ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える

制作 : 谷口 功一  山田 高敬 
  • 白水社
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本棚登録 : 182
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560082492

作品紹介・あらすじ

「ゾンビの突発的発生は必ず起こる!」その日にどう備えるべきか?国際政治学の世界的権威で、ゾンビ研究学会のドレズナー先生が、対応策を分かりやすく提示。

感想・レビュー・書評

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  • 著者近影がいかす!

    ゾンビのアウトブレイクに国際政治はどのように対処するのか、といった一見ふざけたテーマですが、ちゃんとわかりやすい国際政治理論の入門書となっています。

    ゾンビはつまり、その発生は極めて稀だけどもひとたび発生するとグローバルに大惨事をもたらす脅威のこと。
    例えばリアルポリティーク、リベラル、ネオコン、社会構成主義などがゾンビ禍にいかに対処しようとするかを考えると、どれも単体では長所も欠点もある。国内政治や官僚主義、心理学的誤謬が効果的なゾンビ対策の足を引っ張ることも推測される。(本に書いてないけれど、めっちゃ震災後の政策の混乱とかぶって戦慄した…)

    だからまあ、ゾンビ(グローバルな脅威)には既存の国際政治理論である程度抑えられたとしても、それだけではとても不十分なので優秀な学生の皆さん一生懸命考えましょうねーというお話でした。

    良かった、ゾンビの発生=世界の滅亡じゃなくて(笑)

  • もしゾンビが襲ってきたらどうします?ぎゃあああああああ!!と叫んで逃げる?戦う?仲良くする??

    本書は、もしゾンビが襲ってきたら国際関係の諸理論ではそれにどう対応するのかという大変ふざけたことを真面目に検討した立派な国際政治学の本。こういった類の本は大好きなので面白く読んだ。
    というかホントはゾンビについて書きたいだけでしょ?というツッコミをしたいが、ともあれ立派な国際政治学の本です。



    検討される理論は、リアリズム(現実主義)。リベラリズム(自由主義)。ネオコン(新保守主義)。社会的構成主義。あとゾンビの対応を巡るアメリカ国内政治や官僚制の問題点。ゾンビが襲ってくる!ぎゃああああああぁ、というシュミレーションというか思考実験。

    なによりパワー(権力)を信じるリアリズムはたとえゾンビが襲ってきても他国と協調することには懐疑的で、ゾンビがいようがいまいが国際社会は、力と力の争いだと認識する。逆にリベラリスムは多国間協調でグローバルな仕組みを作ってゾンビに対処しようとする。

    わかりやすいのがネオコン。圧倒的軍事力でさっさとゾンビ殺せ!と。ただネオコンはゾンビの脅威と権威主義国家からの脅威を混同してしまうので効果的な対応は難しいと考えられる。社会構成主義だと、ゾンビって人間社会に同化できるんじゃね?と捉えられる。

    アメリカ国内に焦点をあてているけど、一番面白いと思うのが官僚制と国内政治について。

    ゾンビが襲ってきた初めのうちは戦う大統領や政府・軍は国民から高い支持が得られる。でも長期化するとゾンビ疲れといわれる厭戦気分が国内に蔓延する。ゾンビに噛まれてゾンビになった家族を守ろうとする遺族会みたいなものができたり、ゾンビで儲けようとする製薬会社や軍需産業が現れる。こういった利益集団が政府のゾンビ征伐を邪魔したり有効な政策に圧力をかけたりするようになり結局うまくいかない。国内政治で効果的な対策が取れないと、多国間で協調などできず、結局国際社会はゾンビに対して有効な手立てがとれない。

    そして官僚制。日本だけの話ではない。各省庁がおのれの権限にしがみついたり縄張り争いで、増殖するゾンビにうまく対処できない。ただ官僚組織というものは失敗から学び、政策の革新につなげ効率的に機能するようになる。でも、その頃には世論の厭戦気分や利益集団が騒ぎ出して行政府は効果的にゾンビ退治ができない。官僚制がうまく機能し始めるころに国内政治はモメ始め機能麻痺に陥るという最悪の組み合わせ。
    で、どっちにしろ国内で意思統一できないなら多国間協調なんてとても無理で、結局ゾンビ退治は効果的にできないんだよね、というのがドレズナーの理論仮説。この点が非常に面白かった。


    しかしどうでもいいことだが、アメリカにはゾンビ研究学会になるものがあるんだね。「ゾンビに関する知識の普及や芸術・科学分野でのゾンビに関する学術的研究の興隆を目的とする」団体だそうで、会員になるためには、会の定めるTシャツを団体のウェブサイト経由で購入すれば付随して会員証(終身)が送られてくる。(んだってさ)

  • 大真面目にふざけた逸品。

    ゲーム理論でしばしば用いられる「繰り返しゲーム」では協調が起こりやすい。またケインズが論じるように「結局のところ我々はみな死ぬのである」。ここから「死なないゾンビは団結し、人間はバラバラに孤立する危機」に直面する。笑えるが笑えない!映画でも人間は必ず仲間割れ・抜け駆けなどのチームワークの危機から何人か死ぬし、ゾンビはひたすら集団で襲い掛かってくる(ゾンビの共食いはないらしい)

