〈起業〉という幻想 ─ アメリカン・ドリームの現実

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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560081648

作品紹介・あらすじ

失業率やGDPをはじめ各種統計から浮かび上がる起業家大国アメリカ。

感想・レビュー・書評

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  • 偶像破壊的。身も蓋もない。みんなこれを読んで幻想を捨てたほうがいい。とくに創業支援関係者。

  • アメリカ人が書いたんだろうなぁと幾度となく感じた内容。データから事実を示し、世の中の起業イメージを覆していく。ほとんどの起業家は平凡で隣の家にいるおじさんのような存在だそうだ。
    これを見て起業をやめるようではだめだろう、起業前に自分を試す意味で読むべき本だと思う。

  • 起業するのは会社員が旗に会わないから

  • アメリカという国の起業というイメージを、データを使って崩した本。起業家として成功するために必要な本ではない。



    起業をしようとまでは考えていないが、いざするときがきたらいつでも始められるように、前知識としてイメージを持ちたくて買った。起業というとすごいことのように思うが、起業家の実態はそんなものじゃないんだよ、と教えてくれる。まぁ、俺はそもそもイメージがあまりなかったから、実態を知ることができたかなというところ。


    企業にまつわる一般的なプラスのイメージを、何の根拠もない事実だと示してくれる。本書の最後に本書内で示された結論を10章67箇条に渡って、並べてある。大まかに記すと以下の通り。


    【アメリカにおける一般的な起業というもの】

    ・起業は発展途上国で多く為される。特別にアメリカが多いわけではない。
    ・ほとんどの起業家は会社で働きたくない失業寸前の白人男性であり、自分の貯金のみをもって起業する。
    ・上記のような典型的なスタートアップ企業は5年以内に倒産する。


    本書は「起業」というイメージを壊すために書かれているため、基本的にネガティブな結論で終わっている。



    にもかかわらず、最後にちょろっとある作者の言葉がおもしろくて、「資本主義において起業家精神は必要だ」みたいなことが書いてあって、その根拠として「ベンチャー資本が創出した雇用は毎年1000万人に及ぶということを挙げているw

    ちなみに、「ベンチャー資本はスタートアップ企業にはほとんど出資していない」と本文中で出てきていたので、ベンチャー資本といいつつ、スタートアップしたばかりの起業に投資するわけもなく、有効で将来性の高い会社を的確に選別しているため、こういうデータになると考えられる。



    感覚的に起業は博打に近い。カジノにいくプレイヤがいっぱいいて、負けている人もいっぱいいる中で、「自分は勝ちたい」と考えてプレイする訳だが、普通にプレイしても大勝できるかは運に近い(実際は胴元にコントロールされる)。勝つために、複数人でカジノに入り、勝負をかける台のカウンティング役を置いて、勝てるタイミングにだけ勝負をして勝つ、とか。勝つために、カジノのスロットをクラックしておいて、トリプル7を出す、とか。カジノでゲームをせず、カジノの金庫から直接盗む、とか。

    という感じで、博打でいうと「勝つためのプランもなく博打をやるな」となるが、「博打」を「起業」に置き換えるとちょうどいい感じだね。




    起業家が読む本というよりは、実態を知りたい第3者が読む本だな。

  • タイトルは内容に非常に忠実。まさに起業という幻想を木っ端微塵にする本。但し、数多ある起業家が以下に夢破れるかという事例を扱ったものではなく、統計を基に一般にメディアに蔓延する「起業についての幻想」をシニカルに喝破していく。
    例えば米国は世界で一番チャレンジし易い国なので人口対比、起業数は多い、というレトリックが常識のように語られるが、これは事実ではない。実際には米国はOECD諸国の中で最低ランクだ。同じことはシリコンバレーにも言える。基本的に経済が成熟していない国、、州の失業率は高く、企業への意識が高まり易い、ということは考えてみれば当然である。
    学術書のような体裁をとっており参考文献も膨大だが、基本的に読み易く、トピックとしても眼を開かせるもので、支店を変えるのに大変役立った。また女性、黒人の起業家が少ないことを分析した部分はかなりタッチーながらも踏み込んだ分析をしている。これも一読の価値あり。

  • 自分の担当・四章のみ読了。
    確かに自分が抱いている起業家ってアップル社とかそんなイメージしかなかった。けれど、それはただ目立って印象強いだけで、それがすべてじゃない。
    ということを思い出させてくれた。
    アップル社みたいな新規ビジネスばかりだったら、と考えると面白いけれど。
    さらっと読めるので他の章も読んでおきたいので積読本に登録。

