チベット旅行記〈上〉 (白水uブックス)

著者 :
制作 : 長沢 和俊 
  • 白水社
3.70
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本棚登録 : 226
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560073728

作品紹介・あらすじ

ただひとり、ひたすら求道の情熱に身を任せ、明治33年、日本人として最初にチベットに入国した河口慧海。その旅行記は古典的名著であり、読み物としても抜群の面白さを備えている。上巻では、明治30年6月、日本を出発し、装備も不十分なまま寄せ来る困難をしのぎながらヒマラヤ越えに挑んださまを描く。

感想・レビュー・書評

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  • 明治30年代に、当時鎖国していたチベットに日本人として初めて入国した僧侶・河口慧海の旅行記。数年間にわたる、かなりの長旅になりますが、文章自体は現代語に直してあるし、全く堅苦しくなくてとても読み易く面白いです。

    ユーモア、というと語弊があるかもしれませんが、体験している出来事はびっくりするくらい過酷なのに、当のご本人がスーパーポジティブで全くめげないので、読んでるこちらはタフガイの愉快な冒険譚を読んでる気持ちになってしまいました。

    氷河で溺れかけたり、雪山で凍死しかけたり、寒すぎて眠れなくても座禅を組んで乗り越えちゃうし、強盗にあっても助けてくれる人が必ず現れる。美人の奥さんをもらったお坊さんの夫婦喧嘩をみて女房を持つのは大変だ、と同情したり、自分は若い娘に誘惑されても全力で退け得意げだったり、真面目すぎてちょっとお茶目に見えてきてしまうところもなんだか微笑ましい。

    仏教のため、という目的が明確なため行動が全くブレず、ひたすら前に向かって進み続ける、その姿勢が、まっすぐなのに飄々としていて心地よいですね。チベットの情景や人物描写というのもあまり触れる機会がないので珍しくて面白い。

  • チベット旅行記〈上〉 (白水uブックス)

  • 色んな人からの推薦本だったから、いつかは読もうと思いながら、どうもタイトルや装丁の詰まらなさそうな雰囲気から、手が遠のいていた。その事は素直に反省しなければならない。時代は明治。仏教徒の旅行記、しかも場所はチベット。このキーワードをどう感じるかは様々だろうが、私が思っていた読みにくさは微塵も無い。寧ろ、現代のバックパッカーにおける日記のようだ。あるいは、遭難者の手記だろうか、とにかく読みやすい。そして仏教観が世界を広げ、時のチベットの汚穢さは臭いすら経験させてくれるようだ。

    志し。シャカムニ如来は王位も富貴も捨て、乞食として出家し一切の衆生のために、身を削り修行した。筆者も安穏と地位を捨て、覚悟を決めたのだ。そんな生き様からは、宗教を超え、学ぶ事は多い。

  •  明治時代に日本からチベットへ行った僧侶の旅行記。私が読んだ新書は現代語訳で、全訳ではないが一般人が読むには適していると思われる。どうやら多少の脚色もあるようだが非常にスリリングで、冒険譚としても面白い。ろくな装備もなく登山家でもない彼がよく生きて帰ってこれたものだと思う。

     ヒマラヤに近いチベットは自然環境も過酷だが、それに加えて当時は厳重な鎖国政策を取っていた。だから外国人がチベットに入ることは物理的にも政治的にも命の危険と隣り合わせであり、ヨーロッパからも多くの探検家や研究者が進入を試みながら断念していたという。

     著者がそんな場所へ行ってちゃんと生きて帰ってこれた理由は色々挙げられるが、「死んだら死んだでしょうがない」という割り切りがあったことが結構重要なのではないかと思われる。その辺はさすが僧侶といったところか。

     それにしても、目的地へ向かう途中の国に何年も滞在し、そこで出会った人から言葉を勉強して準備するなんて、現代とのあまりの違いが眩しくすら感じられる。何もかも簡単になってしまった現代の私たちは、便利さに比例して弱くなっているのは間違いないだろう。

  • 東大京大教授が薦めるリスト100選抜

    No.76

  • 日本人で初めてのチベット入国者として1897年(明治30年)にチベットへ旅立った河口慧海の旅行記。

    「チベット人は糞を食う餓鬼というもの」、等現地人をやたらけなしたり、自分の方が良く知っているといった自慢話が多いのが気になった。

  • チベットを旅行したら死ぬぞ、といわれての河口慧海の一言。 「死ねばそれまでのこと。日本にいたところで死なぬという保証はできない。向こうへ行っても必ず死ぬとは決まっていない。運に任せてできうるかぎりのよい方法を尽くして、事の成就を図るまでのこと。」 死をかけてのことじゃなくても、全てにおいて言えると思う。できうるかぎりのよい方法を尽くすことが大事。

  • [ 内容 ]
    ただひとり、ひたすら求道の情熱に身を任せ、明治33年、日本人として最初にチベットに入国した河口慧海。
    その旅行記は古典的名著であり、読み物としても抜群の面白さを備えている。
    上巻では、明治30年6月、日本を出発し、装備も不十分なまま寄せ来る困難をしのぎながらヒマラヤ越えに挑んださまを描く。

    [ 目次 ]
    チベット入り決心の次第
    出立まえの功徳
    探検の門出および行路
    語学の研究
    チベット入りの道筋
    奇遇
    間道のせんさく
    ヒマラヤ山中の旅行
    山家の修行
    北方雪山二季の光景〔ほか〕

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    [ おすすめ度 ]

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    [ 参考となる書評 ]

  • 購入:2009/11/21、読了:-/-/-

  • これはある超人の日記であり、文化人類学の教科書でもあるだろう。

    最近「ホワイトアウト」を読んで雪に対する恐怖感を目の当たりにできた気がしていたのだが、本書に比したら戯画に堕ちてしまうだろう。何しろこちらはほぼノンフィクションだろうから。

    だいたい、なんの設備も持たずヒマラヤ越えなど可能なのだろうか?本書で著者は何度も死にかけている。十分な食料も持たず、防寒着もつけず、自らの信念だけでマイナス何十度の生き地獄を何千キロもの気も遠くなるような冒険へ、彼を駆り立てたものは何なのだったのか?それは仏教への信仰心ひとつだ。

    同じ日本人という概念では彼を捉えられないだろう。医学等博学な知識や、恐ろしいほどの体力は超人に値するが、性格は変人に近い。その地金を表す文体は恐ろしく下手糞であり、途中何度か目にする和歌などはあまりにヘタ過ぎてこちらが恥ずかしくなるほどだ。彼のエゴイスティックな部分が文中よく垣間見られ、現地の人たちからも変人扱いを受けている。また、現地の人々を露骨に差別し、卑下するような気配も感じられる。まさに文化人類学のテキストのようではないか。

    未踏の地に光を灯す部分だけが彼の業績なのではない。

    戦前の日本人のもつ純粋な探究心や克己心、なにしろその不屈の闘志に感銘をうける。

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