倒壊する巨塔〈下〉―アルカイダと「9・11」への道

制作 : Lawrence Wright  平賀 秀明 
  • 白水社
4.12
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本棚登録 : 161
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560080207

作品紹介・あらすじ

『ニューヨーク・タイムズ』年間最優秀図書。ピュリツァー賞受賞作品。ビンラディン、ザワヒリ、FBI捜査官オニールの軌跡を丹念に追いかけて、その等身大の姿を描く。いよいよ未曾有の惨劇の当日、そして彼らが直面した運命とは?調査報道の頂点を示す傑作ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ビンラディン、ザワヒリ、FBI捜査官オニールの軌跡を丹念に追いかけて、等身大の姿を描く。徐々に惨劇に向かって収斂していく様には、まさに戦慄を覚える。ピュリツァー賞受賞、『ニューヨーク・タイムズ』年間最優秀図書。手嶋龍一氏推薦! 三千の命を奪ったテロルは何故起きてしまったのか。世界を震撼させた事件の真相はなお深い霧に隠れている。著者は米国への憎悪が自爆テロを育む「負の連鎖」を地道な調査報道と雄渾な筆遣いで明らかにした。

  • ○この本を一言で表すと?
     9・11事件に至るまでの背景を描き出した本


    ○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
    ・「9・11」事件やイスラム世界に触れた本は何冊か読んだことがありますが、アルカイダが発足する以前から、アルカイダが発足して9・11事件に至るまでの話はほとんど知らなかったことばかりで、また読む前に想定していた内容とも大きく違っていて、これまでとは違った視点から見ることができてよかったです。

    ・インタビューをベースに書かれているので、どこまで内容が正確かは不明な点もありますが、テーマとして著者のアプローチ以外でここまで深く掘り下げることはできなかっただろうなと思いました。

    ・著者はあまりイスラム教の教義や歴史に対する知識がないように思えました。イスラム教自体について触れている記述に違和感を感じました。ですが、それが宗教的な視点より俗な視点から書かれることに繋がり、良い点でもあるなと思いました。

    ・ビンラディンが金持ちの一族の者だということは知っていましたが、ビンラディンの父親が一労働者から叩き上げで建設業を立ち上げ、王族が金を使いまくって国が回らなくなるほどの借金漬けになった状態でも道路の受注を受けて成功させるなど、かなりサウジアラビアにとって重要な人物だったのだなと思いました。

    ・ソ連のアフガン侵攻に対抗するためにアメリカがイスラムの義勇兵をパキスタンに集め、訓練を施していたという話は別の本で知っていて、その本ではそれがビンラディンにテロリストとしてのスキルを身につけさせたと書かれていましたが、実態がかなり異なっていたということはこの本で初めて知りました。アフガンの兵に対して、イスラム義勇兵が対して役に立っておらず、逆に邪魔扱いされていたこと、成果を上げていないのにイスラム各国から資金を流入させ、その窓口となったことでビンラディンが地位を高めたことなど、初めて知ること尽くしでした。

    ・ビンラディンがアルカイダを率いた主要人物で、組織化や計画立案・実行までいろいろ指導していたものだと思っていましたが、どちらかといえばお坊ちゃんというのんびりした人物で、神輿としてかつぎあげられて周りが動いていたというのは初めて知りました。アルカイダという組織が厳格にイスラムの教義を守り、偶像崇拝に当たるようなポスター・写真などを認めなかった中で、ビンラディンの家族は割とゆるい環境にいたというのは意外でした。

    ・ビンラディンは資金繰りに困らずにずっと支援を受けて余裕を持っていたものだと思っていましたが、サウジ本国から縁を切られ、家族からも縁を切られてかなり困窮していた時代があったということを初めて知りました。そんな状態でも焦らずビンラディン自身が好きな質疎な生活を送り、やがてまた資金が集まるようになっていったというのは、なかなかの第人物かもしれないなと思いました。

