン側近の後宮入りを拒んで地下牢に繫がれた姫君の恐るべき受難と、暗闇に咲いた至高の愛を描く残酷物語「地下牢」。夢の中で中世ドイツ騎士の城に囚われの身となった私は城主の娘と恋仲になるが……夢と現実が交錯反転する「塔の上」。革命の混乱と流血のなか旧世界に殉じた神官たちの死と官能の宴「最後の殉教者たち」など、全11篇を収録。20世紀初頭、ロシア象徴主義を代表する詩人・小説家ブリューソフが紡ぎだす終末の幻想、夢と現、狂気と倒錯の物語集。アルベルト・マルチーニの幻想味溢れる挿絵を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 悪い夢とそれを見た人の話、あるいは誰かの見た悪夢そのもののような短編が揃う。昏く、その悪夢を呼び起こした現実もまた暗い。原書からのアルベルト・マルティーニの挿絵もとても良かった。

  • こわい

  • レビューはこちらに書きました。
    https://www.yoiyoru.org/entry/2019/03/28/003518

  • 短編集。革命物はなんだかソローキンの欠片があちこちに見えた。ソローキンに比べると作者による読者への親密さがわかる。それ以外はビョーキもの。今も昔もビョーキの人の普遍さを確認。今の人と違い情報がない分、周りがあれこれ言わない分、安心して内側に籠ることができたようだ。ロシアの人って不器用で無骨?内側に囲いを作っていろんな物を投げ入れてる印象。そしてこじらせる。母親の実家にて、ごちそうを振る舞われてる感じした。作りなれてる料理を心を込めて振る舞う作者。1つ1つが田舎の郷土料理。

  • 久々小説。タイトル買いして積んであった短編集。
    寡聞にして知らなかったが、100年ぐらい前のロシア・シンボリズムという象徴主義文学運動の詩人だそうです。

    夢や鏡の中といった異世界と現実のあわいをテーマにした短編が多い。現実世界と重なる異世界の中の自分の本性が、敵対的な相貌で現実世界に侵出してくるような話。
    異色なのはタイトルの『南十字星共和国』で、南極に成立した一見ユートピア的な共和国が、伝染性の精神病の蔓延で暴力的に崩壊する過程を書いている。他にもこの時代のロシアならではだろうが、革命で成立した衆愚政治による文化の破壊を書いたものもあり、著者の人間本性に対するペシミズムが伺われる。

    白水Uブックスはジャケ買いしてもはずれが少ないので助かる。

  • 短編集だから寝る前に1話ずつ読もうと思っていたのだけど、いざ読み始めたら想像してたよりずっと怖くて、うなされそうだから昼間に一気読み。怖いといってもホラーなわけではないのだけれど、幻想文学と呼ぶにはあまりにも暗黒系。怖いけどとても好みだった。以下印象的だったものを個別に。

    「地下牢」
    トルコ軍に侵略された小国のお姫様が地下牢に閉じ込められて、同じく牢に繋がれていた若者と恋に落ちる・・・ところまではロマンチックなのだけれど、ラストのシニカルさよ・・・。お姫様がものすごく酷い目に合わされるのがつらい。でもつまりこれは一種の吊橋効果なのだろうか。

    「鏡の中」
    鏡のあちら側とこちら側での実体をめぐる闘争という題材自体はとくに珍しくもないけれど、主人公の女性の狂気っぷりがじわじわ怖い。

    「いま、わたしが目ざめたとき……」「塔の上」
    夢と現の境界がわからなくなった人の狂気。とくに「いま、わたしが~」は、そもそもの主人公の嗜好が異常なので結末がおぞましい。アルベルト・マルティーニの挿画も怖い。

    「ベモーリ」
    孤独で内向的な少女が文具店で働くうちに商品に愛着を覚え・・・るところまでは可愛いファンタジー風設定なのに、なぜかだんだん狂気を感じてくる。

    「防衛」
    唯一わかりやすい幽霊譚にして、捉え方によっては一番ほのぼの、ロマンチック。

    「南十字星共和国」
    南極に建国されたディストピアで狂気の伝染病が蔓延し・・・。以前読んだ『裏面』という小説を思い出した。崩壊のさまが凄まじい。

    「姉妹」
    三姉妹それぞれに愛された一人の男。なんかこう、砂の女的怖さ。逃げたいのに戻って来ちゃう。

    ※収録作品
    「地下牢」「鏡の中」「いま、わたしが目ざめたとき……」「塔の上」「ベモーリ」「大理石の首」「初恋」「防衛」「南十字星共和国」「姉妹」「最後の殉教者たち」

  • ロシア革命初期の混迷を生きた象徴派ブリューソフの、素朴に屈折した、夢幻・倒錯にまみれた短編集。後味はどれも悪い。ブルガーコフほど笑いの要素はなく、ベリャーエフほど科学の未来を信奉していないから。凄く、時代性を感じる。一方、スターリンの粛清の時代をよく生き延びたものだ…。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=7321

  • 1973年に刊行されたブリューソフの短編集が、このたび、白水Uブックス『海外小説 永遠の本棚』で再刊された。
    ロシアというよりヨーロッパの怪談に雰囲気が近い。特に『鏡の中』や『いま、わたしが目ざめたとき……』などはホフマンが書いたと言われたら信じてしまいそうだ。
    逆に『防衛』や『姉妹』は非常に『ロシアっぽい』。
    不思議な作風だ……。原書にあった戯曲が割愛されているのは残念。戯曲も読んでみたかった。

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著者プロフィール

1873年、モスクワで生まれる。1890年代、モスクワ大学在学中にフランス象徴派やE・A・ポーの詩の翻訳を手がけ、詩文集『ロシア・シンボリスト』全3巻を刊行。その後、詩集『傑作』『これが私だ』『第三の夜衛』などを出版、文芸誌《ヴェスイ(天秤座)》の編集主幹として、ロシア象徴主義運動を牽引する存在となる。小説に短篇集『地軸』(1907:増補版1911)、長篇『炎の天使』(1908)、『勝利の祭壇』(1913)など。『炎の天使』は後にセルゲイ・プロコフィエフによりオペラ化された(1927完成、54初演)。ロシア革命成立後も国内に留まり、1924年死去。

「2016年 『南十字星共和国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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