不在の騎士 (白水Uブックス)

制作 : 米川 良夫 
  • 白水社
3.82
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本棚登録 : 96
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072103

作品紹介・あらすじ

鎧の中はからっぽ――奇想天外な騎士道物語
 時は中世、シャルルマーニュ大帝の軍勢に、サラセン軍との戦争で数々の武勲を立てた騎士アジルールフォがいた。戦場にあっては勇猛果敢、謹厳極まる務めぶりで騎士の鑑ともいうべき存在。だが、その白銀に輝く甲冑の中はからっぽだった――。肉体を持たず、強い意志の力によって存在するこの〈不在の騎士〉は、ある日その資格を疑われ、証を立てんと15年前に救った処女を捜す遍歴の旅に出る。彼に恋して後を追う女騎士ブラダマンテ、さらにその後を追う若者ランバルドの冒険とあわせ、奇想天外な騎士道物語が展開する。文学の魔術師カルヴィーノが、人間存在の歴史的進化を寓話世界に託して描いた《我々の祖先》三部作開幕。「指輪、ナルニア、ゲド、どれも世界を語るに足りないと思っている人への贈り物! これでだめだったら、ファンタジーに絶望していい」(金原瑞人)。

感想・レビュー・書評

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  • 「不在の騎士」の話を書いている修道尼が、「不在の騎士」のストーリーに出て来るキャラクターと同一人物であるという構造の本で、なりきり小説を書く夢見がちな人間の話かと思ってしまった。特に後半のご都合主義な展開は修道尼が子供であることを表しているのかもしれない(訳者あとがきの「子どもの視点」の話からそう思った)
    しかし、「不在の騎士」のストーリー自体は「全てを兼ね備えた理想の騎士は存在しない、それならば存在しない理想的な騎士が存在しないということはありうるのでは?」という出発点があるのでそれだけで楽しめた。何故なら私も架空の人間を架空だからこそ好きでいられているので……。というのも理想の人間が架空の存在であるからこそ、現状への諦めと同時にある種の現実への希望を持つことが出来るからである。
    従者グルドゥルーはなかなか味のあるキャラでとても良かった。存在感がすごい。

  • 品切だったのが、白水社から出版され、ついに3部作読破。『木のぼり男爵』が一番面白かったけど、これも作家の想像力に感服。なぜ不在なのに存在?やはり不在?奥が深すぎ、十分に理解できたかわからない。

  • からっぽのヨロイである「不在の騎士」アジルールフォ、理想と現実のはざまで元気よく生きて恋するランバルド、自分と他人の区別がつかず、メチャクチャに生きているグルドゥルー、生身の男に幻滅した女騎士ブラダマンテ、こんな人々が織りなす中世騎士物語風の話です。語り手は修道院の罰でお話を書かされている修道女テオドーラなのだが、なんとも頼りにならない語り手で、めんどくさくなって話を端折ったりする。アジルールフォは几帳面で現実的、騎士道小説のなかにいながら、騎士の「物語」を「記録」によって「事実」に格下げしてしまうので、ほかの騎士からはうとまれている。そんなかれに騎士の資格が否定されるという事件が起こるという部分が話の筋です。物語の人物がどのように自ら存在するようになるのか、「存在することを学ぶ」というなんとも形而上的な小説、というか寓話であると思う。アジルールフォが存在がつねに物を数えることによって、自らの存在しない存在を確認するところは、SNSでつねに反応を数えている現代人にも通ずるところがあるのではないかと思う。最後はなんとも面白いシカケである。

  • 『冬の夜ひとりの旅人が』に続き、『不在の騎士』もUブックスに。
    『木のぼり男爵』『まっぷたつの子爵』と共に『我々の祖先』3部作を構成する。
    『冬の夜〜』とはまったく違う雰囲気で面白かった。割と滑稽味が強いが、読後感に妙な寂しさがある。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=9232

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著者プロフィール

1923年キューバ生まれ。両親とともにイタリアに戻り、トリノ大学農学部に入学。43年、反ファシズム運動に参加、パルチザンとなる。47年、その体験を元に長篇『くもの巣の小道』を発表、ネオ・リアリズモ文学の傑作と称される。その前後から雑誌・機関誌に短篇を執筆し、49年短篇集『最後に鴉がやってくる』を刊行。エイナウディ社で編集に携わりつつ作品を発表、一作ごとに主題と方法を変えながら現代イタリア文学の最前線に立ち続ける。主な長篇に『まっぷたつの子爵』(52年)『木のぼり男爵』(57年)『不在の騎士』(59年)『見えない都市』(72年)『冬の夜ひとりの旅人が』(79年)などがある。85年没。

「2018年 『最後に鴉がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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