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本 ・本 (332ページ) / ISBN・EAN: 9784560092774
作品紹介・あらすじ
誰しも人生を変えた一冊があるはずだ。困難や逆境にあるとき、思わぬ力を与え、生きていく糧となった本。あるいは進むべき道を示してくれた本……
本書は、「戦後日本」におけるそんな一冊を探し求める試みである。
敗戦を受け、「近代化」や「民主主義」を求めた戦後日本は、いわゆる知識人が活躍した時代であり、数多くの名著が生み出された。
とりわけ、「フランス知」が果たした役割は大きかった。
フランス文学からフランス革命史学まで、あるいは哲学・思想から社会・文化論まで、これらの知識人たちの著作は、フランスを対象にしながら、その根底に日本社会への強い問題意識がはっきりとみられた。
このフランスと戦後日本をつなぐ回路はいかなるものだったのか? そこには果たして必然性があったのか? こうした問いが本書の最大の焦点になる。
個々人の関心が多様化し、学問も細分化したと言われる。読書という経験も大きく変容している。だからこそ、社会全体がかなりの熱量をもって集約的に本を読んだ戦後の記憶は貴重である。戦後思想を読む異色のブックガイド!
感想・レビュー・書評
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フランス知とは何か、本書で明確に定義されている訳ではないが、近代市民革命の典型と考えられてきたフランス革命に代表されるようなフランスを主に念頭に置いて、フランスの政治、社会、歴史、文学、芸術等に関する研究や批評により表されるものと考えれば良いだろうか。
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本書は、そのようなフランス知が、ある時期まで戦後日本において大きな影響力を持ってきたことを踏まえ、代表的な研究者及びその著作を取り上げその内容・意義等を紹介、論じつつ、それにより日本の戦後思考を捉え直そうとする試みである。
3つのパート、各3編ずつ、計9編の論考が収載されている。
第Ⅰ部は、近代の一つの特権的な起点であるフランス革命と関係の深いものが取り上げられ論じられる。
・樋口陽一『近代立憲主義と現代国家』
・柴田三千雄『フランス革命』
・遅塚忠躬『ロベスピエールとドリヴィエ』
第Ⅱ部は、戦後日本の知識人におけるフランス知のあり方の諸相を提示しようとする観点から選ばれたもの。
・加藤周一『羊の歌』
・清水幾多郎『オーギュスト・コント』
・福田和也『奇妙な廃墟』
第Ⅲ部は、1968年を経験した研究者によるフランスの論じ方の特徴に光を当てようとするもの。
・西川長夫『フランスの近代とボナパルティズム』
・西川長夫『パリ五月革命 私論』
・谷川稔『十字架と三色旗』
もちろん各論者の論じ方はそれぞれではあるが、読み手である論者がいかに当該著作を読んだかという視点="私性"が結構はっきり出ていて、読みごたえがあった。
日本では明治維新の歴史的性格を巡る参照軸としてフランス革命について様々な議論がなされてきたことや、最近の研究状況、問題関心の所在等についてもそれなりに知っていたが、ド=ゴールの第五共和政がそれまでの議会中心主義を大きく転換するものであったこと、日本ではほとんど研究のないボナパルティズムの再評価の動きなどについてはまとまった形では知らなかったので、とても面白く感じた。
自分のアンテナに引っかかったところについて、関連する著作を読むブックガイドとしてもとても有益だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/717197 -
東2法経図・6F開架:311.2A/U77f//K
著者プロフィール
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