- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092620
感想・レビュー・書評
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よかった。とてもよかった。ボラーニョの短編を読んでいて思い浮かべるのは、夕陽を浴びて輝く、平らに広がるさざ波で、そのキラキラでポルノ、ネクロフィリア、同性愛といったモチーフも穏やかに包まれてしまう。それは美しいとしか、やっぱり他に言いようがない。余韻が素晴らしい短編もいくつかあり、うん、本当によかった。
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初ボラーニョ。なんというか、個人の意志ではどうにもならない、その状況を体験しているしかない感じがどうにも現代っぽく現実っぽく、お腹が冷やっとする本だった。お腹の冷えでなければ偏頭痛か歯痛か、常に感じ続ける違和感。そういうのは本の外で散々味わっているので、わざわざ読んでしまったなあという気がしなくもない。
マッチョな父さんとの旅の「この世で最後の夕暮れ」、お尻が無事でよかった「帰還」、地味な友情が伝わる「ブーバ」が心に残った。 -
初ボラーニョで最初の方の短篇はなかなかつかみにくかった。ビートニク系の作家かと勘違いしそうだった。しかし「売女の人殺し」のぎりぎりに締め上げた緊張感「帰還」の限りない優しさ「ブーパ」の中にもラテンアメリカとボラーニョの反骨に触れ強烈な個性を感じた。特に注目して読むのは「ラロ・クーロの予見」であろう。初読はここまて性を解体し商品化して淡々と描かれては何を感じたらいいかつかめなかった。他の作品に触れた後また読む事で分かった気がする。1番好きなのは「エンリケ・リンとの邂逅」ハラの話も楽しいし生も死も狂気も壁はなく等しいボラーニョの世界が絶妙だった。
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2020/1/28購入
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ぜんぶおもしろかったが、「目玉のシルバ」「帰還」「ブーバ」「ラロ・クーラの予見」が印象に残る。「野生の探偵たち」は、前半さっぱりノレなかったけど再読したらもっと面白く読める気がしてきたw
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全集がでてからずっと気になっていたボラーニョをやっと初読。
薄闇の路地の向こうに何か恐ろしいものがあるような読後感の短篇13本。
父との思い出「この世で最後の夕暮れ」、
魔術的フットボールのお話「ブーバ」、
死姦の世界「帰還」。
そしていかにもラテンアメリカな「目玉のシルバ」と「歯医者」。
性に暴力や貧困、奇怪の香り。
これがボラーニョかあ。 -
馴染みの薄いラテンアメリカ文学だけど、著者の自伝的な話では、詩的で簡潔な文章に引き込まれてしまった。
他にも、危ない狂気に満ちた話や幻想的な話、文学的な話もあり、面白い。
「歯医者」より
死が確かな事実だとしても生きるのをやめたりはしないのと同じで、本に結末があるとしても僕たちが読書をやめることは決してない。 -
「2666」読了後の勢いに乗って読んだが、この作家の短篇は結構手強い。かなりの精読を強いられる。語られている裏側を自分なりに想像して読み解く作業が必要だ。まあ、その作業こそがボラーニョを読む楽しみなのだけれど。
既訳の長編と関係のある作品も複数あり、楽しみ方は色々。ボラーニョ・コレクションの続刊に期待大。 -
短編集です。ボラーニョの自伝的な内容を作品と創作作品(多少はボラーニョの人生と繋がりがあるのでしょうが……)とがありますが、創作作品の方が個人的には面白く読めました。特に表題作の「売女の人殺し」や「帰還」「目玉のシルバ」「ブーバ」などが読みやすいし、まずはおすすめです。「写真」は全編が一つの文章、つまり句点が最後まで出てきません。日本語としてはいくつもの文に切ることはできますし、訳文もそういう感じに訳されていますが、それではボラーニョの気持ちのリズムに合わないのでしょう。ところで、ボラーニョの作品にはいろいろは登場人物が出てくるのですが、そういう登場人物が出会う場面、特に主要な登場人物が出会う場面の描写が、うまく表現できないのですが、ボラーニョの作品には独特の雰囲気というか味わいというか、そういうものを感じます。