エウロペアナ: 二〇世紀史概説 (エクス・リブリス)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560090350

感想・レビュー・書評

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  • 期待に反して空虚な一冊。全編不定人称文で書かれたような、歴史の教科書の形式を模した本で、一作毎に辞書形式・クロスワード、前後から読めるなど工夫を凝らしたミロラド・パウ゛ィチの如く奇をてらったものだったが、内容は薄かった。

  • 表情とタイトルで良いなと思い手にとったが故に内容が少し残念だった。20世紀ヨーロッパを焦点にあてた教科書のような内容なのだが悪い意味で「教科書」でしかなく文を読んでいてもあまり心を揺さぶられない。
    せめて写真やスケッチのような図説があればこの本においては良かったのかもしれない。

  • 歴史概説と書いてあるけれど、歴史とはどう捉えるべきか、どう残していくべきかという問いを作者から問いかけられているように感じた。
    第一次世界大戦、第二次世界大戦の教科書に載っているようなできごとを通して歴史を考えることもできるし、人々の日常生活の移り変わり(電気や家電生活習慣)から考えることもできる。戦争を博物館で記録するのか、慰霊碑などのモニュメントで記憶するのか。正解はひとつじゃないし、東西で翻弄されたチェコ生まれで、フランスに移り住んだ作者独特のコロコロ変わる視点がある種の答えにも思える。

  • 第一次大戦からのヨーロッパ史を噂を取り混ぜて「コラージュ的に」語る作品。東欧的アヴァンギャルドのコラージュを歴史風の記述に当てはめて第一次大戦からのヨーロッパの不安定さが伝わる実験的作品だと思う。

  • 66章からなる構成がおもしろい。通常の歴史の本とは違った斬新なもので、脳に入ってくる理解も違う。第1次、第2次世界大戦の部分と、その間の狂乱の文化の表現はストンと落ちてくる。チェコの人らしい?皮肉まじりのユーモアも楽しい。

    1938年に菜膣ドイツによるオーストリア併合があった日(3/12)に読み終えた。ロシアのウクライナ侵攻のニュースが進行中だ。近代以降のヨーロッパで起きたことは、人類全体にも影響を与えてきた。BBCを見ていてもヨーロッパ全体がとても深刻にとらえているかが伝わってくる。著者がいま起きていることをどう論じるか聴いてみたくなった。

    P132-133に出てくる部分が印象的だ。終わりの方にこの箇所をもってきた著者の思惑は推し量るしかないが、私には総括に見えた。
    ・ある哲学者 世界秩序は言説のメカニズムに対応している。記号そのものは元来意味の担い手であるが、私たちにはそれがどのような意味なのかはわからないという。

    ・別の哲学者 言説と世界を構成する記号には意味が欠落しており、意味の不在によって主体も実態も失われ、歴史はただ連続する携帯のない動きにすぎなくなり、もはや何かを表明することもなく、すべてはフィクションで、シミュレーションであるという。さらに、人文主義が衰退したのはある意味で論理的なことだという。

    ある数学者 現実とは幻想にすぎず、実際にあるの人間の数学的構築物でしかなく、脳は他の次元からの周波数を解釈するのだが、それは空間と時間を超越するのであり、脳は宇宙を描き出すホログラムであるが、宇宙もまたホログラムなのだという。

  • スクラップブックのような本だった。
    論文から新聞記事や雑誌の切り抜き、手書きのメモがランダムに貼り付けてあるような。
    内容もライトからシビアまで軽重さまざまなものが隣り合っている、そんなスクラップブック。
    それを文章でやっているのだから凄まじい。
    ヨーロッパの20世紀史概説という副題なのに随分薄いんだなと不思議に思いながら読んだが、確かに。
    色々なものが絡まり合うことで人間が作った時間の重厚さと軽薄さを同時に感じた。
    繰り返しも効果的。
    いや凄いな…。

  • ヒストリー・ストーリー。「歴史」というのは事実ではなく後世のとある人の解釈によって変わるもの。事実とは…?と考える。
    本自体はとてもユーモラス!だからこそ解釈とは恐ろしいな、とも感じる一冊。

  • 20世紀に起こったさまざまな事象を歴史的事件からパーソナルな出来事まで数珠つなぎに叙述。所々で時系列を錯綜させ、単線的な時間軸と歴史観に一石を投じている。

  • 不思議な本。歴史書のような小説のような。人の記憶のウネウネが、そのまま本になった感じ。妙にはっきりしているところやぼんやりしているところ、繰り返しがあって、振り回される。また読んでみたい。

  • 副題にあるように20世紀、ヨーロッパを中心に振り返った歴史書のような小説。
    ただ、独特な語り。20世紀の出来事を単に振り返るのではなく、語る順番が前後し、時には何度も繰り返し同じことがでてきたり、固有名詞と実話と虚構が入り交じる。その文体に惹かれる。語りの構造、全体の構成に惹かれる。

    特定の人物名が一切出てこず、不思議な感覚。

    そして、この物語を語る語り手の存在も不思議。

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著者プロフィール

1957年、チェコ人の父とイタリア系フランス人の母の間にプラハで生まれる。1984年フランスに渡り、チェスの講師として働いたのち、雑誌編集や辞書の編纂に携わりながらチェコ語で創作を開始。2001年、『エウロペアナ』でデビュー。他にチェコ語/フランス語の双方向の翻訳を多数手がけている。パリ在住。

「2014年 『エウロペアナ 二〇世紀史概説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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