- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560072158
作品紹介・あらすじ
甦るブルガーコフ最後の傑作
『船舶通信』のしがない記者兼校正係マクスードフは、昼は新聞の仕事をしながら、夜は小説を書き続けていた。ある夜、突然部屋を訪れた著名な編集者ルドルフィによって文芸誌に掲載が決まり、作家の仲間入りを果たしたマクスードフだったが、それが苦難の始まりだった。ルドルフィは発売前の雑誌と共に姿を消し、〈独立劇場〉の依頼で自作を戯曲化するも、演出家の介入や劇場内の対立など、様々な障害によって上演は先延ばしされる。劇場の複雑な機構に翻弄されながらもその虜となっていく作家の悲喜劇を戯画的に描いたこの作品は、スターリン体制下のロシアで反革命的との批判を浴び、劇作に活路を見出すも上演中止が相次ぎ、困難な状況に陥ったブルガーコフ自身の体験に基づいている。発表の当てもないまま書き続けられ、没後16年に初めて出版されて劇的な復活を果たした未完の傑作。
感想・レビュー・書評
-
未完に終わったブルガーコフ最後の長編。
巻末解説にもあるように、本作はブルガーコフの自伝的な側面が非常に強い。あの当時のソビエトという国で、粛清されなかったというのはラッキーだったのかもしれないが、では幸福だったのかというと疑問が残る。
反面、作中に描かれる世界は悲喜こもごも、作風としては明るい部類に入るのではないか。『巨匠とマルガリータ』の例を挙げるまでもなく、作風自体は基本的に明るいのがブルガーコフの魅力でもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブルガーコフ未完の遺稿。これからさらに面白くなりそうなところで中断してしまっているのが本当に残念。
物語は、投身自殺をしたマクスードフという男が友人の「私」に送ってきた手記という体裁になっているけれど、解説にもあったように作者の自伝的要素が濃い内容。作家志望のマクスードフが1作だけ書いたものの本になりそこねた小説、その戯曲化の話が持ち上がり、劇場に呼ばれたマクスードフは理不尽で不条理な劇場の人間たちに振り回されどんどん疲弊してゆく。
『巨匠とマルガリータ』も、巨匠の苦悩の原因となり、悪魔たちに引っ掻き回されたのはおもに醜悪な文壇と劇場関係者だったけど、本作でもその構図はそのまま。登場人物たちはそれぞれ大真面目に語ったり行動したりしているのだけれど、マクスードフと読者にとってはあまりにもそれらが悪夢的で不条理。なんでこんなことになっちゃうんだろうと思いながら転がり落ちていくのを止められない。
ところでブルガーコフは面白いからどんどん読んでしまうけれど、久しぶりに「ロシア文学はやっぱり名前が覚えられない!」と発狂しかけました。しかし主人公のマクスードフはじめ、登場人物同士も名前を間違えたり覚えられなかったりしているので、あらロシアでもそんな感じなの?と少し安心。 -
初めて読んだウクライナ作家の作品。
自伝的作品で未完の傑作とされているらしく、なんだか、なぜこれを手に取ったのか記憶にないが、とんでもないものを読んでしまったな…と思ったり。
これは現実なのか?舞台なのか?それとも夢なのか妄想なのか?という、それこそ劇的な場面転換があったのが印象的だった。特に執筆の場面など。
また主人公の人間観察も面白い。《この男は驚嘆すべき人物だ》などの心中でのツッコミ笑
自分の書いた戯曲が劇場の都合で先延ばされているにも関わらず、劇場のことを忘れずにはいられない、引き込まれていく主人公の様子が面白い。
秘書の口述筆記、フィリッポヴィチの3人同時の会話、主人公の名前がひたすら間違えられるセリフなどなど、やはり様子がおかしく、非常に劇的な表現だと感じた。
何より解説のおかげでだいぶ理解が進んだ、ありがたい。
言論統制や表現の自由がバチバチに厳しい時代に、スターリン本人に手紙を書き続け、さらにスターリン本人からの電話を受けたこともあるという、現実は物語より信じがたいことが作家自身に起きている。(なんやねんそれ。)
そういうもろもろを考えると理不尽な契約や、勝手に嫉妬され、勝手に批判されている様などは、まさに実体験なのだろう。なかなか理不尽で悲劇的だが、そう感じさせないユーモアというか、スピードというのか……。
あんまりよく分かんないなぁと思いつつ読み進めたが、結構面白いな、という読後。よかった。
-
テーマ:劇場
-
「犬の心臓」をきっかけにロシアの社会主義の歩みをノート一冊分勉強したので、この表現は何を揶揄しているのか、いちいち確認するように読んでしまい疲れた。作者がモスクワ芸術座に作家、演出として関わっていたそうで、自伝のようらしい。内容→小説を劇用に書き直してくれと依頼される。「こんなに修正されたのでは上演する意味がない」劇場の俳優達は70歳にもかかわらず、21歳の役を演じるつもりでいる。そりゃー作家の大事な作品はめためたにされますよ。演歌の歌番組の世界みたいにどんづまり袋小路の世界。やはり小説と舞台は別物よ。
-
書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。
http://www.rockfield.net/wordpress/?p=10310
著者プロフィール
ミハイル・ブルガーコフの作品





