ピンポン (エクス・リブリス)

制作 : 斎藤 真理子 
  • 白水社
3.45
  • (7)
  • (13)
  • (10)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 205
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560090510

作品紹介・あらすじ

人類史は卓球史だ! 松田青子氏推薦!
 僕は毎日、中学校でいじめられている。あだ名は「釘」。スプーン曲げができる「モアイ」もいっしょにいじめられている。僕らは原っぱのど真ん中にあった卓球台で卓球をするようになる。僕らの気持ちは軽くなる。いじめにあうってことはさ……「のけもの」じゃなくて、「なきもの」にされてるってことなんだ。みんなから? ううん、人類にだよ。僕らは卓球用品店主「セクラテン」に卓球史を伝授してもらう。卓球は戦争だったんだよ。世界はいつもジュースポイントなんだ。まだ勝負はついていないんだ、この世界は。空から、ハレー彗星ではなく、巨大なピンポン球が下降してきた。それが原っぱに着床すると大地は激震し、地球が巨大な卓球界になってしまう。そして、スキナー・ボックスで育成された「ネズミ」と「鳥」との試合の勝利者に、人類をインストールしたままにしておくのか、アンインストールするのか、選択権があるという……。
 超絶独白ラリーの展開、脳内スマッシュの炸裂、変幻自在の過剰な物語。『カステラ』(第1回日本翻訳大賞受賞)で熱い支持を獲得した、韓国を代表する作家が猛打する傑作長篇! 作家自筆の挿画収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 韓国の気鋭の作家。

    通称「釘」と通称「モアイ」は中学生。別に友達というわけでもないが、2人セットで、いじめっ子「チス」が率いるグループに壮絶ないじめを受けている。
    そんな2人はある時見つけた原っぱの卓球台で卓球をするようになる。
    「モアイ」は「ハレー彗星を待ち望む会」というクラブに入っているという。メンバーはみんな、痛い目にあって世界が終わればよいと思っている人たちだ。
    「釘」も「モアイ」も、「ハレー彗星」のメンバーも、結局のところ、「人類」から「なきもの」のように扱われている同士なのだ。

    冒頭のいじめのシーンは、かなりリアルでなかなかつらいのだが、過酷な中学生の日常を、作者は独特のテンポのある文体で、リズミカルに綴っていく。
    「釘」の脳内妄想ダダ漏れのような冗舌な語りは、壮絶ないじめすらどこかシュールなものにしていく。
    しかし、シュールなのは文体だけではない。
    「ハレー彗星」の会や卓球用品店主が登場するあたりから、SFめいたぶっ飛んだ展開が続き、読者は渦潮に巻き込まれるように物語に呑み込まれてゆく。

    絶望しているものたちの願いをよそに、ハレー彗星は一向に降ってこない。
    だがその代わり、巨大なピンポン球が地球に降りてくる。卓球界と化した地球上では、「人類」をアンインストールする(排除する)か、インストールしたままにする(存続させる)かを決する試合が行われる。
    いじめられっ子vs「人類」代表。
    「釘」と「モアイ」が勝てば、「人類」をアンインストールするかどうかの選択権が彼らに与えられる。
    試合の行方やいかに。

    世界のどこかで、誰かが本当に困っている。でも人類の大多数はまったくそんなこと気にもせず、何事もない日々を送る。
    あるときはAが優勢、あるときはBが押す。世は永遠にジュースポイントだ。

    この不条理は変わらないのか? ピンポンしながら、考えてみる・・・?


  • パク・ミンギュ作品初読

    いじめられっ子の釘とモアイ
    圧倒的弱者の視点で進む
    多数派として生きていく人達に黙殺される
    暴力いじめ
    多数派になれない二人の前に現れた卓球台
    それを通して自己意識を持つことを知る二人
    彼らに及ぶ理不尽が現代社会の現実の歪みと重なる

    いじめっ子チスの失踪
    ハレー彗星を待つ会への入会
    卓球へと導いてくれたセクラテンのと出会い
    奇想天外に進むストーリー
    そして、釘とモアイは人類のアンインストールの選択権を賭ける卓球勝負に選ばれる人類代表となる

    人類が作った現代社会が持つ矛盾、欺瞞に対する皮肉
    人間の存在を
    疾走感とユーモア、哲学を交えて書くパク氏の筆致は見事

    何よりあのラストは私には衝撃だった
    暗くなるテーマのはずが感傷を揺さぶる書き方は一切なく釘のモアイは自己に没入しすぎない格好良さのあるいじめられっ子

    パク氏のとても豊かな想像力で描いた世界は今まで読んだことの無いリズムをもつ文体と物語だった
    韓国作家の奥深さを知る素晴らしい本

  • 面白い。文章がすっきりしていて、読みやすい。いじめの描写などもあるが、さわやかに感じる。

  • 文学

  • 不思議な世界観、としか言いようがない。
    ただ、読み続けることを邪魔しない文章だったので、最後まで読むことが出来た。
    不条理な中に、共感出来るフレーズが紛れ込んでいて、絶妙な距離感を保っている物語。

