ミシェル・セール: 普遍学からアクター・ネットワークまで

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560083352

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  • ミッシェル・セールの思想について、その全体像を把握することのできる本である。

    最初にセールの伝記がある。南仏アジャンに生まれたセールは、船乗りや砕石工場の経営をしていた父のもとに生まれ、1936年にはスペイン内乱による難民の世話をした。ナチス・ドイツの占領下を経験し、二二歳のとき、エコール・ノルマルへ入る。ライプニッツ論で学位をとり、現在まで活躍している哲学者である。弟子のラトゥールや、人類学などにも影響を受けた人物は多い。

    第一部は、「ヘルメス」(著作群)の『生成』と『自然契約』を論じている。基本的にセールはライプニッツと同様に多元論で、「あるがままの多」を探求する思想家である。「イクノグラフィ」(見取り図)は神の視点で一つであるが、「スケノグラフィ」(パースペクティブからの眺望図)は無限にある。こうしたスケノグラフィーはネットワークを形成し、それらの間を繋ぐのが、準・客体(ラグビーボールの譬喩)である。暴力から秩序が生まれるのが、あるがままの姿ではあり、富や権力もそうした暴力の変形ではあるのだが、非暴力を実践するには、「場」をみつけることであるとする。また、人間による自然の搾取(これも見えない暴力)を制限し、自然と人間が対等な立場で契約をすることが必要だとする。

    第二部は、エピステモロジー(科学基礎論)で、ライプニッツの思想とセールの思想の連係がしめされている。19世紀・20世紀までの科学が、流体を意識して、電磁気学など、その影響を探るという科学であったが、情報革命以後、「固体」とそれをつくるネットワーク(モノ対モノ)をさぐる方向にかわり、思弁的実在論(人間の心を介さない実在論)がでてくる。

    第三部は、人類学である。追放・腐敗(交換)・疎外・寄食・暴力などが論じられている。

    終章は、ライプニッツの結合法則についてである。

    むずかしいが、おもしろそうな哲学者で、セールの著作を読みたくなる本である。準客体については、中国にもこうした例はあるかもしれない。

  • ポスト・ポスト構造主義!普遍学にアクター・ネットワーク。何だか面白そう!!

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    「自然と学術をネットワークするセールの哲学

    ライプニッツ思想から、ポスト・ポスト構造主義へ! B・ラトゥール、P・レヴィ、G・ハーマン……哲学や人類学の新知性を胎動した、しなやかで強靭なセールの哲学の根源に迫る。 」

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著者プロフィール

東洋大学教授。井上円了哲学センター理事。専門は哲学、情報創造論。著書に『実在への殺到』(水声社、2017年)、『ミシェル・セール 普遍学からアクター・ネットワークまで』(白水社、2013年)、『セール、創造のモナド ライプニッツから西田まで』(冬弓舎、2004年)、共著に『今日のアニミズム』(奥野克巳との共著、2021年)、訳書にミシェル・セール『作家、学者、哲学者は世界を旅する』(水声社、2016年)、G.W.ライプニッツ『ライプニッツ著作集第Ⅱ期 哲学書簡 知の綺羅星たちとの交歓』(共訳、工作舎、2015年)などがある。

「2023年 『空海論/仏教論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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