チベット旅行記〈下〉 (白水uブックス)

著者 :
制作 : 長沢 和俊 
  • 白水社
3.95
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本棚登録 : 147
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560073735

作品紹介・あらすじ

ついにチベットに入った慧海は、念願の仏教大学入学を許可された。法王ダライ・ラマにも会い、医者としての名声も高まり平穏で順調な毎日を過ごしていたが、次第に外国人ではないか、という噂がたちはじめ、ラサを離れる決心をする。だが、行く手には乗り越えなければならない関所がいくつも待ちかまえていた…。

感想・レビュー・書評

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  • 肉食や肉欲を禁じながらも、自らの目的のためには人を騙す。この本を読むと、一体何が仏の道で、一体何が人道なのかが分からなくなる。聖人では、自らの命を捨てる覚悟を持っていたとしても大切なものは守れず、そもそも事物に囚われない事から大切なものを持たないのかも知れないが、では、そこに見せる執着は何なのか。まして肉欲の無い世界は、子孫も残せず、滅びを導きはしないのか。チベットまでの苦行に耐える著者の手記を見ながら、自分の価値観を照らし、悩む。どうやら、仏の道とは、ただのこだわりを貫く事ではないか。そして、貫く事こそが戒律であり、煩悩を絶する事は、単に自らのルールに過ぎないのでは、と。考えながら読む。著者と共に、旅をしながら。不思議な読書体験であった。

  • 下巻でやっとラサに到着。でも「やったー!着いたー!」みたいな感じじゃなくて、結構ぬるっとチベット入国しちゃってましたね(笑)

    ラサ到着後は比較的都会の暮らし。日本人であることは秘密にしながらも、「なんか偉いお坊さん」医学の知識があるので「なんかすごいお医者さん」として重宝され有名人になってしまった著者は、なんとダライ・ラマにまで会ってしまう。大蔵大臣の家に居候していて飢えたり凍えたりすることもなくわりと平穏な日々が続き、最終的にチベットを出るときも入国時に比べれば楽なルートだし、問題は関門のみ、それも金コネ才覚で楽々クリアで、ヒマラヤ越えの過酷だった上巻に比べると刺激は少な目。

    上巻では過酷な旅路にありながらもちょいちょい興が乗ると歌を詠んだりしていたけれど、ラサ滞在中はそれもなかったなあ。

    でもチベットの景色や風習なんかはとても興味深かったです。印象的なのは有名ですが風葬(鳥葬)とか、あとは一妻多夫の家族制度。大勢の夫に女性が一人、という状況は、見方によっては女性が虐げられているような印象も受けるのだけれど、慧海によるとチベットではカカア天下でとにかく家庭内において女性の権力が強いらしいので、けして女性にとって不幸な状況ではないようです。なるほど気持ちの持ちようですね。

    書いてあることすべてを鵜呑みにしてはいけないそうですが(誤解もあるし時代の差もある)、さすがにこれを持ってチベットを徒歩で旅しようと思ってるわけではないので、未知の国の冒険談としてとても楽しく読めました。

  • すごく面白かった。日本人と言うことがばれるとまずいらしく、色々知恵を回してなんとか切り抜けていく。でも、お坊さんだけど医療の知識がチベットではめずらしく、はったりもありで名医として有名になってしまったり。最後、チベットを抜けることができたが、ラサで世話になった人が投獄されたりということもあったりらしく、大変だったなあ、とおもった。

  • チベットに単独潜入した日本僧の記録。あの手この手で旅の危険を回避する様子が面白く、当時のチベット周辺の風俗も興味深い。しかし、あまりに出来すぎていて必ずしも真実だけを書いてるんじゃないのかなと思ってしまう。慧海は後年、還俗してたり旅行記のオリジナルメモも発見されたりして曰くがありそう。

  • チベットに興味がある人、行ったことがある人、これから行きたい人におすすめ。逆にそれ以外の人が読んでも楽しめないかも。

  • [ 内容 ]
    ついにチベットに入った慧海は、念願の仏教大学入学を許可された。
    法王ダライ・ラマにも会い、医者としての名声も高まり平穏で順調な毎日を過ごしていたが、次第に外国人ではないか、という噂がたちはじめ、ラサを離れる決心をする。
    だが、行く手には乗り越えなければならない関所がいくつも待ちかまえていた…。

    [ 目次 ]
    異域の元旦
    二か月間の読経
    不潔な奇習
    正月の嘉例
    防霰奇術
    はるかにラサを望む
    法王宮殿の下に着く
    チベット人を名乗る
    セラ大学生となる
    法王に召される〔ほか〕

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • これはある超人の日記であり、文化人類学の教科書でもあるだろう。

    最近「ホワイトアウト」を読んで雪に対する恐怖感を目の当たりにできた気がしていたのだが、本書に比したら戯画に堕ちてしまうだろう。何しろこちらはほぼノンフィクションだろうから。

    だいたい、なんの設備も持たずヒマラヤ越えなど可能なのだろうか?本書で著者は何度も死にかけている。十分な食料も持たず、防寒着もつけず、自らの信念だけでマイナス何十度の生き地獄を何千キロもの気も遠くなるような冒険へ、彼を駆り立てたものは何なのだったのか?それは仏教への信仰心ひとつだ。

    同じ日本人という概念では彼を捉えられないだろう。医学等博学な知識や、恐ろしいほどの体力は超人に値するが、性格は変人に近い。その地金を表す文体は恐ろしく下手糞であり、途中何度か目にする和歌などはあまりにヘタ過ぎてこちらが恥ずかしくなるほどだ。彼のエゴイスティックな部分が文中よく垣間見られ、現地の人たちからも変人扱いを受けている。また、現地の人々を露骨に差別し、卑下するような気配も感じられる。まさに文化人類学のテキストのようではないか。

    未踏の地に光を灯す部分だけが彼の業績なのではない。

    戦前の日本人のもつ純粋な探究心や克己心、なにしろその不屈の闘志に感銘をうける。

  • 1/28読了

  • こんな坊さんが明治時代にいたとは。感動。アドベンチャー坊主、河口慧海。

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