- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560072103
作品紹介・あらすじ
鎧の中はからっぽ――奇想天外な騎士道物語
時は中世、シャルルマーニュ大帝の軍勢に、サラセン軍との戦争で数々の武勲を立てた騎士アジルールフォがいた。戦場にあっては勇猛果敢、謹厳極まる務めぶりで騎士の鑑ともいうべき存在。だが、その白銀に輝く甲冑の中はからっぽだった――。肉体を持たず、強い意志の力によって存在するこの〈不在の騎士〉は、ある日その資格を疑われ、証を立てんと15年前に救った処女を捜す遍歴の旅に出る。彼に恋して後を追う女騎士ブラダマンテ、さらにその後を追う若者ランバルドの冒険とあわせ、奇想天外な騎士道物語が展開する。文学の魔術師カルヴィーノが、人間存在の歴史的進化を寓話世界に託して描いた《我々の祖先》三部作開幕。「指輪、ナルニア、ゲド、どれも世界を語るに足りないと思っている人への贈り物! これでだめだったら、ファンタジーに絶望していい」(金原瑞人)。
感想・レビュー・書評
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中身のない鎧が一人で勝手に動いてたらホラーなんだろうけど
それがちょっと間抜けなくらい生真面目で、
手のかかる道連れに頭を悩ますとか、
カルヴィーノらしいユーモアのある楽しい小説でした。
とはいえ話の全体の作りはなかなか込み入っていて
ユーモアだけではない企みのある作品だ。
不在なのはこの騎士だけではなくて、
父親が不在であったり、物語の所以が不在であったり
あらゆるものはほとんど空振りに終わる。
けれどもカルヴィーノのユーモラスな筆致は
それをヒロイックに描くのではなくて、
はじまりが空虚であっても続いていく物語そのものの愉しみに誘ってくれる。
それにしても、一番最初は異教徒の軍勢と戦ってたような気がしたんですが
結局どうなったんですかね。ま、いっか。
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「だが、貴公は存在せぬとすれば、どのようにして奉公しようというのかな?」
「意志の力によって」と、アジルールフォが答えた。「また我らの聖なる大義への信念によって!」(p.11)
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ほとんどとんち合戦のような閲兵式での一幕。
ユーモラスな中にも存在せぬもののプライドを感じる。
存在せぬものは虚業と呼ばれることもある文筆業ともどこかで重なっている。
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「それで、君は、将軍クラスであった父上、ロッシリヨーネ侯爵の仇を討ちたいというのかね!どれどれ、将軍一人の仇を討つのには、最良のやり方は少佐三人を槍玉にあげることだ。簡単なやつを三人、君にふり当てることができるがね、それで君も文句なしというわけだ」(p.27)
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仇討ちの直訴に行った若武者ランバルドを出迎えるセリフ。
戦場で彼は父親の仇を探し回るけれど、仇の眼鏡係までしかたどり着けない。
ランバルドは生身代表として散々振り回される感じだけど、
物語の主観は不在の騎士にあるというのが面白いバランスでもある。 -
品切だったのが、白水社から出版され、ついに3部作読破。『木のぼり男爵』が一番面白かったけど、これも作家の想像力に感服。なぜ不在なのに存在?やはり不在?奥が深すぎ、十分に理解できたかわからない。
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『冬の夜ひとりの旅人が』に続き、『不在の騎士』もUブックスに。
『木のぼり男爵』『まっぷたつの子爵』と共に『我々の祖先』3部作を構成する。
『冬の夜〜』とはまったく違う雰囲気で面白かった。割と滑稽味が強いが、読後感に妙な寂しさがある。 -
書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。
http://www.rockfield.net/wordpress/?p=9232