ヴィレット(下) (白水Uブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072264

作品紹介・あらすじ

異国の街で寄宿学校の教師として生きる英国女性の内面を描き、『ジェイン・エア』以上に円熟した傑作と称されるブロンテ文学の到達点。

感想・レビュー・書評

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  • 手持ちの駒でなんとか生きていこうとするヒロインの、だからこその認知の歪みや性急さ、痛みから回復しようとする一人ぼっちの格闘が、悲しいような愛しいようなでぐんぐん読んでしまった。少女漫画雑誌の来月号の、お気に入りの連載を待つような気持ちといったらわかるだろうか。

    最終的にあのようにルーシーは回想できたのであって、それなら彼女はやりとげたのだからよいのだ。あとで失われたとしても確かに存在したものが、その後の数十年を支えたということ。ただしルーシーは信頼できない語り手だから、あの後結婚して子どもが生まれちゃったりしているかもしれない。

    ルーシーの相手は自分だったらちょっと願い下げな人物だけれど、彼女がいちばん彼女らしくふるまえたのはあの人に対してだったのでしかたなし。でもなんであの口調なのか... 新訳で読んだらイメージが変わりそう、というか変わってほしい。

  • シャーロット・ブロンテの長編がUブックスに。
    これまであまり知られていなかったのが不思議なぐらい、如何にも『ブロンテらしい』長編だった。なんというか、非常にお行儀がいいw

  • なんという終わり方…!!

    シャーロット・ブロンテの遺作となったこの小説、上巻で示されたほのかに暖かい交友もまた、幸せにも希望にも猜疑心を持つルーシーには早々に遠いものになってしまい、読むのが辛くなってしまった。ポール・エマニュエルもなあ。私にはちょっとモラハラというか、そういう体質の支配者に思えてしまった。英国教会の牧師の長女らしい、シャーロットの真面目な性格を想像できる。今の時代であれば、自分の生き方を他者に頼らない女性を、シャーロットなら、どう書いただろうか。

    ヴィレットとはベルギーのことを想定してあるらしいが、英国人、フランス人、スコットランド人、カトリックとプロテスタントの差別意識など。あと翻訳が古いものなのも斟酌しつつ読んだ。(ポール・エマニュエルは今で言うツンデレ、ってやつなのかも。)ミステリ要素やなんかは「ジェイン・エア」と同じく面白いが、プロットというよりも、主人公ルーシーの思考こそが読むべきものかもしれない。冷徹に人の俗物さを描写しながら、人とのつながりを求めずにはいられないルーシーの得た、愛と心の自由と自立。

    ポリーにも、ジネヴラにもなれないルーシー。(そんな風に恵まれていたり、愚かであれたら、どんなに幸せだろう)。そんなルーシーの決然たるラストには、なんとも言えない気持ちになった…。

  • うう、。ブロンテの時代と環境が彼女に与えた影響は本当に強いと思うのだけど。ちょっと一つ一つのエピソードがあっさり流れていってしまうのが、安心である反面、肩透かし的な印象も受ける。安心なんだけどね。

    牧師の娘ということもあり、宗教的な要素が同じような時代の他の人より、より濃い。そしてこの本は彼女の考え方が強く出ている。カトリックとプロテスタントの違いをキリスト教徒はどう考えているのか、という点について直に?知ることができたのは興味深かった。が、いかんせん、くどいくらいの言い回し。繰り返し語るのに、明確にはしない。してはいけないという自粛なのか。でも繰り返す。ちょっと疲れる。
    ウルフはシャーロットの作品はやや作者が自分の意見を主張しすぎると書いていたが、否めない。

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著者プロフィール

Charlotte Brontë(1816- 1855).

「2014年 『シャーロット・ブロンテ全詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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