灯台守の話

制作 : Jeanette Winterson  岸本 佐知子 
  • 白水社
3.93
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本棚登録 : 330
レビュー : 53
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560092002

感想・レビュー・書評

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  • 本書を読みながら思い出したのは『生きるとは、自分の物語をつくること』(小川洋子、河合隼雄/著、新潮社)という本でした。
    物語は、ありのままでは受け入れ難い現実と折り合いをつけるために必要なものだと書かれていたことが印象に残っています。

    主人公のシルバーの人生も客観的に見ると、決して幸福なものとは言えません。
    しかし、シルバー自身はこれっぽっちも自分のことを憐れんではいません。
    それは彼女が見習い灯台守として、灯台守の大切な役目、すなわち物語ることを身に付けたからでしょう。

    そして物語ることで人生を受け入れようとしていたのはシルバーだけではなく、著者自身もそうだったのだと、訳者のあとがきを読んで知ったのでした。

    2つの波乱に満ちた人生が語られる中で、灯台の存在が何とも象徴的。
    光を灯すもの。人を導くもの。

  • 登場人物がこんがらがりました。誰が誰かよくわからないまま読み終わりましたが、物語全体が醸し出す雰囲気は好きでした。灯台守の仕事は、灯台の光を守ることと、物語を語ること。灯台一つひとつに物語があり、船乗りたちは岬の一つひとつを物語で覚えている。「お話しして、ピュー。」おしまいのある物語はこの世のどこにもない。

  • #岸本佐知子訳。アーヴィングを思わせる冒頭30Pの密度にくらべ、灯台を離れる→物語の中心を失う後半は混乱していて。「お話して、シルバー。/どんな話?/その次に起こったこと。/それは事と次第によるわ。/事と次第って?/わたしがどう話すか次第だってこと。」どう話すか次第。ダークの物語が2つに分岐するのに対して、シルバーの物語はより多分岐し、唐突なトゥルーエンドは、「灯台」と言うよりは、P93の「ずっと目で追っていった者にだけ、その姿が見える鳥」みたい。

    #P49「そうしてすべての灯台には物語があることがわかったんだ。いや、すべての灯台が物語だった」物語になった灯台と言えば、ブラッドベリの「霧笛」。と言うより、野田秀樹の『半神』の方を真っ先に思い出すのですが、あれも孤独と希求についてのお話だったな。

    (2009/10/23)

  • さすがジャネット・ウィンターソン!!!
    最初はユニークな舞台設定のちょっと二の足を踏んでしまったけれど、ぐいぐい読めた。詩的な美しい物語だった。

  • ソルツというさびれた港町で暮らしているシルバーと母。崖に斜めに突き刺さった家に暮らす二人。ある日母親は崖の下に落ちてしまい、シルバーと後ろ脚の短い飼い犬が残される。
    ここから物語が始まる。でも物語はもっと前に始まっていた。
    ジキルとハイドのような生活を送っていたバベル・ダーク牧師、代々受け継がれる灯台守ピューの物語、など。

    いちいち立ち向かわないのが心地いい。シルバーは強い子。

    やっぱり物語は終わらせてはならないと思います。

  • 盲目の灯台守ピューが孤児のシルバーに語り聞かせる一人の男の物語は
    この灯台の建設費用を出した男の息子バベルのジギルとハイドのような二重生活。

    誤解から別れた恋人と子供との2ヶ月の幸福な生活、本妻と子との苦行のような10ヶ月の生活はどんな風にシルバーの心に刻まれたのだろうか、と考えました。
    灯台守が廃止されて世界に放り出されたシルバーの生き難さ、ピューから教わった物語を語ること…この現実の時の流れと過去のバベルの物語が交差して深くてずっしりと『何か』が残りました。
    上手く表現出来ないのがもどかしいけれど…素敵な物語でした。

  • 傾いた家の孤児となったシルバーの人生が灯台守の語るジギルとハイド氏的なダークの人生とすれ違ったり重なったりしつつ、世界も海になったり宇宙になったり、あるいは100年の時さへも交差する物語。

  • みなしごシルバー、灯台守のピュー、その灯台の資金を出した人の子バベル、 「彼らの語る物語」の話

    灯台に暮らして、毎晩おとぎ話のように一話ずつ、そういう形なのかと思っていたけど、少しずつ、それとは違う。物語が語るものは人であり人生で、同じ人でもない。なんだか不思議な物語だった。
    灯台に住む、って、なんとなく憧れる。

  • 2012-13年末年始
    日比谷

  • 灯台守の話としているけれど。
    灯台守は、沢山の物語を持っていて、次々に伝えていく。伝えられたら、それは自分の物語でもあるような。

    誰かの物語、自分の物語、そうして語られてきたことが、だんだんとなくなり、人は自分一人だけの物語(人格)しか話さなくなる。
    そして、話すらしなくなる。

    孤児となって、灯台守のピューとの生活で、物語の紡ぎ手となったシルバー。

    ピューとシルバーだけの話だと、まだ19世紀の話のように聞こえるけど、実際は21世紀。

    灯台は岬から岬へと、真っ暗闇の中、船を導く道しるべだったもの。
    灯台守の話も、人を導くもののひとつ。とみると、語られなくなった今、人は皆、道に迷ってるのではないかと。

    でも、まだシルバーがいる。
    から、救われてるのかもしれない

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