革命と反動の図像学: 一八四八年、メディアと風景

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560083451

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  • 【工藤庸子・選】

  • 近代フランスの「思想と感性の輪郭」を浮き彫りにすることを目指して、二月革命(1848年)をめぐる一連の文化現象が論述の対象とされている。全体は三部構成であり、第一部「メディアと大衆」では、新聞小説というフランスでは19世紀特有の現象を取り扱いながら、このジャンルの台頭に伴う読者と作者の関係の変化、同時代人による新聞小説の蔑視などが論じられる。とりわけ、19世紀に顕在化してきた産業革命に伴う社会問題を読者に実感させるにあたり新聞小説が果たした役割が強調されている。第二部「風景と音の表象」では、日常生活で生み出される音声を「サウンドスケープ」という概念のもとで風景に組み込みつつ、山に対するイメージの転換、小市民的生活の象徴としての庭、近代性を象徴する空間としてのパリなどが論述の対象となる。また日常生活の中で出る音声がいかに人間行動に影響を与えたのかについて、とりわけ農村社会における教会の鐘の音の役割に着目しつつ論じられる。第三部「革命と反動」では、ミシュレ『フランス革命史』とフロベール『感情教育』が主な論述対象となる。ミシュレは『フランス革命史』において「民衆」を革命の主人公に位置づけた論述を展開した。ミシュレのこのプロジェクトには、二月革命期から第二帝政期にかけてのフランスの動向に対する問題意識のもとで、現在の起源として過去を再解釈しようとする試みが刻印されている。最後に主題となるのは二月革命である。トクヴィルやプルードン、ユゴーなど様々な著作家たちの二月革命イメージを扱いながら、二月革命を「茶番」と形容したマルクスと同様の理解が陣営の違いを超えて広く共有されていたことが示される。その一方で、フロベール『感情教育』の物語構成や生成研究などを通じて、彼が社会主義に絶対主義的・権威主義的・カトリシズム的要素を見、そのうえで社会主義を「〔1789年〕革命の敵」と捉えたことが示される。歴史学における近年の研究潮流を踏まえて、近代フランスの「文化と感性と政治」が相互に結びつきながら展開されていく様子が克明に描写されている。

  • 19世紀フランスを主軸に、
    筆者がしたためた各種論考を一冊にまとめたもの。
    内容が難しく、特に
    二月革命時の作家、歴史家について触れる第三部は
    基礎知識の薄い私はほとんどついてゆけなかった。
    一方、第一部の新聞、ジャーナリズム、
    メディアに関して書かれた内容はわかりやすく、興味深い。
    いずれにせよ19世紀フランスの
    基本的な歴史的知識を得た上で触れたかった一冊。

  • 「19世紀の民衆は「英雄」か「蛮族」か」評者:水野和夫(日本大学教授・経済学) | BOOK.asahi.com
    http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2014041300004.html

    白水社のPR
    http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08345

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著者プロフィール

1956年生まれ。東京大学大学院博士課程中退、パリ・ソルボンヌ大学文学博士。現在、慶應義塾大学教授。専門は近代フランスの文学と文化史。著書に『ゾラと近代フランス』『革命と反動の図像学』(以上、白水社)、『写真家ナダール』『愛の情景』『身体の文化史』(以上、中央公論新社)、『犯罪者の自伝を読む』(平凡社新書)、『パリとセーヌ川』(中公新書)、『近代フランスの誘惑』(慶應義塾大学出版会)、『「感情教育」歴史・パリ・恋愛』(みすず書房)、『歴史と表象』(新曜社)など、編著に『世界文学へのいざない』(新曜社)、訳書にユルスナール『北の古文書』(白水社)、アラン・コルバン監修『身体の歴史 II』(監訳、藤原書店)、フローベール『紋切型辞典』(岩波文庫)、ルジュンヌ『フランスの自伝』(法政大学出版局)など多数。

「2021年 『歴史をどう語るか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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