沈黙の山嶺(上) 第一次世界大戦とマロリーのエヴェレスト

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560084335

作品紹介・あらすじ

夢枕獏氏推薦! ヒマラヤ登攀史最大の謎に迫る
  英国の登山家ジョージ・マロリーは一九二四年六月八日、アンドリュー・アーヴィンとともにエヴェレストの山頂をめざし最終キャンプを出発したが、頂上付近で目撃されたのを最後に消息を絶った。果たしてマロリーは登頂したのか――。
 十九世紀の植民地主義が終焉を迎え、大戦へと突き進んで甚大な被害を出した英国。その威信回復の象徴となったのがエヴェレスト初登頂の夢だった。一九二一〜二四年の間に三回にわたって行なわれた遠征では、参加した二六名の隊員のうち戦争経験者は二〇名にのぼった。
 本書は、血みどろの塹壕戦をからくも生き抜き、世界最高峰の頂をめざして命を懸けたマロリーら元兵士たちの生きざまを通して「時代」に息を吹き込んだ歴史ノンフィクションである。気鋭の人類学者である著者は、未発表の手紙や日記のほか各地に遍在する膨大な資料を渉猟し、執筆に一〇年をかけて彼らの死生観にまで迫る。
 兵士として隊員として、常に死と隣り合わせだった若者たちの「生」を描いた傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 2023/7/29購入
    2024/1/2読了

  • 執筆期間10年(翻訳に2年)圧巻の傑作
    様々な人の戦争と日常が交錯する、映画「ディア・ハンター」みたいな構成が、物語を全く飽きさせなることなく読ませてくれる

    ・第一次世界大戦における西部戦線の実態
    ・イギリス・インド・チベット外交史の人間臭さ、帝国主義的傲慢さ
    ・都合3回に渡った、エベレスト登山隊の詳細な、詳細すぎる活動記録
    ・登山隊に加わったメンバーのみならず、多数の関係者の日記や書簡を隅々まで徹底的に渉猟して調査し、事実関係や証言の誤謬、勘違い思い込みなどを考察し、当時生きていた人々(主にイギリス人ジェントルマン)が、何を考え感じていたのか、迫真に迫る再現性を実現
    ・結局、ジョージ・マロリーは、どうなったのか?おそらく、これしかないという結論を提示
    ・登山隊に参加したメンバーのそれぞれの人となりが面白すぎる。凄すぎる。全く飽きさせない。これが本書の最大の魅力。

    などなど...、とても言葉では言い尽くせないほど、質と量に圧倒されまくってしまった作品

  • 第一次世界大戦の惨状と戦場から生きて還ってきた者が命を賭してエヴェレストに挑む姿とチベットに横たわる美しさと人を容易に寄せ付けない厳しさを持った山々、高原を彩る植物の美しさのコントラストが見事である。当然初めから登頂できるはずもなく、何度目かの挑戦でやっと山頂にたどり着くのであろうが、果たしてこの著書の結末はどうなるのであろうか。

  • 世代、階級、そして植民地主義の終焉という形で国家(英国)をものみ込んでいった第一次大戦後の時代の空気を、英雄マロリーら、エヴェレスト初登頂に賭けた若者たちの姿を通して描いた大作。

  • まずは400ページ近い上巻を読了(笑) 
    その半分は、戦争の話。いろいろな山岳本を読まれている人には、いままでの山岳小説やドキュメント本とはかなり違った印象があるはずです。
    マロリーやアーヴィンの名前は、知っている人も多いでしょう。この二人を主人公として映画もたくさんあります。ですが、なぜ、イギリスがあんなにも必至になって、エベレスト登頂に執着したのか。上巻の半分を読んだあたりから、なるほどと思います。
     エベレストがなぜエベレストか、教師だったマロリーがなぜ登頂したいとおもったのか、イギリスやインドネパール・・多くの国や人を巻き込みながら、イギリスという国が欲したものはなんだったのか。
    著者ウェイド・デイヴィスは民族植物学者です。彼がなぜマロリーやアーヴィンを題材とし、第一次世界大戦からの視点でこの二人の行方を書いたのか。
    下巻が楽しみです。

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著者プロフィール

1953年カナダのブリティッシュ・コロンビア州生まれ。処女作The Serpent and the Rainbow (1985)(『蛇と虹』草思社)で脚光を浴びる。2012年、本書Into the Silence (2011)で、優れたノンフィクションに与えられるサミュエル・ジョンソン賞を受賞。ナショナルジオグラフィック協会専属探検家を経て、現在はブリティッシュ・コロンビア大学人類学部教授。

「2015年 『沈黙の山嶺(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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