- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092408
作品紹介・あらすじ
装幀家の書物への感性
今年から来年にかけて、著者に大きなスポットが当たる。一つは著者を主人公にしたドキュメンタリー映画の制作、もう一つは著者による自伝の刊行だ。
本書の刊行過程も映画のワン・シーンに取り上げられる予定で、殊に製本段階では、これまであまり取り上げられなかった「一冊の本ができあがる」工程が、装幀家の視点を通して紹介されると思われる。
多くの書店の平台や棚で、必ず目にすることのできる「菊地本」ともいわれる著者装幀の書物の数々。その装幀の根底を支える著者のイメージの広がりは、わずかに書かれるエッセイによって、多く知ることができる。
内容から造本まで、名エッセイ集として評価の高かった『樹の花にて』が刊行されたのが1993年。それから20年以上の歳月を経て、久方ぶりに著者が世に問うたのが本書である。直接装幀とは無縁な日常の発見の数々が、読者を書物という知的世界への興味をかきたてる。
この20数年を経て、著者の感性がますます研ぎ澄まされていることに、読者は驚くだろう。
感想・レビュー・書評
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作家の古井由吉さんが亡くなってしまった。彼の本の装幀者として、その後半生の作品について、多分、すべての本の装幀を手掛けた菊地さんが、今、どのようなお気持ちでいらっしゃるのか、傷ましい限りなのだが、偶然「つつんでひらいて」というドキュメンタリー観て、この本を読んでいるところだった。
この本の中で、菊地さんは一度だけ古井さんについて語っている。彼が、古井さんの本の装幀を続けたのが、なぜなのか、納得がいくエッセイだった。
そのあたりについてはブログに書いたので、読んでいただきたい。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002290000/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
装丁についての本かと思って読み始めたら、装幀家さんのエッセイだった。
日常の一コマが、色気のある文章で丁寧に表現されて引き込まれる。読み進めるうちに心が安らいできて、感情を波立たせない本を最近読んでいなかったことに気づいた。 -
志ん朝さんの小気味の良い高座を聴いているような、
さっぱりしているのに、じんわりと応えてくる
読み応えのあるエッセイ集
「モノ」の描写が微に入り細に渡り
それはそれは愛おしく綴られておられる
どこかで、こんな感じを持ったなぁ…
そうでした柳宗悦さんのアレでした
まだ梅雨には少し間のある
五月の気持ちの良い風に吹かれながら
読ませてもらった一冊です -
詩にちかいような、エッセイ集。
人よりも「物」が好きな装幀家、菊池信義の佇まいが感じられるような文章の数々。