  •  毎日、いじめにあっている韓国の中学生「釘」こと僕は、同じようにいじめられている「モアイ」と原っぱにある卓球台を見つけ、自然と卓球をすることになる。「釘」は理由もわからず毎日いじめられ卓球のラリーをしながら、いじめについて、人類について、自分を取り巻くこの世界について、ぐるぐると考えていく。

     やがてこの小説のクライマックスである、宿命的な卓球の試合をすることになるのだが、このハチャメチャな展開よりも、彼らが最後に下した判断に作者のメッセージが込められている気がする。きれいごとが好きな日本では、逆の選択が好まれたかもしれない。
     それにしても裏表紙に、ほぼすべてのストーリーがダイジェストで書いてあるのはどういうつもりなのか。これから読む人は、裏表紙は読まない方がいい。

  • 日々激しいいじめを受ける中学生の主人公。彼には、自らの生きる意味が見いだせないだけでなく、他の人々(すなわち「人類」)の生きている意味も見いだせない。強烈なニヒリズム。けれど時折自らの身体から流れる「涙」。どうしようもないこの世界を眺める主人公の独白が続く。そこに主人公とセットでいじめられている中学生が語る様々な物語がはさみこまれ、果ては奇想天外な状況の中で、二人の中学生は、よくわからない自分を生きることを決意する。過剰で疾走感のある文体で一気に読ませる。訳文も秀逸。

  • <図書館の所在、貸出状況はこちらから確認できます>
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=329761

  • 翻訳文学であるのに、どうにもそうとは思えない、とにかくすぐになじむのである。これは訳者の力量か、と思ったが『殺人者の記憶法』(別の訳者)を読んだときにも同じような感覚だったので、そればかりが理由とは言えまい(とはいえ、両者ともさすが翻訳大賞受賞者、みごとな訳文)。

    中学生。
    もっとも難しい年ごろであるのは知られることで、主人公の「釘」の頭のなかもたいへん哲学的で忙しい。しかし、その哲学くささがにじむのか、弱々しい体格と性格を見抜かれたこともあって、ひどいいじめを受ける。そ
    のいじめられ仲間が、ちょっと異様な風体の「モアイ」である。

    このふたりが原っぱに卓球台があるのを見つけたことをきっかけに卓球を始め…

    ここまで聞けば「ああしてこうなって、そうなるのかしら?」と思ってしまいそうだが、これがとんでもない方向に物語はまい進する。誰の想像もおそらく遥かに上回る方向へと。

    なんだこりゃ、と思う人もいれば、いいぞお、と思う人もあるだろう。
    そうやってわかれていくことこそが読書の面白さ、なんだと思う。

  • 読書会の課題図書。『カステラ』面白かったので、期待して読み始めた…けども、ちょっとついていけない感じで正直、途中飽きました。全体から放出される「え?あなた、これを面白いと思えないんですか?」みたいな「わかる人にはわかる」感が苦手なのかも(←被害妄想か)。そういえば、虐げられた者たちと世界の関係が宇宙規模で荒唐無稽に展開されるのは、最近の町田康作品なんかもそうだよな。ピンクのうどんとかいかにも出てきそうだし。
    ともあれ、イメージの喚起力は凄いと思った。「広い宇宙に比べたら人間一人の存在なんてちっぽけ」とはよく言われるけど、この作品はそんな陳腐な慰めでは終わらない。「宇宙が広いってことは、人と人との間には光年レベルの隔たりがあるから、孤独で当たり前」っていう遠近法を逆手に取った?視点を提示してみせる。ここはかなり好き。でっかいものが近づいてくるにつれ等身大に戻ったりするところも可笑しかった。あと作中に出て来るジョン・メーソンの小説が面白くて、むしろこっちを読みたいと思ってしまった。

    5月26日読書会に参加しての追記:著者パク・ミンギュさんの人となりや育ちなどについて訳者の方から直接お話をうかがえたことで、読んでちょっと鼻についていたところもまたチャーミングに思えてきたのは大きな収穫。書きたいことを怒涛のように書くことでしか成立しない小説世界であり、けっして読者を選ぶとかそういう意図はないのだろう。

全19件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

朴玟奎

「2018年 『目の眩んだ者たちの国家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

パク・ミンギュの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

ピンポン (エクス・リブリス)を本棚に登録しているひと

ツイートする