    小説「ワールド・ウォー・ゼット」では、統合参謀本部の議長が軍事的な効率を最大化させるために「資源/殺傷数比率」なる指標を開発する。これが現場での創意工夫を生み出し「信じられないくらいにコストパフォーマンスの高い武器を発明し始めた」。まるでマネジメント論。適切な数値目標の設定が現場を動かす!(笑)

    最高だったのは「素早いゾンビに関する考察」。動きの速いゾンビはとんでもなく恐ろしそうだが、
    ・低速ゾンビ→発症までの時間が長い・低速の拡散→政府の対応が遅くなる→最初の発症がより大規模な拡散をもたらす→…→ゾンビ王国のグローバル化

    ・高速ゾンビ→瞬時の発症による拡散→国境を越えて拡散→…→ゾンビ王国のグローバル化

    したがって速度は拡散に対して因果関係をもたらさない。どっちでもグローバル化する(笑)

    なお私はゾンビ映画を見たことがないし(初代バイオハザードは好きだった)、ホラー映画は一切見ない。それでも面白い本だった!

  • 国際関係諸理論はゾンビ禍という超常現象にどのように向き合うか。大の学者が真面目に考察。こういう固くないテーマを用いての結論は、学生諸君は脳みそ喰われる前に脳みそ使え!ってことで、でも本人も楽しんでることがうかがえて面白かった。
    リアリズムやリベラリズムなどの理論はどういうスタンスで対応するか、ということとか、入門にはぴったり。殊更ゾンビ好きじゃなくても楽しめると思います。現に自分は最高に楽しめました。こういう知的な妄想をさせてくれる本がもっとあればいいのに。

    これは行政学の分野になると思うんだけど、標準作業手続(SOP)の弊害の議論は個人的に興味を持った。行政学も学びなおさねば。
    国際関係論は本格的に学んだことないんだけど、政治的な立場とかだけではなくて、心理学的影響とか官僚主義の問題、国内政治の動きとかも考えあわせて結論を導いているのを見ると、かなり学際的なものなんだな。国際政治学との違いがよくわかってないんだけど。大学で授業とれば良かったと後悔。この分野の本はこれからも読んでいこう。
    こういう妄想シミュレーションを学術的専門知識をフル活用して真面目にやってくれる本を待ってたんだ!学術書風の文章の端々から滲み出る並々ならぬゾンビ愛には若干「えぇ…」ってなるけど、そういうのも含めて本当に楽しい本でした。

  • 題名は直訳すると『国際政治理論とゾンビ』で、学術書のパロディという体裁が消えているのが残念。内容は『WORLD WAR Z』に描かれたシナリオも多いが、ゾンビ擁護NGOの出現を予想している辺りに新鮮味を感じた。

  • 国際政治理論を一般人というか、私みたいなタイトルだけで読み始めてしまうような人間にも興味を惹かせて何とか理解させてくれる本。
    ゾンビに擬えてるけれど中身は普通に国際政治理論。
    リアリストとか、ネオコン、リベラル、官僚主義なんかがどのような対応をとるのか、とかその利点と欠点、そして世界がどうなるかもしれないのか。

    このゾンビは疫病、パンデミック、そう言ったことに割と簡単に置き換えられるし、
    ゾンビへの対策は自然災害への対処に似ている、とか。
    広義で気象異常などにそれぞれの国家がどのように対応しているかといった協調性のなさへの警告とか。
    深く考えると深いけれど。

    そこまで考えずにゾンビが発生した時に国とかが取るだろう行動理念の理解に役立つ本。

  • タイトルの通り、国際政治理論でどのようにゾンビに対応するかということをまじめに書いた話。
    理論についてもう少し詳しければ、もっと楽しめたかもしれませんが、逆にこれをとっかかりに調べてみても面白いかもしれませんね。
    実質半分が本題で、残りの半分が訳者解説と注釈。
    分量的にちょっとお高い気がしますな。(^^;

  • エンタメ的な本かと思いきや、まじめに国際政治的観点からゾンビが発生した場合にどう対処するかの論文(?)。国際政治論がよくわかっていないので腑に落ちない。ただ、ゾンビが発生した場合、国際機関や各国の安全保障当局は機関間の「押し合いへし合い」などで適切な対処ができないという結論が興味深い。ゾンビを身近な災厄(原発とか)にしても十分に当てはまる。とはいえ、ゾンビに対する備えと言われると・・・。取り敢えずは、本書で絶賛している「ワールドウォーZ」の映画を見てみようかと。

  • いわゆるゾンビ系エンターティメント本ではありません。
    気鋭の国際政治学者が、もし、本当にゾンビが襲ってきたとしたら、既存の国際政治学(国際関係論)の諸理論が、どのように対応するか、真面目に検討した論文(?)。
    まず、複数の映画等から、ゾンビの定義が正確になされ、それがコミュニティ、政府、そして多国間に与えるストレスによってどのように反応するかを考える。
    なかなか面白く読めますが、国際関係論???という場合は、本書を読む前に国際関係論の入門書を読んでから本書を読まれたほうが面白いと思います。

  • ゾンビが襲来したという外生的ショックに対し、国際政治論の観点からどのような対応を行うと予想されるか、どう対応すべきかを論じた一冊。

    巻末の訳者によるゾンビ研究が50ページもあり、内容もゾンビ愛に溢れていて、本編よりも面白い。
    ゾンビ好きは一読だと思う。

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