- Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092033
感想・レビュー・書評
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「ナイフ投げ師」「ある訪問」「空飛ぶ絨毯」「パラダイスパーク」が印象に残った。「協会の夢」の執拗なぐらいの描写すごい。VR文学と言われる意味がわかった。
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白水Uブックスで既に持っていたのだが、古本屋でハード・カヴァーを発見。
好きな作家だったので、思わず購入してしまった。
以下の感想は白水Uブックス読後に書いたもの。
短編集。
人間の心の奥底に潜んでいる闇の部分を引っ剥がされたり(「ナイフ投げ師」「カスパー・ハウザーは語る」等)、人間の際限の無い欲望、そして限界を超えた欲望の果てに待っているものを描いたり(「協会の夢」「パラダイス・パーク」等)、幼い日々にのみ感じることのできた何ともいえない高揚感を描いたり(「空飛ぶ絨毯」「月の光」等)、どれもこれも真珠の短編といっていいと思う。
個人的には、自己中心的な人間の心理の変化(いかに自分を楽観的に納得させるか、とか、いかに他人の愚かさを馬鹿にできるか、とか)を絶妙なタッチで描いてみせた(そして、そのみじめななれの果てを描いて見せた)「出口」が出色の作品だった。 -
「好奇心と背徳の密なる関係」
ナイフ投げの名人・ヘンシュの舞台を観に集まった町の人々。そこで繰り広げられた彼の演技が危険の度合いを高めるほどに、客席は異様な興奮につつまれていく。表題作「ナイフ投げ師」他「ある訪問」「夜の姉妹団」「出口」「空飛ぶ絨毯」「新自動人形劇場」「月の光」「協会の夢」「気球飛行、1870年」「パラダイス・パーク」「カスパー・ハウザーは語る」「私たちの町の地下室の下」12編収録。
舞台の壁の前に立つ美女の指の間へ、首筋へ、ストン、ストンと的確に投げられていくナイフ。その鮮やかさに感心し盛大な拍手を送りながらも、観客である私たちの心の中にあわよくば「命中」しないだろうかという、人としての道義に反する「期待」があるのではないか。そこにこそ実は舞台の興奮の正体があることを著者は見逃していない。表題作「ナイフ投げ師」は本短編集の真骨頂。
「ある訪問」では旧知の友人から招待を受けその自宅を訪ねると、そこには彼とその妻だという大きな蛙が暮していた。彼らの奇妙なもてなしの晩餐が済むとお先に失礼と客である私を居間に残して彼は潤んだ瞳の妻とともに「寝室」へ上がっていく。その後「私」が感じる2階の気配。何を想像しろというのか…。
人の興味や欲望のままに増殖する百貨店や、暴力・性・死などの背徳的な快楽を満たすべく造られた「悪魔の遊園地」などミルハウザーの想像力には舌をまき、何者かが明かされぬままその告白が綴られる「カスパー・ハウザーは語る」には、人としてあるまじき好奇心を持って読まされる。「夜の姉妹団」や「私たちの町の地下室の下」のように、逆にその「イケナイ好奇心」をマックスにさせられたところで返り討ちにあうような編もあって気が抜けない。
好奇心と背徳は組み合わさることによってある種の興奮を呼び覚ますんだなあ…。社会に在る限りそれは決して表立って肯定はされないものの、きっかけさえあれば誰の心の内でもその化学反応が起こり得ることを思い知らされる。著者の語りぶりが淡々としているため、返ってそのいたたまれなさに震撼する。 -
ミルハウザーの短編集。面白いのとそこそこのが交互に入っている。「夜の姉妹団」「新自動人形劇場」「協会の夢」「パラダイス・パーク」が好き。
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「面白いのとそこそこのが」
実はuブックスになるのを待っていて未読。
上のコメントについてですが、、、そんな馬鹿なと言う思い半分と、ミルハウ...「面白いのとそこそこのが」
実はuブックスになるのを待っていて未読。
上のコメントについてですが、、、そんな馬鹿なと言う思い半分と、ミルハウザーなら遣りかねないと言う思いが半分。2013/01/04
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「ナイフ投げ師」「ある訪問」「夜の姉妹団」「出口」「空飛ぶ絨毯」「新自動人形劇場」「月の光」「協会の夢」「気球飛行、一八七〇年」「パラダイス・パーク」「カスパー・ハウザーは語る」「私たちの町の地下室の地下」
が読めます。
私にはこの短篇集はミルハウザー濃度が濃すぎたと思われる。
この言葉の波のようなものに身を任せるには、今は少し体力が無かったです。
言葉が掻き立てる想像力が私にはまだ不十分で、というより想像力を働かせる努力を怠った読書をしたので、いまいち楽しめず。
再読の必要がありますね。
まだ濃度の薄い、他の短篇集に挑戦してみようと思います。 -
一つの物事に対する物語方が、とても緻密でまるでムービーを観ているようです。それは決して回りくどくなく嫌味でもありません。頭の中にひろがる、地下迷路や遊戯施設などの疑似体験ができます。最初はストーリーが無限に広がっていくのを楽しんで、次は、リアルな比喩の言葉の美しさを存分に味わってみてください。
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アメリカ人作家スティーヴン・ミルハウザーの第三短編集。
とある遊園地の栄枯盛衰や、デパートの改装後の様子、謎の街の生態とか、人間メインではなく架空の歴史事象をつぶさに綴っていく不思議な物語の数々。
読むとだんだんクセになってくる。他の作品も読んでみよう。