- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560082355
作品紹介・あらすじ
『ショアー』の証人の一人、ポーランド・レジスタンスの密使ヤン・カルスキが、1944年世界に向けて発信した奇跡的な証言。偽りの療養生活、秘密国家の地下活動、ワルシャワ・ゲットーや強制収容所への潜入、ルーズヴェルトとの会見までを描く。
感想・レビュー・書評
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祖国を守るために命を賭してナチスと戦った、ポーランドレジスタンスの人びとの勇気、強靭な意志、団結心、愛国心に圧倒される想いだ。それとは対照的に連合国の人々は長い間、ポーランド国内で繰り広げられているユダヤ人大量虐殺の状況を知っていながら、黙視していたのだ。ヤン・カルスキも自ら凄まじい拷問を受けながらも死を免れ、また強制収容所に潜入し、その惨状を目の当りにし、彼自身体験した真実を世界へ訴え続けるのだ。その姿に、『人間はこれほどに強く生きられるものか。』という崇高な想いを抱いた。
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執筆当時、ふがいない連合国のせいでソ連について書くことを許されなかったという事情を差し引いても壮絶な話だった。個人の視点に徹して書かれているが故に迫ってくるものがある。
ちなみに、この本はレジスタンスのメンバーであったカルスキの活動についての体験全体について書かれた本で、ナチスのユダヤ人収容所に潜入したことはその活動の一部である(最も強い印象を残す場面ではあるが)。「私はホロコーストを見た」という書名にはあまり感心しない。 -
「誠意と勇気。個人の冒険がそのまま世界の運命につながっている。どうしてこれがフィクションでないのだ?」池澤夏樹 『ショアー』の証人の一人、ポーランド・レジスタンスの密使ヤン・カルスキが、1944年世界に向けて発信した奇跡的な証言。偽りの療養生活、秘密国家の地下活動、ワルシャワ・ゲットーや強制収容所への潜入、ルーズヴェルトとの会見までを描く。
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フォルクスドイチェは徹底した軽蔑の対象となった。許しがたい裏切り者、そうでなければ情けない人間、人々からそのようにあしらわれた。圧倒的多数のポーランド住民は「ナチスドイツへの連帯を表明できる栄誉の機会」を与えられたのに、ドイツ人となるのを断固として拒否した。
まともに読むのはつらい描写が多い。 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、2階開架 請求記号:936//Ka68//2
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先に読んだ新書「ナチスと映画」にて、ホロコーストに関わった人々のインタビューによって構成された映画「ショア」について書かれた一文があった。具体的な中身はうろ覚えなのだが、要約すると『この映画は、みていると次第に「これははたして現実なのか。創作ではないのか」となってくる』といった内容だった。その時は、あまりピンとこなかったのだが、本作を読んだ後だと、その意図するところは解るような気がする。つまり、我々は「自分達が思っている以上にナチスを知っている」のだ。
本作は、作者のポーランドレジスタンスとしての活動を記録したノンフィクション作品だ。ナチスの電撃作戦により一瞬にして国家が崩壊、まさにその時、従軍していた作者は一旦ソ連の捕虜になるのだが、ドイツとの調停を利用して逃亡、ポーランドに帰国し、速やかにレジスタンスの一員となる。活動中、一度ゲシュタポに捕えられることになるが、命からがら救出され、その後はヨーロッパ各国で活動することになる――
さて、作者は、レジスタンス活動の一環としてユダヤ人ゲットーや強制収容所の現場を見ることになる。そこで触れるユダヤ人の迫害、そして、ナチスの暴挙というのは――我々にとって大変馴染みのある光景だったりする。とくにナチス像は「我々が知ってるいるナチス像」と相当近いものが、ある。
スパイを容赦なく痛めつける下劣なゲシュタポ。対して、金髪のスタイリッシュな上官。最初は知性あふれる態度を取っているのだが、ナチの教義を唱えるとともに次第に激昂し、最終的には容赦なく拷問する――
ゲットーで笑いながらユダヤ人を射殺していく若いナチ。強制収容所で流れ作業的にユダヤ人を列車に閉じ込め虐殺していくナチ――
これらのナチ像はあまりに我々にとってなじみ深い。なじみ深すぎる。つまり、本作は1944年アメリカにて刊行されたものであり――そして当時、大ベストセラーになったこともあり――もしかしたら、本作で描かれているナチス像というのが、戦後のナチス像の元になったのではないか――と感じる部分も、ある。もし、そうだとしたらこれほど見事な反ナチプロパガンダスパイ小説はないだろう。
しかし。
やはり。
ナチはナチ然として存在していたのではないか。
その紋章が、ショッカーの鷲のマークにサンプリングされたように、そもそもナチスというものは、冗談なのか本気なのか全く判別がつかない部分がある。と、同時に、ナチスの蛮性は、ある種の普遍性を持ったものに映ることもある。では、そもそも「蛮性」とは――