  • 起業の現実について、わかりやすくデータを使って、解説している。起業の現実は、多くのひとが人生の中で経験する、ごく平凡な活動に過ぎず、典型的な起業家は、偉大な会社や巨大な富を築く心理的な力を秘めた人間などではないということであった。
    起業の神話を取り除き、新たなプロセスが必要だと思った。

  • 起業については、皆声を揃えて、ポジティブな印象で語られます。起業に成功した人はヒーローだし、国も私たち個々人も、活発に起業が行われる社会にすべきだと声高に叫ぶ。そして、起業マインド停滞すると、それは悪いことという。もちろん、起業家たちは社会のイノベーションの先人を切る素晴らしい人だ。

     この著書は、そんな起業に関する幻想を思いっきり打ち砕く内容になっています。起業の国といえば、代名詞はアメリカです。著者のスコット・A・シェーンは、そんな「起業の国」アメリカンドリームが実態は、嘘っぱちであることを具体的なデータから論証します。

     事実として、アメリカにおいて多くの「起業家」は、自分が携わっていた仕事に関係ある業種で、地味に起業します。ビジネスアイデアは全くもってオリジナルなものではなく、今までやってきた仕事を、自分が中心になってやるだけ。お金も、多くを調達するわけではなく。自分の貯金が中心。当然社会一般で言われるイノベーションなどとは程遠い。また、起業の動機は、「他人に使われるのが嫌」というのが大きな理由という、「起業家」ならぬ「既業家」が中心です。

     さらに、そもそも「アメリカ」は起業大国でもなんでもありません。起業の比率でいえば、先進国よりも、発展途上国の方がはるかに高いというデータをこの著書は示しています。それもそのはず、先進国になると、雇われでも十分に高い給与を得ることができるし、仕事も安定しやすいので、起業のインセンティブが落ちる部分が多々あるからです。

     また、人間関係のネットワークを作るのがうまいと起業を始める可能性が上がるのかというと事実は全く異なるようで、常識に反する調査結果もふんだんに出ています。起業家の平均収入は会社員より低いとか、結構悲惨なデータも散見されるのですが、救いなのは、自営業社の幸福度です。
     自分で、仕事の主導権を持っている人たちは、仕事の満足感が高い。自分自信で働く満足感を得るのと同じ満足度を、他人の命令で同じ仕事を行う場合は、2.5倍の金銭で保証するくらいの必要があるようです。この感覚は、自営をやっている私も、肌で感じます。一度、起業をしてしまうと、なかなか会社員に戻れないとはよく言われます。

     本書で特に読んでて悲しくなってきたのは、起業で成功する人の傾向です。
    特に重要なのは、「どの業種を選んだか」で、これだけで、成功率が大きく変わってしまうという身も蓋もない結果に。1982年から、2002年の間で、ソフトウェア産業がアメリカの成長企業の上位500位に入る確率は、外食産業の608倍(!)だそうです。

    ・起業に学歴は関係ないと言われるが、大学に行ったほうがいい。
    ・一般の会社でちゃんと勤務して実務を身に着けたほうがいい。
    ・命令されるのが嫌などのネガティブな動機でなく、利益目的など明確な目標で事業を行う。

    などなど、救いようのない常識的な結論が目白押しで、起業の神話は完全に崩壊です。
    強く願えば、出自に関係なく成功を引き寄せてくれるほど、世の中は甘くないようです。

     結局、Facebookのマーク・ザッカーバーグや、Appleのスティーブ・ジョブズみたいな人は、例外中の例外で、起業家と言われる人たちの大多数は全く別物だよということ。あとそのあたりの事実関係は、あまりに面白みにかけるため、全然取り上げられて来なかったし、一部の得意な人が起業家の代表みたいに祭り上げられ続けているわけです。

     私も、世界征服がしたいとか、黄色いベンツで世界一周をしたいとかいう香ばしい野望があるわけでもなく、なんだか知らんうちに気がついたら起業していた部分がなきにしもあらずなので、この著書の中に描かれる語られることのなかった起業家たちのことは、「あーそうだよな」という部分がふんだんにあって、この著書は大変楽しめました。
     一方で、アメリカは起業大国ではないといいつつも、Appleや、Facebook、Amazon、Googleみたいに、先進的な起業がどんどん生まれていくのは、やっぱり無視できないわけです。ものすごく成長する起業を生み出す要因は別にあるわけで、それはそれできちんと分析すべきです。
     ただ、今のところ、制度としては「起業家」も「既業家」も一緒くたに扱われて、創業支援センター的なものや、創業資金の優遇制度みたいなものに、ごった煮で突っ込まれているので、それはどうなのよという気はしています。

     「起業」や「イノベーション」という言葉を聞くと無条件で礼賛したくなる人は、一度この著書を読んで、冷静になってみると次のステップが見えてくるかもしれません。

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