浦からマグノリアの庭へ

著者 :
  • 白水社
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本棚登録 : 43
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560080863

作品紹介・あらすじ

「文学の未来」を切り開く注目の作家が初めて縦横に語りつくす、待望のエッセー集。

感想・レビュー・書評

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  • 小野正嗣氏のエッセイ『浦からマグノリアへ』を読了。小説家ではある著者が書いたエッセイであり、書くという事の源泉に関していくつかの観点から触れたエッセイ集となっている。

     エッセイに寄ると著者が最初の小説を書いたのもオルレアンに居たときだそうで、自分が居た大分の生家近辺の集落の末尾に浦という一文字がついていた故故郷を浦とよび一報フランスオルレアンの庭にあったのがモクレン科のマグノリアの花ということで、著者の人生で二つの大事な時期を切り取った二つの言葉からこの本タイトルが出来ている。

     いくつかのエッセイの中で多くを割いているのが彼の人生の中で作家となるための人生の基盤となった生活経験であるフランス オルレアンにおいての大学教授クロードとその妻エレーヌと一緒に暮らした(暮らしたというより居候をさせてもらっていたというのが正しいが)日々に関する回想だ。クロードとエレーヌは博愛主義の見本のような方達で日本人である著者のみならず困っているアフリカからの移民や地元でも生活苦の老人まで幅広く助けている人素晴らしい夫婦で、彼達の人類愛あふれるエピソードが次々と語られていく。

     その次に多くページが割かれているのは書く事と読む事の関係に関してだ。著者は読む事は書く事にとっての大事なベースになるものだとしている。大江健三郎や中江健次を引っ張りだして彼達の著作に大きく関わっただろう先人が綴った作品に関しての分析を進めている。また自分自身でも普遍的な文学を書こうとした時に彼は世界の文学に触れるべきとして、ラテン・中国・ロシア・アメリカなどなどの様々な文学に触れる事を自分に課している。以前の日本文学といえば欧米文学および日本文学であったが、いまは世界の人たちの作品が手に入るので広くそれらに触れるべしとしている部分には共感を覚えた。翻訳物を毛嫌いしていたがこれからはちょっと色々な国の文学に触れようと思った、

     もう一つ面白かったのが歴史的作品の翻訳に関しての考察で、翻訳という物の難しさ、奥の深さをラブレーを訳した渡辺一夫氏と宮下志朗氏の翻訳を詳細に比較しながら語ってくれていてこのエッセイもかなりインパクトがあり自然と唸らされた。

     これらの教養触れる文学を志す人の綴ったエッセイと呼ぶのは少し軽く聞こえすぎるくらいの深い著者の考察を数々を読むBGMに選んだのがChick Coreaの"Piano inprovisation Vol .1" なまピアノのチックはいいなあ。
    https://www.youtube.com/watch?v=WKdYFAhHJOs

  • Ono’s writing is highly poetic and his sentence structures easy to translate. In this essay, Ono explains that he began to choose words more carefully after he translated Japanese poems into French with his mentor, Mouchard, who doesn’t know Japanese.
    “In explaining the meaning of each word and its sound effect to someone who doesn’t know the language, I learned that it’s important to pay more attention to the sound and the form of the word, like a poet,” Ono writes.

  • とある書店に併設してある喫茶店で本をよく読む。今までいろんな本をそこで読んでいるはずなのだが、とりわけその喫茶店と紐づけて思い出されるのが、小野正嗣さんの『森のはずれで』なのである。なぜなのかはわからないが…
    これは小野正嗣さんのエッセイ集。小野さんのものを読むのは久しぶりだ。

    経歴や文章で引用される書籍から見ても、どうしても堀江敏幸さんのようなエッセイを多少想像していたのだが、そこにはやはり作家なりの微妙な差異があると感じた。小野さんという人は、どうも人なつっこい人のような気がする。果敢に外に飛び出して、外の人間と接触するのが好きで、相手にも好かれるような人のような気がした。そして、それがいい方向に働いた文章たちがここにはある気がする。読んでいて非常に爽やかな気持ちになる。作家への素直な敬意が感じられるからだ。

    ボルヘスについての文などを起点に考えると、小野さんは「書く人」であるよりも「読む人」であるという基本スタンスのようだ。「書く」という行為が、膨大な「読む」という行為を礎にしているその在り方がとても興味深い。普通は自分の作品を「見て見て」となるような気もするのに、そういう感じがあまり感じられないのである。そういうスタンスで自身を文学の海とつなげようとしているように思われる。扱う作家も自分がよく読んでいたものがけっこうあり、そこもまた嬉しい。

    渡辺訳のラブレーと宮下訳のラブレーってそんなに違うのか… 渡辺訳を昔読んだのだが宮下訳でまた読んでみてもいいかもなあ。

  • 格調高い文章だが、ペダンティックではなく、しっとりとした印象は、さすがに小説を書く人だなと思った。本の装丁も内容と良く合っている。

  • これもタイトルにしびれる(笑)。「マグノリア」は和名「木蓮」、中国名「玉蘭」。どれも好き。

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著者プロフィール

1970年、大分県生まれ。小説家、仏語文学研究者。現在、立教大学文学部文学科文芸・思想専修教授、放送大学客員准教授。2001年、「水に埋もれる墓」で朝日新人文学賞、2002年、『にぎやかな湾に背負われた船』(朝日新聞出版)で三島由紀夫賞、2015年、『九年前の祈り』(講談社)で芥川龍之介賞受賞。エッセイ集に『浦からマグノリアの庭へ』(白水社)、訳書にV・S・ナイポール『ミゲル・ストリート』(小沢自然との共訳、岩波書店)、ポール・ニザン『アデン・アラビア』(河出書房新社)、アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』(新潮社)ほか多数。

「2018年 『ヨロコビ・ムカエル?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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