- 本 ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092866
作品紹介・あらすじ
リディア・デイヴィス、ルシア・ベルリンなど数々の名翻訳で知られる著者は、エッセイストとしても絶大な人気を誇る。本書はデビューエッセイ集『気になる部分』(白水社刊、2000年)以降に様々なメディアに寄稿した、単行本未収録の文章を集大成したものだ。
全三章で構成。第一章は、「前世が見える」という人に教わった著者の前世の物語「わからない」、一度も訪れたことのない場所を精緻な妄想で描写する「ここ行ったことない」等、ヴァラエティ豊かなエッセイを集める。
第二章は、書評の意味を崩壊させてしまった伝説の朝日新聞連載「ベストセラー快読」、子供のころ猿のように繰り返し読んでいた本を今読んだらどうなるのか実験した「もう一度読んでみた」等、本にまつわる文章でまとめた。
さらに第三章として、キシモトワールドのエッセンスを凝縮したようなウェブ日記「実録・気になる部分」等、2000年代の「日記」を収録。いずれの章も、抱腹絶倒、奇想天外、虚実の境をまたぎ越す著者の真骨頂が堪能できる。
危険防止のため、電車の中では読むことをお控えください。
感想・レビュー・書評
-
翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイと書評と日記。
とにかく面白いのひと言に尽きる。
素のままの自分をありのままに語る。
語り口調も飾りのないまま、気取ってもいないので近しい友人のような気になる。
何度も笑わされる。
エッセイのなかの福助エルメスは、最強。
ベストセラー快読の『イヌが教えるお金持ちになるための知恵』など気になって仕方ないのだが、そのなかでふだんベストセラーの本をあまり読まない。何十万何百万もの人々が読んでいるなら、自分ひとりくらい読まなくてもいいだろう、と変に安心してしまうせいだ。
だからたいていこんな具合にタイトルから中身を勝手に想像して、それを読んだような気になっている。でも読んでみたら想像していたのとはかなり違ってた。とあり確かに想像力がありすぎるから言葉のチョイスが面白いのかな…などと。
日記も数行なのに想像できて笑える。
鳩が地面にベタっと座っていたので、すれすれに近くを通ってやったら面倒くさそうに中腰になった。実に腹立たしい。
人間失格の日。だらけて何もせず、よだれ垂らしてビール。皿洗わずテレビ。読む本はマンガ。
鳩に喧嘩売ったり、だらけた自分を次の日の日記に何十年生きても学習しない自分の馬鹿ばか莫迦と書く。
カブトムシ日記は、面白さマックス。
どれが、なんて選べない。
キシモトワールドを楽しんだ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
エッセイ集。
これはね、ほんとに公共交通機関で読まない方がいいです。
油断してるといきなりぶっ込んでくる。
♫Lifetime Respect/三木道三(2001) -
400ページ程あるので、2冊に分けてもいいのにとも思ったが、お得感のあるボリューム。
おかげで、最近手に入れたコクヨの「本に寄り添う文鎮」も大活躍した。
エッセイ、本にまつわるもの、日記の3部構成。
最初から最後まで、安定の面白さ。
読み応えありました。
「わからない」は、岸本佐知子さんが面白いと感じるものには、なんかよくわからない要素が含まれていることからきている。
【エッセイ】
例えば、私がGについて書こうと思ったら、
「私はGが嫌いだ。なぜなら…」のように書いてしまう。
岸本さんはこうだ。
「見たら殺す。絶対殺す。直ぐ殺す。確実に殺す。
黒光りするボディを見た瞬間、こいつら滅びてしまえと思う。
憎いんじゃない。怖いんです。」
感情表現がストレートで小気味よい。
【本にまつわるもの】
書評ではなく、本をネタにしたエッセイ。
夏目漱石が好きじゃないことをカミングアウト。
なので、そのあと読んだ・・が面白くて、夏目漱石いいじゃん!と認識を改めたことをしばらく隠していた。
実用書やノウハウ本の感想は、「自分には役に立たない」ことを認識する結果になってばかりいる。
そんなことができる奴は、こんな本読まないよ。こんな本は、それができない奴が買っている。に共感。
だから書評はいちいち難癖を付けることを楽しんでいるようだ。
谷川俊太郎さんの「ことばあそびうた」は楽しそうで、読みたくなった。
かっぱなっぱかった
かっぱなっぱいっぱかった
かってきってくった
あと、「アルジャーノンに花束を」も読みたくなった。
【日記】
テレビや映画鑑賞、コンサート、飲み会、通院、買い物、その他モロモロの日常生活の一コマ。
読書と映画鑑賞の量がすごく多い。
しかも好きな作品は10回くらい見たり読んだりしている。
私はほとんどが1回で終わり。
あとは飲み会が多く、はしごして翌日は爆死のパターンも何度も繰り返し。
SさんやHさんはいいが、O野さんやO橋さんやO久保さんはバレバレじゃん?