    ・アルカイダはかなりうまく組織化され、組織としての経営とテロの実行で成功し続けているようなイメージを持っていましたが、設立後しばらくはハッタリばかりで他の団体が行ったテロも自分たちがやったと宣言したりしていたというのは初めて知りました。そんな中でもアルカイダ以外の団体のメンバーの訓練などを引き受け、影響力をつけていったというのは、かなり長期的な視野をもった組織運営だったのかもしれないなと思いました。

    ・この本で読む限り、アルカイダは理念が実態よりかなり先行し過ぎて妄想だけで終わるお粗末な宗教団体のように思えてきましたが、その理念がいざ行動を起こすとなった際に自爆テロなどをいくつも実行させ、アメリカ大使館や駆逐艦を攻撃するなど、かなり大きな成功を収めていくのは、かなり固まってコミットされた理念自体の強さのようなものを感じました。「謎の独立国家ソマリランド」という本で、一番治安が悪くて過激な場所はアルカイダ系の組織がいるところだと書かれていて、この本で書かれているしょぼいアルカイダとイメージが異なるなと思いましたが、理念にコミットしたメンバーが行動に移しだすと一気に原理主義として機能しだすのかなとも思いました。

    ・「9・11事件」が、まるで弟を使ってかなりあやしい選挙で当選したブッシュ大統領を守るようなタイミングで起きたことなどから「アメリカ政府の自作自演ではないか」という説があることを聞いたことがありますが、そういった陰謀説が出る所以をようやく理解できたように思いました。アルカイダのメンバーがアメリカに入って飛行訓練まで受けていることをCIAが把握していながら他の組織に情報を渡さず、FBIが1年半もアルカイダがアメリカで活動することを知ることができなかったことなど、防ぐチャンスがいくらでもあったのに見逃すことの原因が組織間のセクショナリズムにあったことよりも、政府の陰謀とした方がわかりやすくありがちだと思えそうだなと思いました。

    ・アルカイダやその他の団体を追う側のCIAやFBIの人物について書かれていて、この辺りの話はほとんどどれも初めて知ることばかりでした。一番主軸となって書かれているオニールが3人の愛人を作ってオニールの葬式で対面するまでバレなかったことなど、ゴシップネタも混じっていて面白かったです。オニールがFBIの捜査官としてアルカイダを追うためにかなり強くセクショナリズムの壁を打ち崩そうと動き、それを疎まれて出世コースから外され、一度テロに会った世界貿易センタービルの保安部門にスカウトされ、「9・11事件」の被害者となるという流れは、小説でもあまりなさそうなぐらいに演出が効いた流れだなと思いました。

    (上巻のレビューと同様)

  • 傑作ルポ、『倒壊する巨塔』下巻です。

    上巻と比べると、よりアメリカ側の内幕を炙り出していて、特にCIAとFBIのわけのわからない対抗意識や軋轢というものがクローズアップされます。米国の情報機関の仕事ぶりにはやっぱり圧倒される。一方で、特に主人公各のJ.オニール氏に関しては、その苛烈なキャラクターとともに、プライベートの恥部までもが暴かれています。

    アルカイダ側は冒頭からげんなりするほど悪辣な行動に出ます。"ザワヒリは預言者の言葉を転倒させ、いつでもどこでも人を殺せる下地を作った"(P.36)。次から次へと過激なテロ行為が発生、そして日本人にとっても大変な悲劇である、1997年エジプトの「ルクソール事件」も引き起こされます。"「ここはわれわれの国であり、特におまえらが、浮かれ騒いだり、楽しんだりする場所ではないのだと」"(P.106)。

