もう死んでいる十二人の女たちと (エクス・リブリス)

  • 白水社
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本棚登録 : 299
感想 : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560090664

作品紹介・あらすじ

3・11、光州事件、女性暴行事件などの社会問題に、韓国で注目の新鋭作家が独創的な想像力で対峙する鮮烈な8篇。待望の日本オリジナル短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • みんながみんな本書を好きになるとは思わないのだけれども、今こういう作家がいて、このように世界をとらえて文章に紡いでいるのだということは知ってほしいという気持ちになった。パク・ソルメの呼吸に合わせてすべての短編を読めたかというと分からない。しかしイシューを保留にするのではなく手前で立ち止まり、そこから個人として見つめ続ける態度が、誠実で新しい。新しいというのは現在の作家をあまり読まないわたしにとってだけれども。

    東日本大震災と福島の原発事故が素材になった短編で、行き来可能な隣国に起きたこととして、日本で何かが失われてしまったことを静かに悼む表現がある。がんばれ!とか原発はやめろ!とかの強い言葉を発するわけではなく、見ていてくれた人が外国にいたんだ、とほっとした。それと同時に、日本で現実に起きたことが出てくると、自分個人の思い出が強烈に割り込んできてしまって、フィクションとして切り離して読むのが難しいこともわかった。その短編と同様に、福島の事故にインスパイアされたとされるほかの2つの短編は、パク・ソルメの短編として読めたし、その架空の世界に漂う空気や人の感情をうまく想像できた気がする。フィクションだからこそ伝わる真実の実例を体験したように思う。

    どこまでが史実でどこからが架空の設定なのかわかりづらい部分があるので、ひとつ読むごとに解説を確認するのがおすすめ。けっこう迷子になった。

  • 「白水社の本棚」の『京都ノスタルジア』によると、甲斐扶佐義らしき人物が登場するらしい、、、
    『白水社の本棚』のご案内 - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/smp/hondana/

    三浦天紗子が読む『もう死んでいる十二人の女たちと』記憶は反復され、色濃くなる | 本がすき。 - 本がすき。
    https://honsuki.jp/review/45198.html

    もう死んでいる十二人の女たちと - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b555672.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      気鋭の精神科医・翻訳家が読む、現実に侵食するフィクション――パク・ソルメ著/斎藤真理子訳『もう死んでいる十二人の女たちと』(阿部大樹 評) ...
      気鋭の精神科医・翻訳家が読む、現実に侵食するフィクション――パク・ソルメ著/斎藤真理子訳『もう死んでいる十二人の女たちと』(阿部大樹 評) | レビュー | Book Bang -ブックバン-
      https://www.bookbang.jp/review/article/680727
      2021/05/07
  • 翻訳だからだろうか、村上春樹に似ている部分があるように感じた。

  • わかる人にはわかるんだろうけど、いやー、わたしには難しかった。内容も文体もちょっと他では読んだことがないかんじで、これピタッとはまったらたまらないだろうなあと思うだけに自分が残念。この本のことは柴崎友香さんの書評で知ったんだけど、柴崎さんが勧めるのはすごくよくわかる気がした(『寝ても覚めても』しか読んでいないのにアレだが)。
    その書評に光州事件についてのお話も入っていると書いてあって、映画『タクシー運転手』が良かったから、じゃあ読んでみようかなと思ったわけなんだが、題材としての事件の扱い方も一筋縄じゃないんだよね。そのあたりは訳者の斎藤真理子さんが解説で背景等丁寧に説明してくださっているのだが、それを読んでもなお理解できたとは言い難い。寝る前じゃなく、もっと頭がハッキリしているときに読むべきだった。
    でもトリを飾る表題作は良かった!強姦殺害犯をその被害者の女たちが順繰りに何度も殺しているというすごい街が舞台だが、もう死んでいる女たちの話かと思わせつつ、それを観察する生者たちの話でもあるっていう入れ子構造がいい。意外にハードボイルドで、最後の1行までかっこよかった。
    あと、架空の島が舞台の「海満(ヘマン)」も良かった。仕事をやめて宙ぶらりんな主人公がシェアハウス?民宿?みたいな宿に滞在するお話なんだけど、何年も前に訪れた瀬戸内海の島の煌めきとか、20代OL時代に南仏ひとり旅したときの頭ん中とかがよみがえる。自分の空っぽさと向き合うのに島というロケーションはちょうどいいのかも。

  • 寸止めされた怪談みたいで状況の異常さに日常がスライドしていく感覚って書くと、そんなトンチンカンな読み取りをするのは単純でアホなきみだけだねってな具合にボディーブローを入れられる。それはそうと、あなたはよく奇妙な目に遭う。たとえば、朝起きたらベッドの横にずぶ濡れの犬の死体があった、自宅に雷が落ちる夢を見た翌日に隣家が全焼したとか。ところで、再インストールしたら下書きが全部消えちゃうの知らなかった。生きてる者と死んでる者の違いは肉体の有無なのに記憶の亡霊を呼び出すのは骨が折れる。だから「見たものは見たと言え」

  • 韓国映画の凄惨さと同じく不条理・救われなさが行間からこれでもかというくらい押し寄せてくる。これはもう社会病理による精神的な蕁麻疹か。

    多くの韓国の文化人に、このような光景を描かせる背景は何なのだろうか。

    「死にたい」は「生きたい」と表裏一体で、しかし生きたい願望というカードを力づくで押さえ込まれたら…絶望の文学なのか?

  • 水のように流れる文章、
    あいまいな三人称、
    時にはバイオレントであったり
    忘れられない歴史があったり
    時事的な問題がはらんでいたり。

    とらえどころがないように感じるけれど
    夢ではなく現実に揺り戻されるような。

    とても不思議な短編作品集。
    勢いのあるみずみずしい文章は
    今注目されてる若手作家ならではなのか。

    斎藤真理子さんの各作品の解説が
    とてもよかった。これ込みで読むことを
    おすすめしたい。

  • 東日本大震災はとなりの韓国の作家の創作にも影響を与えるのだなと思いました。村上春樹さんが早稲田大学入学式祝辞で「小説という働きを抜きにしては、社会は健やかに前に進んでいけない。社会にも心というものはあるから」という発言があったと新聞で読んだとき、この小説を思い出しました。小説を通して、社会で起こる事件事故が昇華されて、読者の記憶に残る方法はいつでもあった方がいいのだと思いました。

  • 時折あるフィクションかと疑うくらい度を過ぎて鮮明な描写に揺さぶられる

  • 福島の原発事故や光州事件など、実在する事故をモチーフに独特のリズム感で構築されるストーリー。
    日本への憂い、韓国内の格差社会への疲弊。少々読みづらい文章ながらもその小さな揺らぎがまるで、韓国映画のような美しさで描かれている。
    巻末の訳者解説がちょうどよい指針になる。

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著者プロフィール

1985年、韓国・光州広域市生まれ。韓国芸術総合学校芸術経営科卒業。2009年に長編小説「ウル」で子音と母音社の新人文学賞を受賞してデビュー。14年、「冬のまなざし」で第4回文学と知性文学賞、短編集『じゃあ、何を歌うんだ』で第2回キム・スンオク文学賞を受賞。19年、キム・ヒョン文学牌を受賞。いま韓国で最も注目される新鋭であり、文壇で最も独創的な問題作を書く作家と評価されている。

「2021年 『もう死んでいる十二人の女たちと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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