と思ったら、あとがきで実名がバッチリ出ていた。
ある日の日記:
「癒し系」の反対語は何か、このあいだからずっと考えている。たぶんそれが自分だから。
答えは出たのだろうか。 -
エッセイに、本の話題に、日記の三段構え。日記はそっけなくて最初はぼけーっと読んでいたら、途中から慣れてきて、味わい深くなった。とりあえず「ほとんど記憶のない女」は読んでみようと思う。
-
岸本佐知子さん、きちんと作品を読むのは初めてかも。
エッセイ、書評、日記と分かれている中で、エッセイが一番面白かった。
物事を捉える視点がさらっと自然なんだけど、とても個性的で新鮮に感じた。
エッセイを読む時、自分との共通点を何かしら見つけて共感するパターンか多いけど、今回は発想が自分と違いすぎているところが面白いと思えた珍しいパターン。
書評で取り上げられている本は未読のものが多かったので、また読んでみよう♪(読みたい本が増える一方…) -
おもしろい!
例えば夢の話
トルシエが来て「こんなに食事のまずい家は初めてだ」と公式にコメント
自分がイタリア人、大金持ちのマフィアが父親
嫌いなサッカー選手と結婚。3歳の子供。
布団のような大きいピザを引きずって誕生パーティーへ
などなど
あげればキリがないがおもしろい!
本当は違う長編を読もうと思ったのに何故か引きずられるように読了
紹介本は、全部読んでみたい
-
エッセイ初読み。かなり個性的で面白い方と推察。創造の翼の広がりが規格外。創造力って無限だなと思いしらされた。
-
日記のところが人間味に溢れていてすごく面白かったです。3日分で1回はケラケラ笑っていました。オススメされていた翻訳本、他のエッセイや翻訳本も読んでみたくなりました。
-
初めて岸本佐知子さんのエッセイを読んだのは
もう10年以上前なんですが
ずっと岸本葉子さんと同一人物と思っていました。
佐知子さんは光村図書ベストエッセイでも目立って面白い方で、
一人暮らしの日常を綴る葉子さんとは別の人
そう認識してから読んだのは今回初めてです。
佐知子さんがこの24年間あちこちに書いた文章で
単行本に収録されていないものの中から選んで
一冊の本にまとめたもの。
たくさん笑いました。
ありがとうございます。
せっかくだから一部紹介。
「もう一度読んでみた『銀の匙』」より
〈ここにきて若干焦っている。これまで取り上げてきた作品がすべて岩波書店の本であることに気づいてしまったからだ。こういう偏りはよくないのではないか。業界内での癒着を疑われはしまいか。
だかこれはある意味仕方のないことで、私は子供のころ、岩波フェチだった父に〈岩波フェチ養成ギブス〉を装着させられていたのだ。買い与えられる児童書も岩波、家の本棚も岩波文庫だらけとなれば、どうしたって子どものころに読む本の岩波指数は高くなる。しかしその後私は筒井康隆方面にかぶれてしまい、父のもくろみは未遂に終わった〉
もう一つサービス。
〈帰りの電車の中、一部の隙もないビジュアル系青年がやおら携帯を取り出し、「もしもし?あ俺、いま電話の中なんだけど」と言ったので、車内じゅうの人が吉本新喜劇のようにドタドタと倒れた〉
すみません、もう一つ、これで最後にするから許して。
〈金魚鉢のメダカも一匹死に、とうとう残り一匹となる。私の何がいけなかったのか。餌も正しくやったし水も替えたのに、なぜそう当てつけがましくバタバタと死ぬ。そっちがそう出るならこっちにも考えがある。残りの一匹にはもういっさい愛情をかけず、「なんだ、まだ生きてたのか」くらいの冷淡な気持ちで接し、名前も最悪な名をつけ、薄幸のメダカとして育てることを決意〉
ちなみにそのメダカ、その後けっこう長生きします。
そんなものなんだ。
著者プロフィール
岸本佐知子の作品