    アメリカのノンフィクションの特徴ともいえるかもしれませんが、冗談めかした表現があちこち出てきておもしろい。スパイスが効いている感じがします。

    "要するに、ビンラディンはまだ指名手配がかかった男(ウォンテッド)ではなかったけれど、誰にも望まれない男(アンウォンテッド)ではあったわけだ"(P.40)。

    "あまり何度もくり返し門前払いを喰わされるので、「I-49」特捜班の面々は憂さ晴らしにピンク・フロイドのCD「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」を購入した。「機密にかかわる情報源やその獲得手法」がという慣用表現が出てくると、質問者は電話をつなぎっぱなしにして、CDプレーヤーの再生ボタンを押すのだった。"教育なんかいらない、思想の管理なんか必要ない……どうせおまえたちも壁のレンガのひとつだろう?"と。"(P.256)

    9.11同時多発テロは、わたしが大学に入るちょうど前年に起こりました。わたしは翌年から政治学を専攻し、4年間の楽園生活を送りつつ「イスラムの民主化」に関連する論文を書いて卒業しました。一連の出来事について、思うところはたくさんあります。われわれなど所詮、壁の中の一つのレンガに過ぎないけれど。

    ただ、とにかくこの本は単純に読んで楽しめる本です。少々値段は張りますが、ドキュメンタリー番組でも見るような気持ちで、手に取って頂きたいと思います。

  • 溢れる知識欲から生み出される丹念な取材に感動。仕事の方法には憧れすら抱く。読み応え十分。役所の縦割り弊害は世界共通。訳には一癖あり。誤植あり。

  • イスラム原理主義の思想から米同時多発テロに至るまでの経緯を描く。

  •  新たに、アルカイダにコミットメントした若者は、一般に考えられるような貧困により絶望の淵に立たされていたわけでも、社会の落伍者でもなかった。むしろ逆で、大部分は中流・上流階級の出身で、大学教育を受けていた。
     実際、多くのものが、欧米への留学を経験しており、自然科学もしくは工学専攻の傾向が強かった。ジハードに参加するまで、それほど宗教的でもなかったという。
     これは明らかに、オウムにコミットした優秀な若者たちと同じ構造だと思う。ある種の真理を追究する志のある人間、よくいえば、理想肌で、純粋な人間ほど、それが真であると思い込んだら、簡単に極端な思想に染まってしまいやすい。イスラムの純化思想というお題目に易々と見入られ、取り込まれてしまったのだ。

       あるいは、突拍子もないことのように思えるかもしれないが、そこに文学の必要性がある。世界には様々な物語があり、他の人間も自分と同じように自分とは異なる物語を生きる人間なのだという想像力を働かせる機能があれば、決して極端なまでの傾倒まで、突っ走らずに歯止めがかかったはずである。
     
      多くの人がいまだ整理できていない問題を語るのは難しいことであるが、究極の反コミュニケーションについてどう対処すべきか議論を重ねていく必要がある。

  • 911に向かって刻刻と事態は進行して行きます。国を揺るがすような事件が起こって5年でこんなに突っ込んだルポが出てくる所にアメリカの力を感じます。あと、アメリカの葬儀でよまれる弔辞は感動的なものが多いと思います。

  • “あの日”に向かって、事態は急速に進展する。

    登場人物の人生観、来歴、人となりの積み重ねで、話が進行していく。そこに、あらかじめのバイアスやカテゴライズは存在しない。だから事件そのものは、ハリウッドみたいに浮世離れしているけれど、それを演じる役者たちには、素直に入り込んでゆける。

  • 上巻に同じ。

  • 倒壊する巨塔。ずっと読みたかった本だが、近所の図書館で発見。同時多発テロがどのように計画されて、どのように実行されたのか?・・・が書かれているのかと思っていたが、書かれていたのはイスラム原理主義(過激派?)の歴史みたいな内容と、テロを受けた方のアメリカ側も、役所の縄張り争いばっかりで、まったく役立たずだったよ・・・といいう内容。

    特に上巻は、同時多発テロについてはあんまり書かれてません。
    アメリカ人が書いた本なので、あまりアラブ人に同情できるような内容ではなく、卑屈な人と過激性を内在する宗教がくっつくとろくなことがない・・・って感じ。

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