田中一光自伝われらデザインの時代 (白水Uブックス 1070)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560073704

作品紹介・あらすじ

惜しくも急逝したグラフィックデザイン界の巨匠が、自らの生涯を振り返りながら、グラフィックデザインの歴史とその社会的役割、関西と東京との文化的差異、時代の古典に対する認識など、数多くの提言を盛り込んだ、日本グラフィックデザイン史の副読本。

感想・レビュー・書評

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  • 田中一光は、セゾングループのクリエイティブディレクター、そして無印のアートディレクターとして活躍した。どんな人生をおくったのか、知りたかった。この自伝を読みながら、実に客観的に率直に書こうとしていることに、物足らなさを感じた。そして、次々に人の名前が出てくるので、交遊の広がりとグラフィックデザイナーへ影響を与えたことがうかがえる。
    田中一光は1930年生まれ。横尾忠則が1935年生まれ。2人は、日本デザインセンターで繋がる。横尾忠則を日本デザインセンターで働くように推薦したのが田中一光。
    田中一光は、グラフィックデザイナーとなり、アートディレクターになっていった。横尾忠則は、ニューヨークのピカソ展を見ることで、グラフィックデザイナーから画家になったのとは大きく違う。
    田中一光は、奈良県の生まれ、家は興福寺の近くにあった。仏像や寺院には幼心から近くに存在していた。京都市立美術専門学校図案科に入るが、演劇三昧。木下順二作「夕鶴」を無断で演じてしまうということもやった。この劇団三昧が、後々の仕事に役に立っている。
    図案からポスター、そしてグラフィックに大きく変化して行く中の中心的な役割を果たした。
    最初に影響を受けたのが、早川良雄だった。確かに、この人のグラフィックは日本的な情緒がありステキだ。なんとも言えない味わいがある。
    そして、田中一光を引き上げてくれたのが、亀倉雄策。東京オリンピックのポスターや日本の有名企業のロゴ(NTT、NIKON、フジテレビ、TDK、明治、グッドデザインなど)を作った人である。
    仕事ぶりを評価したのが、勝見勝。この人が、日本のグラフィックデザインの質と量を作り上げたキイマンだったのだ。建築では、磯崎新、菊竹清訓とコラボ、三宅一生ともコラボする。田中一光はデザインとして三角が好きなのは、面白い。自分の仕事は「花鳥風月」というのもしっかりしたポジショニングができている。
    そして、田中一光はライトパブリシティ、日本デザインセンターを得て、独立して、大阪万博の政府館1号館展示設計責任者となり、アートディレクターとしての花が開いて行くのである。
    そして、堤清二と会い、セゾン、西武、無印と新しい流れを作り出す。
    糸井重里などを発掘し、キャッチコピーの世界を作り出す。
    日宣美という組織が、クライアントなしのグラフィック応募という仕組みを作ったことで、企業に縛られない自由な発想のグラフィックを作った。これは、とても重要なことだ。
    日本のデザインの洗練され、インパクトがあり、刺激的なものを作り上げていった中心的人物であったことは、認識できたが、淡々とした語りには、なぜかもったいない。横尾忠則の「思想」的な語りの自伝の方が、ワクワクした。日本のデザイナーの概況がわかって、理解できた。なぜ無印ができたのかは、堤清二のチカラが大きかったのかな。

  • やっと読み終わりました。
    ・格子、縞、水玉が基本
    ・世阿弥、利休、琳派、浮世絵、歌舞伎の五つに日本文化は集約される
    ・茶とは本来、質素が華美に引け目を感じることなく、貧しさの中に秘められた知性と感性を誇りとする世界である
    ・常に白紙の状態で素直に主題との接点を求め、私自身が現代人として「最良の生活者」になることが、トータルなデザインに対して何よりも必要なことなのではないか、と思っている

  • 1930年奈良市に生まれた田中一光氏の遊び場は興福寺の三重塔や北円堂で囲いはまだなかった。このデザイナーは終戦の翌年京都の美術学校の図案科に入るが、当時はまだデザインという言葉がなかったという。戦後の記念碑的行事にほとんど携わっているのが凄い。東京オリンピック、大阪万博、沖縄海洋博、筑波科学博にデザインを提供し続けた。デザイナーの時代だった。この自伝はいい。

  • 田中一光が亡くなった後開かれた展覧会へ行ったのだが、この本を読んでから行けば良かったと感じた。デザインのみならず人柄にも惹かれる。
    デザイナーを志す人に是非読んでもらいたいかも。

  • 自分だけじゃない自伝です。

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